328神猫 ミーちゃん、格の違いを見せつける。

「それで、お前はなんで迷宮なんかに居るんだ?」


「そ、それは……」



 ラルくんとクリスさんの叔父さんドラゴンの名はグラム。物騒な名前ですね。そのグラムさんがこの迷宮に居る訳を語り出した。



 聞くも涙、語るも涙のお話だったけど要約すると、世界中を見てみたいと竜の島を飛び出したのは良いけれど、途中で遭遇した神人と戦いになり負けたそうだ。ドラゴンに勝つ神人の強さ恐るべし。


 そんな戦いに勝った神人はグラムさんを殺さずに強制的に契約を結んだそうだ。食事に不自由させない代わりにこの迷宮の番人になれって契約らしいね。鑑定で見ると『神人の下僕』と出ている。なかなかに酷い契約だよ。


 それでも、最初のうちは強い奴と戦えると思って渋々だけど従っていたらしい。けど、待てど暮らせど誰も来ない。そりゃそうだ。この迷宮が地上から消えて再度地上に出たのが数百年ぶりなのだから……。


 どうやら、グラムさんは精神的に限界にきていたらしい。神人には契約を結んでいる為抗えず、その怒りをぶつける相手も居ない。そんな折に、俺達が現れたものだから常識と言う名の糸がプチンと切れたらしいね。なんて、迷惑なことでしょう。



「み~」



 そう言えば、、戦いが終わったって言うのにペロ達が出て来ない。通路の方を見ると皆が家政婦さんは見た張りに、半分顔を出してこちらを伺っている。手でコイコイしてみたけど、ペロ達は首をぶんぶん振って隠れてしまった。余程、烈王さんの気が怖いらしい。


 ジンさんはその場に座り込んでいるし、レティさんはペロ達の方に行ってしまいセラを抱きしめている。モフモフ成分を補充してるようだ。



おさ。助けてください。もう、ここは嫌です。大空を飛びまわりたい!」


「神人如きに負けたお前が悪いんじゃね?」


「ぐっ……」


「俺の言う事も聞かずに飛び出して行ったのは誰だ?」


「ぐ、ぐっ……」



 まあまあ、烈王さんその位で許してあげたらどうですか? 仮にもラルくんとクリスさんの叔父さんで義弟なんですから。



「み~」


「まあ、眷属殿がそう言うなら仕方がない。やぶさかではあるがな」


「お、おさ……」



 烈王さん、グラムさんに何か思うところがあるのかな? タコ殴りにしたのといい。ちょっと厳しくないですか?



「しかしな、契約していたものを反故にするには結構面倒くさい。なので、契約内容を上書きする方が簡単だ」


「そ、それでは長と契約を……」


「嫌だ。お前を従属させたところで俺にメリットが無い」


「そ、それでは私はどうすれば……」



 烈王さん、ニヤニヤしながらこちらを見ているのですけど?



「お前は運が良い。ここに神人なんぞより格の高い眷属殿が居るのだからな」


「「えっ!?」」 


「み~?」


「さあ、眷属殿。この阿保竜を下僕にするのです!」


「み~? み~!」



 ミーちゃん、何を思ったか俺の服の中から飛び出して、グラムさんの頭に乗ったかと思うとテシテシとグラムさんの頭を叩きだしたよ?



「み~! み~! み~!」



 ミーちゃん、ドヤ顔で雄叫びをあげ始める。久しぶりに見たね。ミーちゃんの雄叫び。


 まさかと思ってグラムさんを鑑定してみると『神猫のしもべ』と出ていた。ミーちゃんやっちゃったのね……。ある意味、ドラゴンを潰したって事になるじゃないだろうか?



「お見事!」


「み~!」


「「……」」



 ミーちゃん、またグラムさんの頭をテシテシしてる。飛んで欲しいみたいだ。そう言えば、ミーちゃん飛竜に乗って飛んだ時大喜びだったよね。ミーちゃん専用飛竜……どころか竜を手に入れちゃった。


 ラルくんとクリスさんの叔父さんなんですけどね……。良いのか?



「眷属殿。遊びはまた今度な。じゃあ、俺は帰るわ。お前は眷属殿と一緒に帰れ。ネロ、報酬ヨロ~」


「ぐっ……しょ、承知しました。ミー様、よろしくお願いします。ネロとやらもな」


「み~」



 ミーちゃん、しょうがないわねって顔で俺の服の中に戻ってきた。あったかぽかぽかだよ。烈王さん、ここが終わったら時空間スキル習うついでに報酬渡しにいきますよ。


 それから、グラムさんもミー様ですか……で、ネロねぇ。もう、どうでも良いや諦めた。



「待ちたまえ!」



 烈王さんが帰ろうとした時、急に目の前に迷宮の管理者が現れた。烈王さん、凄く嫌な顔になる。以前に神人と何かあったのだろうか? 烈王さんがこんな顔をするなんて始めて見た。



「勝手に契約を破棄されては困るのだよ」


「まさか、まだこの星に残って居たとはな……神人如きがなんの用だ。消えろ」



 ここで、迷宮管理者がまじまじと烈王さんを見たと思うと、次の瞬間次元竜とわかって畏怖したのか青褪めている。



「どうして、ここに……おっほん。その竜は我々に挑みそして敗者となり、殺される代わりにこの迷宮の門番になると契約を結んだのだ。勝手に契約を破棄して帰られるのは困るのだよ」


「そんな事、俺の知った事か。それに、契約は上位者によって上書きされた。なんの問題がある?」


「上位者だと……ま、まさか信じられん」



 神人って言うくらいだから、神様と繋がりがあるのかな? ポンコツ神様の眷属だろうか? それとも、ポンコツ神様達のお父さんの方かな?


 それにしても、ミーちゃんって神様の眷属の中でも格が高いんだね。実は格って、可愛がられてた順番だったりして?



「み~?」



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