343神猫 ミーちゃん、風を感じました。
先程のオークに比べると、格段に貧相な装備になったオークの居る広場に来た。
「フフフ……見つけたぞ。我の道化となりしオーク共よ」
やる気を漲らせたグラムさん、準備運動を始めている。ドラゴンに準備運動なんか必要あるのだろうか?
やる気を見せているグラムさんには悪いけど、正直嫌な予感しかしない。
ミーちゃん、どうよ?
「みぃ……?」
ミーちゃん、だ、大丈夫じゃない? と言いながらも目を逸らす。まったく大丈夫とは思っていないようだね。
準備運動が済んだグラムさん、チラリとミーちゃんを見てニヤリと笑い、うりゃーとばかりにオークに突貫して行った。
それはそれは酷い光景だった……。
戦いが始まってすぐに、ミーちゃんは俺のコートのフードに隠れてしまうくらいにね。
一瞬でオークの目の前に移動したグラムさん、必殺の一撃とばかりにオークのたぷたぷのお腹にボディブロウをお見舞い。
上半身が革の鎧ごとミンチになった……。
残った下半身は汚物まみれ。あれじゃあ、例え高級肉だとしても食べたいとは思わない。ロースやヒレはミンチになって飛んでったしね。もったいない。
そして、これが五回も続いた。モザイクがかかってないのが不思議なくらいの地獄絵図。血と汚物のむせ返るような匂いに、吐かなかった俺を褒めて欲しい。
もちろん、ミーちゃんはフードの中から出てくる気はないようです。
「ハーハッハッハッ!」
広場の真ん中で満足気に高笑いしてるグラムさん。駄目だなこりゃ。置いて行こう。無駄な時間だった。獣人の村に急ごう。
「どうだ! 見てくれましたか? ミー様! って……お、おい、どこ行くんだよ」
「じゃあ、そう言うことで」
俺はニヒルな微笑みを見せ、踵を返して獣人の村へと歩き出す。
「な、なにが、じゃあ、そう言うことでだ! お、おい。ちょ、ちょと待ってくれ!」
「みぃ……」
ミーちゃん、やっとフードから顔を出したと思ったら、本日三度目のやれやれだぜぇが出ました。
「お、俺が悪いのかぁぁぁー!」
はい、そうです。
「み~」
ミーちゃん、通路を出て森に入ると管理者から貰ったフライングボードを出してちょこんとお座り状態で乗っている。地面から十五セン程浮きながら、歩く速度で動いている。
目の前の大木を避けようと、フライングボードを旋回させると遠心力でミーちゃんがコテンと倒れる。懲りずにフライングボードに乗って移動を始め、また大木を避けようと旋回するとコテンと倒れる……。
「みぃ……」
ミーちゃん、悲しそうな目で俺を見る。隠れ運動神経抜群のミーちゃんにも不得意があったんだね。
まあ、解決策は簡単。体重移動をすれば良いだけだよ。
右に曲がりたいなら右側に体を傾ける。左に曲がりたいなら左に体を傾けるだけ。簡単でしょう?
「み~!」
ミーちゃん、フライングボードに飛び乗り旋回の練習。体を傾け過ぎてコテン。遠心力でコテン。何度もコテン……コテン。
「みぃ……」
そんな恨めしい目で見られても困るのだけど……帰って練習かな?
試しにミーちゃんを抱っこして、フライングボードに乗って動かしてみる。操作用の腕輪をミーちゃんの首から外して手に付ける。
進め。おぉー、動き出した。早歩きくらいのスピードにして、すいすいと木々を躱して走らせる。これは快適。スケボーやスノボーは得意な方だったので、体重移動はなんら問題ない。
ミーちゃん、肩の上に移動して風を感じてご満悦。スミレに乗るとスミレのスキルのおかげでまったく風を感じないから、こうして風を感じるのは心地良新鮮な感じがする。
後ろを振り返るとグラムさんとだいぶ離れてしまったので、方向転換して戻る。
うなだれたままトボトボと歩くグラムさん、目が死んでるね。なにか、ぶつぶつ言ってるけど聞き取れない。
ミーちゃん、コテンと首を傾げてグラムさんを見る。
「俺が駄目なのかぁ……」
「みぃ……」
さ、さあ、狐獣人の村はもうすぐそこですよ。
「お待ちしておりました。ミー様、ネロ様」
狐獣人の長と囲炉裏の前でご対面。あ、暑いです。
話し合いは明日、町の跡地で獣人の長達を集めてする事になり、今日はここで一泊する事になった。
狐獣人さん達が料理を振る舞ってくれると言うので、
準備が整うまで、ミーちゃんと一緒に狐獣人の赤ちゃんを抱っこさせてくれるようにお願いすると、逆に村の恩人に抱っこして頂けると恐縮されてしまった。
グラムさんは広場の隅っこで体育座りでまだぶつぶつ言ってます。そんなグラムさんをほっといて、狐獣人の赤ちゃんを抱っこする。
「み~」
キャッキャとニコニコ笑顔でミーちゃんの前脚を握っている赤ちゃん。か、可愛いです!
いつもなら、この辺りで奪われるところですが、今日は赤ちゃんを奪う不届き者は居ません。ミーちゃんも、赤ちゃんにスリスリ、ペロペロとこの可愛がりよう。
パルちゃんを可愛がるのとは、またちょっと違う感じ。
そんな、赤ちゃんとミーちゃんをぎゅうっと抱きしめると、赤ちゃん特有のミルクの匂いがした。
とても心温かく幸せな気分になれた。
「み~」
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