357神猫 ミーちゃん、差し入れをする。

 クラウディアさんには悪いけどグラムさんを無理やり連れ出し牙王さんの洞窟に飛ぶ。クラウディアさん、本当にごめんなさい!



「みぃ……」


「た、助かった……」



 グラムさんはぐったりとお疲れモード。


 だけど、ここで遊んでる暇はありません。さあ、騎竜隊の中継地である駐屯地に行きますよ!


 ……あれ? そういえば、スミレが居ないね。セラも居ないのですけど。どうやって駐屯地まで行けばいいんだ?



「みぃ……」



 ミーちゃんが冷めた目で見てくる……。


 が、牙王さんに相談しよう。そうしましょう!



「ああ、いいぜ。好きなの連れて行け」



 牙王さんに駐屯地まで道案内してくれる者をお願いしたら、即答でOKがでた。なので、近くに居た白狼にお願いしたらウォンと快く引き受けてくれた。


 白狼の案内の元、道中モンスターに襲われることもなく無事到着。今回は一悶着もなくすぐに門の中に入れてもらえた。



「やあ、ネロ君。待っていたぞ」


「お待たせしました。マーティンさん」


「ずいぶん前から飛竜たちが緊張していたので、なにかあると思っていたが、まさかネロ君だったとはな」



 ははは……。それ、グラムさんのせいだと思います。現に飛竜たちは伏せて顔を低くしてグラムさんを見ないようにしている。グラムさんは疲れているせいか飛竜にはまったくの無関心。



「み~!」



 そういえば、関心のある方がここにいましたね。


 ミーちゃん、俺の肩から飛び降りて飛竜にまっしぐら! 猫缶じゃないのにね。


 ミーちゃんが近くに寄っても飛竜たちは伏せたまま頭を上げない。上司の前でおとなしくしている部下ってところかな?


 でも、そのせいでミーちゃんは不満顔でご機嫌斜めに。


 ミーちゃんのご機嫌を直すために一考。



「マーティンさん。飛竜にエサをあげてもいいですか?」


「食べんと思うが、好きにするがいい」



 ということで、ご機嫌斜めのミーちゃんの元に行き、耳元でごにょごにょ。



「み~!」



 飛竜たちの前にどさどさっとミーちゃんバッグから出して置く。


 今まで伏せていた飛竜たちが顔をあげて、ミーちゃんが出したものを凝視している。



「グルル……」


「み~」



 飛竜とミーちゃんとの間で何かしらの会話があった後、飛竜たちは一斉にミーちゃんが出したものに貪りつく。



「なっ!?」


「おいおい、嘘だろう……」



 近くに居た騎竜隊員さんたちが驚きの声をあげている。



「君には驚かされてばかりだな。いったい何が起きたんだ?」


「別にたいしたことじゃありませんよ。ミーちゃんが飛竜たちに美味しいお肉を差し入れしただけです」


「美味しお肉とは?」


オークの肉高級肉です」


「「「オークの肉高級肉だと!?」」」



 こんなこともあろうかと、グラムさんがぐちゃぐちゃにしたオークをちゃんと回収していたのです。


 人は食べれなくても、モンスターのエサにはなるかなって思ってね。


 飛竜たちは喜んで食べてるから問題ないようだ。ミーちゃんとグラムさんの差し入れだからちゃんとお礼を言っておいてね。



「「「グルァッー!」」」


「お、おぅ。なんだお前ら?」


「み~」



 オーク肉を食べて落ち着いた飛竜たちは、ミーちゃんを頭に乗せて上下に振ったり、隣の飛竜にミーちゃんを橋渡ししたりと大盤振る舞い。



「はぁ……私の常識がどんどん崩れていくな」



 まあ、ミーちゃんにかかればこんなもんですよ。


 さあ、ミーちゃんそろそろ行きますよ。



「み~」



 ミーちゃん、飛竜たちにバイバイをして俺の元に戻ってくる。さっきとはうってかわって満面の笑みだね。


 マーティンさんに案内されて物資係の人に受け渡し書を作成してもらい、指定の場所に出していく。



「酒は助かる。ここでは娯楽がないから酒を飲むのが一番の楽しみなんだ」



 もちろん、非番の人たちが、とマーティンさんは笑いながら話していた。


 帰り際、マーティンさんに年明けにロタリンギアや魔王が動き出すみたいですと言うと、



「あぁ、厄介だな」



 と、頷いていたのでヒルデンブルグの方でも何かしらの情報を得ていると思われる。


 また、来ることを約束して駐屯地を後にする。ミーちゃんは後ろ髪を引かれる思いのようだけどまた来るから今日は諦めてもらう。



「みぃ……」



 一旦、牙王さんの元に戻りロデムさんに買ってきた毛布を渡すと、白狼や黒豹などのお子ちゃまが集まって来て毛布にダイブしてロデムさんの雷が落ちたのはご愛嬌。


 しゅんとしたお子ちゃまたちのためにお魚を焼き始めると、お子ちゃま以外も集まって来る。必然的に宴会へとなりエールも出す羽目になる。



「いつも悪りぃな」


「海の幸にお酒は至福。ミー様、ありがとうございます」


「み~」



 って、ミーちゃんだけですか? いえ、別にいいんですけどね……。


 俺たち宴会には参加せず、洞窟から烈王さんの所に向かう。



「どうやら、無事に戻って来たみたいだな」


「はい。いろいろと神人から話を聞けて有意義でした」


「み~」


「そうか。じゃあ、まずはエール! と言いたいところだが……グラム」


「なんでしょう? おさ



 烈王さん真面目な顔してどうしました? 


 グラムさんに用事でも?



「み~?」




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