381神猫 ミーちゃん、フロントラインに居るようです。

 ミーちゃんと俺は次に出てくる烈王さんの言葉にビビりながら、抱き合って聞いている。



「いいかネロ。人族やモンスターの上に神が居る。なら、神の上に更なる上位の存在が居ないと思うか?」


「論理的に言えば居ると思います」


「み~」



 そういうことなのか? それとも例え話なのだろうか?



「神は確かに人智を超えた力を持つ。だがそれは全能でも万能でもない。絶対ですらない。ただ我々より上位の存在で強大な力を持っているだけだ」


「それでも十分なのでは?」


「み~?」



 俺たち人族など歯牙にもかけない、とてつもない強大な力を持っていれば神と呼んでも差し支えないないと思うけど?



「なら、なぜ神の管理しているのに争いの絶えない世界ばかりなんだ? 多くの世界を知る俺ですら、争いのない平和な世界など見たことがないぞ。それにだ、神という存在でさえ大昔からお互いに争ってきたんだぞ」



 アルマゲドンやラグナロクみたいなものかな?



「大昔。ずっと大昔。大きな神々の戦いがあった。今の神の前の世代になる……」



 ポンコツ神様の前の世代。簡単に言えば派閥争いが起きたそうだ。光と闇、善と悪などといった争いではなく。単なる勢力争い。お互いの支配地域を奪い合う争い。人族の争いと何が違うんだと烈王さんは問いかけてくる。


 そんな争いの中、神々の強大な力をぶつけあった結果。壮絶な破壊の力が生まれ、多くの神々を巻き込んでひとつの世界が消滅することになる。


 勝者なき終戦。


 俺たちの世界の神々も多くが消え、生き残った残った神々の中で最も力のある神が新たな主神となった。それがポンコツ神様姉妹の父。なので、まだ新しい神なのだ。


 そういえば、父からこの世界を引き継いだとかなんとか言っていたような?


 まあ、それはさておき、ひとつの世界を消滅させた力はこの宇宙にもダメージを与え穴を作ったらしい。そのうえ消滅した神々の残痕といえる力がその穴に渦巻き、今なお大いなる力を留めているそうだ。


 そのままにしておくとこの宇宙全体にダメージを与えかねないので、烈王さんがその穴を塞いでおく役目を負ったそうだ。


 役目を負う?



「それは自主的にってことですか?」


「み~?」


「っんなわけあるか! さっき言ったよな。この宇宙を創ったのは神ではないと」


「そ、それは?」


「みぃ……?」



 ミーちゃん、聞きたいけどやっぱり聞きたくないってな感じで、俺の腕の中から烈王さんを伺うように見ている。



「大いなる存在」


「大いなる存在?」


「それ以外知らん」


「だぁー!?」


「みぃ……」



 神々が消滅させた世界。それは神の代わりにドラゴンが頂点に立っていた世界。ドラゴンは中立の立場で神々の争いには手を出していなかった。逆にその中立がいけなかったようで、神々が自分たちの陣営にドラゴンを引き入れようとしたせいでその世界が争いの中心地になり、ドラゴンどころかその世界そのものを消滅させる悲劇が起こった。


 神々の力が渦巻く危険な穴をそのままにしておけないと思った大いなる存在は、その世界とともに消滅したドラゴンの魂をかき集め次元竜という時空間の力に特化したドラゴンを創り出す。


 そう、烈王さんである。


 大いなる存在は穴を塞ぐように新たな宇宙を創り、そこに新たな世界が生まれ、その世界で烈王さんにその穴を塞ぐ門番にした。


 烈王さんは門番をする代わりに、この新しい世界を新たなドラゴンの住処とすることを約束させたそうだ。


 その後にポンコツ神様の父がこの世界に来て支配下に置いたけど、ドラゴン以外の新たな知的生命体が生まれることがなく、管理者が語った話に繋がるということだ。



「結局。魔王側の神とは支配権を争う別の神ってことですか?」


「みぃ……」


「そういうことだ」


「そのことに関して大いなる存在はどう思っているんでしょう?」


「さあな。どうも思っていないんじゃないか。人族が足元の虫を気にしないのと同じじゃないのか? 宇宙は無限にある。そして、大いなる存在もひとつではないからな。一宇宙の虫の巣の出来事なんぞ気にしないと思うぞ」


「みぃ……」



 手入れして作った庭園に住む虫のことは気にならないけど、その虫のせいで庭園を荒らされるのは気にするってことかな?


 なんか壮大な話過ぎて驚きだよ。


 さて、話は戻るけど神や魔王が勇者を召喚する理由って、勢力争いってことですか?



「いいかネロ。この世界の下には古の神々の力がいまだに渦巻いて残っている。古の神々は今の神々より強大な力を持っていた。もし、その力の一端でも手に入れることができれば……と、思っても不思議じゃないと思わないか?」


「それはミーちゃん側の神も、ということですか?」


「みぃ……?」


「さあな。そこまで俺は知らん。まあ、どちらが勝ったとしてもここを通す気はないがな」


「不老不死のミーちゃんの飼い主である神に勝てるのですか?」


「言ったろ。神は全能ではないと」



 ニヤリとニヒルな笑顔を見せる烈王さん。何かしらの秘策があるようだ。まあ、神々を無視できるほどの大いなる存在に創造された次元竜だから、必殺技の一つや二つは持ってるんだろうね。


 それにしても、俺が望んだとはいえ、戦場の最前線フロントラインに送り込むなんて……やっぱり、ポンコツ神様だよ。



「みぃ……」




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