355神猫 ミーちゃん、山田君を呼ぶ。
第四騎士団を急造で創設している今、国から出せる兵が居ない。歩兵部隊も王都を守る最低限尾の兵以外、ロタリンギアとの国境である東の国境とゴブリンキング討伐に出されている。
確かヒルデンブルグに出せる兵が居ないね。
そこで王妃様は貴族が持つ私兵を出させ、急造の部隊を作りロタリンギアに援軍を出そうと考えた訳だ。
別にそれは良い。だけど、どんなにミーちゃんが乗り気でもそれを俺が指揮するというのは無理があると思う。
部隊を指揮した経験なんてゲームでしかないし、戦術なんてものはそれこそゲームでしか知らない。まあ、趣味で孫子の兵法書や呉子などは読んだことがある。
戦略ゲームなら得意なんだけど、ゲームのようにはいかないかなぁ。いやいや、戦争なんてものはそんなに甘くない。それに、一番の問題は俺が指揮を執ることを他の貴族が許すとは思えない。
「あら、それは問題ないと思うわよ。護国の剣の献上にブロッケン山の牙王殿との同盟による街道の整備と安全。ゴブリンキング領域の偵察による状況調査。表には出す気はないけど、反乱軍やロタリンギア軍の討伐の功績。いろいろあるわね」
「み~!」
ミーちゃん、そこはどや顔いりませんから。面倒事を押しつけられるだけだよ……。
功績云々は良いとして貴族たちの心情の方が問題だと思うのですけど? 足を引っ張ることしか考えていない貴族がまともな兵を出すだろうか? あわよくば兵士に暗殺者を紛れ込ませて、俺を殺そうとする貴族も居ないとは言いきれない。
「兵士に関しては期待はしていないわ。代わりに彼らには戦費を負担してもらいましょう。そのお金で兵士を雇えば良いのよ」
「兵士といってもどこにそんな兵士が居るのですか?」
「み~?」
「手っ取り早いのは傭兵ね。傭兵といっても傭兵崩れの盗賊ではなく、他国から兵士を雇うの。まあ、実際には傭兵崩れも必要だけど」
どういうことかと言うと、北方連合のエルフ、獣人、ドワーフの国は現状戦争もなく落ち着いている。兵が余っているという訳ではないけど、同盟国への援軍という名目で、外貨を稼ぐ手段で傭兵のようなことをするそうだ。
「二千は欲しわね」
「み~」
「それに、捨て駒の傭兵崩れも二千というところかしら? 貴族の私兵を加えれば四千五百ほどね。補給部隊を入れると五千の部隊になるわ」
五千人規模となると旅団クラスか……大部隊だね。そんな人数を指揮なんてやっぱり無理。
「ちゃんとネロ君を補佐する者はつけるわよ。軍監だってこちらで用意するわ」
ヤバい。どんどん逃げ場が狭まってきている。そんな俺に反してミーちゃんは王妃様の前でフンッスとやってやるわよ~って顔してるし……。
取り敢えず、保留ということでお願いします……。
心疲れた俺は宮廷料理長の解凍の秘訣を書いたメモをもらって王宮を後にする。
いつの間にかレーネ様と仲良くなって、モフモフ談議に講じているレティさんを連れ出すのに苦労した……。それにしても、三歳のレーネ様とモフモフ談議って……。レティさんのモフモフ談議は三歳児程度なのか!?
今日は疲れたからもう家に帰って休む。明日も早起きしてヴィルヘルムでお魚買いがまっている。明後日辺りに商業ギルドで高級魚の受け渡しを行い、それ以外のお魚をこの前のように露天売りしよう。
次の日は朝早く出発。今日はグラムさんを連れてヴィルヘルムの港に来て爆買いをする。昨日も来て爆買いしたせいか、市場の人が俺を見かけると声を掛けてきて店の品を薦めてくる。
ちょっとした有名人になってるようだ。でも、良いものしか買わないよ?
買い物を終えて神猫商会ヴィルヘルム支店に顔を出す。
「よくもまあ、私の前に顔を出せましたわね。グラム」
「ク、クラウディア!? 」
「み~?」
あれ? お知り合いですか? まあ、ドラゴン同士ですから知り合いでもおかしくはないけど。でも、なにやら不穏な空気が漂い始めたような気が……。
近くに居たアレックスさんに小声で聞いてみた。
「あの二人は知り合いですか?」
「ハァ……。ネロ、なんてものを連れて来たんだ。最悪だ」
「み~?」
アルベルトさん、コンラートさんは俺を見てやれやれと首を振り、リーザさんはオロオロしている。ダミアンとロッテは何が起きているかわからずキョトンとしている。
お、俺が悪いの!?
「で、あの二人はなんなんですか?」
「婚約者……だった」
「だった?」
「み~?」
二人は婚約者同士だったけど、グラムさん失踪事件が起きてご破算になったそうだ。もちろん、グラムさんは知らないだろうね。
「みぃ……」
ミーちゃん、あちゃーって顔してグラムさんを見ている。どうやら、間に入って仲裁するか迷っているみたい。
夫婦喧嘩は犬も食わないって言うけど、恋人同士の喧嘩は猫も食わないって感じ?
「み~!」
えっ!? 山田君? ミーちゃん用布団、ネロくんに一枚? 山田君って誰? なんでミーちゃん用座布団なの?
「み、みぃ……」
な、なぜかミーちゃんに白い目で見られているのですけど……。
これも俺が悪いのか?
「み~」
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