334神猫 ミーちゃん、知らないことばかりです。
ユグドラシル・システムはこのマヤリスからエネルギーを得て動く、AIを搭載した半永久機関のシステム。後に神人がこの世界を離れた時の為に、この星の住人をサポートする為に作られた。
種の保存、知識の保管、それを守る為の対モンスター防御システムなどが備えられている。そして、ユグドラシル・システムの最大の能力が種の進化。
ユグドラシル・システムが優秀な者を選び、遺伝子操作を行い進化した種へと生まれ変わらせる。ある者はハイ・エルフに、ある者はハイ・ドワーフへと、またある者はハイ・ビーストマンへ。
優れた者に力と長寿を与える事でこの世界の住人を神人に代わり、導いていく役目を負わしていく。神人は一つの鍵であってこの世界の住人にはなり得ないのだから。
「ハイ・エルフは今でも居ますね。実際に知り合いに居ます。でも、ハイ・ドワーフやハイビーストマンは会ったことがないです」
「み~」
「そうか……この大陸のヴァルハラ・システムは生きているのか。ユグドラシル、シャンバラ、バベル、須弥山、バビロンはどうであろうな……もう、我らに知る術は無いが」
進化した者達に率いられたエルフ、ドワーフ、獣人達はモンスターを押し返し、領域を他の大陸にまで伸ばした。魔王と呼ばれる程の強さを持ったモンスターも彼らには敵わず倒され数を減らし、このまま順風満帆に進むかと思われていた。
神人は今後のことを、このまま進化した者達に任せれば良いと思い始めていた時に、この星を観測していた神人から驚愕の報告を受ける。
どこからともなく現れた魔王によって、モンスターの国が作られたことを……それも、複数同時に。
「突如現れたかと思えば、僅かな時間で国と呼べる程のものを作り上げた」
「ゴブリンキングもそうですね。配下のゴブリンだけでなく、城や物資も急に現れたとしか言いようがないです」
「み~」
「我々が神によってこの地に来たように、魔王やモンスターも神と同等の力を持った者によってこの地に送られて来たと考えている」
「神と同等の力ですか?」
「み~?」
「ああ、我々はそれを邪神と呼ぶ」
魔王達はこの星に広がったエルフやドワーフ、獣人達の町に襲いかかる。いかに進化した者達に率いられてるとはいえ、数の暴力には敵わず一進一退を繰り返す。
そこで、神人は神に許しを得てこの星にスキルと言う名の力を与えた。おかげで一時的に魔王達に打撃を与えることが出来たが、本来であればエルフ、ドワーフ、獣人にしか与えられることないスキルを邪神が神の理を捻じ曲げ魔王やモンスターにもスキルが与えられるようにした。
こうなると、イタチごっこの様相を呈するが神人も後に引く事ができない。神人は魔王達に対抗する為に更にAFを与えた。
AFとは、道具に神力を与えて様々な能力を持たせた物である。ある程度、どのような能力を与えるか決めることができるが、どれ程の神力を与えられたかでその強さが変わってくる。
「やはりそうなんだ。ミーちゃんにAFを持たせておくと能力が上がってくるから、そうなのではと思っていました」
「み~?」
「今の我らには神界に繋がる道を作れないので、たいしたものしか作れない。だが、邪神の造った迷宮からは稀に強力なAFが見つかる」
「迷宮は邪神が造ったものなんですか?」
「そうだ。AFを直接与えるのではなく、与えられるだけの力を持った者が、自らの力で手に入れられるように造ったと、我々は考えている」
邪神の造った迷宮のせいで魔王の中にもAFを手に入れる者が現れ、より強大になっていった者達がエルフ達だけでなく同じ魔王を倒して更に国を大きくしていく。
個々の能力だけで言えば、エルフやドワーフ、獣人はモンスターなど敵ではなかった。しかし、強大な力を手に入れた魔王の下にも進化を果たした強いモンスターが現れ始める。そのうえ、モンスター数がどんどん増えていき数の暴力に押され追いつめられていく。
神人は起死回生を狙い強力なAFを作り前線に投入するが、一時的な戦果をあげるにとどまる。流星を落とすAF、津波をおこすAF、大地を割るAF、AFを使って多くのモンスターを倒したは良いが荒れ果てた大地が残るのみ。これでは、魔王やモンスターを滅ぼしたとしても、この星に人が住めなくなる。
完全に行き詰ったなか、一人の神人が魔王討伐に名乗りをあげる。
「名乗りをあげた者は長寿の為に気を病んで、死にたがりとなっていたのだ。我々はユグドラシル・システムを作り上げた以降はできるだけ、我々神人が直接この世界に干渉しないように努めてきた。しかし、そうも言っていられない状況になり、生に絶望を感じていた者にとって好機に見えたのだろう」
「死を望むなんて信じられない……」
「みぃ……」
「それだけ追い詰められていたのだよ。苦痛の日々より、安楽な死後の世界に」
神人の能力は魔王より優れている。しかし、魔王の元まで辿り着くのは至難の業。そこで、名乗りをあげた神人の他に更に名乗りをあげた四人の神人で魔王討伐をすることになる。
流石に神人の五人パーティーに敵は無く見事魔王を討伐したかに見えたが、観測チームから倒したはずの魔王復活の報がもたらされる。その報を受け別の魔王を討伐してみるが、やはりすぐに復活することがわかった。
これにより、神人の中で議論が起こり、結果いくつかの仮説がたてられる。そのなかでもっとも有力とされたのが、神力以外では消滅させることができないという説。
「神力ですか? 勇者が魔王を消滅させることができるのは、その神力のおかげ?」
「み~?」
「そうだ。勇者が魔王と戦うまでに蓄えてきたエネルギーを使い、神力を爆発させることで魔王を消滅させる」
「神人だって神力を持っているのでは?」
「み~?」
「魔王を消滅させるには強力なエネルギーで神力を連鎖爆発させるしかない。我々はその術を持っていなかった」
「魔王同士が戦い片方を消滅させられるのは?」
「魔王は言わば邪神が召喚した勇者。邪神の力を得ていてもおかしくはあるまい」
「邪神が召喚した勇者……」
「みぃ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます