332神猫 ミーちゃん、管理者を寂しい目で見る。
「普人族はそこまで傲慢な種族と成り果てたか……」
勇者召喚て言うと聞こえは良いけど、結局誘拐してきて無理矢理戦わせているだけだからね。全ての人がって訳じゃないけど、やっぱり酷い事だと思う。
「み~」
神様が勇者召喚する時は、相手と話をして同意の元この世界に送っているとハウツーブックに書いてあった。勇者召喚を行うのはこちらの神様で、勇者を選ぶのは向こうの神様らしい。
神様が直々に選ぶから神様が行う勇者召喚で呼ばれる人はまともな人だけど、こちらの世界の権力者が無理矢理連れて来る勇者はランダム。たまたま、道が開いた場所の近くに居た人が、強制的に引っ張られてくるらしい。まともな人も居れば、異常な人もやってくる。困ったものだよ。誰とは言わないけどね。
「そこに居る二人も勇者召喚で来た者達ですよ。ここには居ませんが、隣の国にも三人居ます」
「み~」
「魔王対策か?」
「
「みぃ……」
「落ちたものだな。導き手が無くば闇へと進むか……」
導き手? もしかして神人が導き手だったのかな。そもそも、何故こんな所に神人が居るのだろう?
「このお菓子は少しだが神の力を感じる」
「み~」
ミーちゃんクッキーを食べた管理者がポツリと呟く。美味しいじゃなくて、神の力を感じるってのが管理者らしい。
「この迷宮を管理しているのは、あなただけなのですか?」
「いや、十名程居るが、今起きているのは私だけだ」
迷宮が地上に出ると順番で一人が起きてこの迷宮の管理をする事になってるそうだ。じゃあ、この数百年の間はどうしていたのか聞くと、アーティフィシャル インテリジェンス略してAIが管理しているそうだ。神人たちはコールドスリープのような状態で寝ているけど、睡眠学習のように世界の出来事を見ているらしい。
「どうやってこの世界の事を知るのですか?」
「流れ迷宮と呼ばれるものはここだけではない」
「他の迷宮と情報のやり取りをしていると?」
「そうだ。人工の星を使ってな」
「人工衛星があるのですか!?」
「ほう。人工衛星を知っているのか。君の居た世界は科学の進んだ世界のようだな」
スキルも無くモンスターも居ない世界。まあ、違った意味でのモンスターは居るけど。でも、人工衛星があるのか……何とかして使えないものだろうか? って、そんな知識これっぽっちも持ってません。持ってたとしてもこの世界じゃ作るのは無理だろうけどね。
いや待て、一人天才が居たな。ゼルガドさんに丸投げしてみるのも一見の価値があるかも。駄目元だしね。
「何故、数百年の間、地上に出てこなかったのですか?」
「故障だよ。我々は迷宮が地上に出なければ目覚めないように設定してある」
「一生目覚めない事もあるのでは?」
「あるかもな。だが、それも運命」
運命で方が付く神人って……どうなのよ?
「AIが応急処置を終えたので、今回地上に出て私が目覚めた」
「修理は済んだのですか?」
「ある程度の指示をAIに出したが、私は観測が専門でね。修理関係は得意ではない。次に目覚める者がその専門だ。それまで維持出来れば良い」
「いつ目覚めるのですか?」
「この迷宮が地下に戻り、また地上に出た時だな」
「また何百年後になる可能性もあるのでは?」
「あり得るな。或いは、もう目覚める事がないかもしれん」
「みぃ……」
なんとも達観した態度。余り命と言うものに重きを置いてないようだ。ミーちゃん、管理者を寂しい目で見てます。不老不死のミーちゃんだって、生きる事は喜びにあふれ愛を育む大事なことだとわかってるのにね。
「み~」
寂しい人達だね。何故、神人はこのような寂しい場所に居るのだろう? 他にも神人が居るようだけど、皆同じような考え方なのだろうか? 烈王さんが言ってた事も気になる。烈王さんは、神人が神から神界に戻る事を許されなかったと言っていた。神界に戻らず、こんな寂しい所に残って居るのも何か理由があるのだろうか?
「そろそろ、あなた達神人について教えてくれませんか?」
「み~?」
「長い話になるが良いか?」
「時を止めているのでしょう? 時間はいくらでもあるのでは?」
「時は止めていない。この空間の時間を遅くしているだけだ」
じゃあ、なんで俺達だけ普通に動いているの? って聞くのはナンセンスかな? スキルの力だって言われるのが目に見えている。この空間の時間を遅くしているって事は、今現在進行形で浦島現象中って事だよね。外に出たら何年も経ってたりして……。
「安心するが良い。遅くしているというより、引き伸ばしていると言うのが正しいので時間に然程の変化は無い」
ちょっと安心。これで気兼ねなく話を聞けると言うものだよ。
「み~」
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