342神猫 ミーちゃん、またしてもやれやれだぜぇ。

 くっ……説得は無駄に終わった。


 悔しいので俺もスキルを取ることにした。


 念願の身体強化とカオリンの百花繚乱だ。


 身体強化のおかげでちょっとだけ体が軽く感じられる。さっきまでとは明らかに違うのがわかる。熟練度をあげていないのにも拘わらずこの性能。熟練度があがるのが楽しみだ。


 カオリンの百花繚乱を選んだのは秘めたポテンシャルを買ってのことだ。植物の成長を早めるという能力。いろいろ役に立つのではないかと思っている。特に今回手に入れたサトウキビとカカオの栽培に役立てたいと思っている。


 さて、戦利品の分配も終わったので解散。ペロ達は今日は旅の買い物をして明日、王都に向かうそうだ。


 俺はレティさんを王都の家に送ってから、獣人の村に向かおう。


 狐獣人の村に行く前にグラムさんの実力を見る為、オーク狩りをする事にする。



「その姿であれ倒せますか?」


「み~?」



 いつもの通り、余裕をかましたオークリーダーが広場中央に立っている。



「俺を侮辱しているのか?」


「み~?」


「その姿で戦ってるところ見たことがないので。武器必要ですか?」


「いらん。ミー様も良く見ていて頂きたい。俺の実力を」


「み~」



 グラムさん、無造作にオークリーダーの元に歩いて行く。オークリーダーが首だけ動かしてグラムさんを見ると、目を大きく見開き一歩後ろに後ずさる。オークリーダー、相手の実力がわかるようだ。俺はまったくわからないけどね。


 オークリーダーじりじりと後退して行くけど、もう壁際ですよ。どうするの? と思ったら、反転剣を抜いてグラムさんに切り掛かった。



「豚如きが……俺に傷でも付けられると思ったか?」



 グラムさん振り降ろされた大剣を片手で受け止めている。受け止めた大剣から白い湯気が出ているように見えるのは気のせい?



「みぃ……」



 ミーちゃん、俺の服の中に退避してきた。広場の温度が徐々に下がってきている。オークの大剣から出ていたのは湯気ではなく、グラムさんの冷気で大剣が凍って氷霧を発生させていたようだ。


 寒いのが苦手なミーちゃん、俺の服から顔だけ出して観戦するようです。



 オークリーダーは目の前のグラムさんに底知れぬ鬼胎を抱き、表情を引きつらせている。見た目は普通の人族。普通……いや、イケメンの人族。けっ……。されど、その身から発せられる気は尋常ではなく異常。


 大剣から手を離さないのはオークリーダーの意地なのか?


 と、思ったら、どうやらカチカチに凍っているみたい。



「ふっ……雑魚だな」


「みぃ……」


「えっ、えぇー。駄目なのか!? 駄目なんだ……」


「せっかくの新鮮な高級肉が冷凍肉……もったいない」


「み~」


「お、俺が悪いのか……?」



 まあ、正直ちょっとがっかり。てっきり、烈王さんみたいにガツンと一発いくと思ってた。ミーちゃんもそうでしょう?



「み~」



 それが小手先技で仕留めるとは……。


 さあ、次に行きますよ。



「お、おう」



 重装備のオーク五体が居る広場に来た。


 ここは。俺とミーちゃんで戦おうと思う。身体強化を身に付けたおかげで、なんとなくいけそうな気がする。



「ここは俺とミーちゃんで行きます」


「お、おう」



 ミーちゃん、俺の肩に移動して神雷を発動し俺に供給を始める。うん、前よりミーちゃんの神雷を多く保持できてる。これは、期待できそうだ。


 充填完了。じゃあ、行きますか。



「み~」



 オーク達は既に戦う準備は整って、しっかりとフォーメーションを組んでいる。


 そんな敵陣に軽く踏み出す。


 十メル程離れていたのに、オークの巨体が目の前にある。ほんの少し腰を落としてオークの顎にアッパーカット。俗に言うカエルパンチ炸裂!



「ゲボラッ……」



 声にならない声をあげて宙を舞うオーク。宙を舞う仲間を何が起きたかわからず、呆然としているオークの一体に飛び蹴り。そして連続回し蹴り。二回目の回し蹴りは目測を誤り空振り。慣れない事はするもんじゃないね。ちょっと恥ずかしい。


 気を取り直して盾を構えているオークの盾に喧嘩キック。盾が飛んで行った。唖然としているオークの腹に手をあて神雷を流す。プスプス煙をあげて倒れ込む。


 残り一体のオークを見ると、少し大きめのミーちゃん神雷パンチがオークを襲いジ・エンド。



「なかなか良い動きだったと思わない?」


「み~!」


「供給と神雷パンチを同時におこなった、ミーちゃんもやるじゃない!」


「み~」


「……」



 グラムさん顎が外れるのではというくらい口を開けポカーン状態。それでもイケメンはイケメン。イケメンって生き物は……もげちまえぇー!



「すっきりしたから戻ろうか」


「み~」


「ま、待ってくれ! 今一度機会を!」


「いやいや、実力は十分にわかりました。それに、獣人の村へのお土産は十分なんで」


「た、頼む。ミー様、俺に機会をください!」


「みぃ……」



 ミーちゃん、またしてもやれやれだぜぇって……。まあ、俺も同じ気持ちなので、ミーちゃんに注意するのを躊躇ってしまった。



「俺はやるぜ!」



 ミーちゃんの許可が下りたグラムさん、やる気を漲らせている。大丈夫だろうか? なにか不安が広がる。


 グラムさんってなんとなく残念系だからね。空回りしないと良いけど……。


 ミーちゃんもそう思いませんこと?


「み、み~」





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