324神猫 ミーちゃん、しっかり者です。

 結局、昨夜はどんちゃん騒ぎ。ミーちゃんジャーキーのお陰で、迷宮探索して溜まる精神的疲労が回復したせいだと思う。流石、神様仕様。疲れたのは準備と片付けをした俺くらいかな……。


 皆、風呂に入った後朝までぐっすり。若干二名二日酔いが居るけど、お約束のミネラルウォーターを飲ませて回復させる。



「金貨十枚が消えていくっす……」


「迷宮探索して赤字にならねぇよな……」



 なら、二日酔いになるまで呑むなって言ってやりたい。レティさんを見習え。同じくらい飲んだのに二日酔いにならず、朝起きてからミーちゃんをモフモフしたりクンスカしたりと通常モードだぞ。レティさん、そろそろ、ミーちゃんが嫌がってますよ。



「み~」


「じゃあ、セラ。おいで」


「にゃ!?」



 セラがビクっとして固まっている。まあ、いつもの事だ。セラ頑張れ。



「にゃ……」



 朝食を食べ終え、探索を開始する。皆には昨日の夜に俺の考えは話してある。ジンさんも迷宮の最下層が近いと感じていたそうだ。皆の士気も上がっている。



「最下層に着いたら何か貰えるんですよね」


「何が貰えるかなぁ? にゃんこ先生は何が欲しい?」


「そうだにゃ~。嫁が欲しいにゃ!」


「「……」」



 それは無理だと思うぞ。ペロ。お嫁さんが欲しいなら、一度里に帰ってみたら良いんじゃない?



「うーん。そうだにゃ。それに、ママにゃんが弟か妹を生んでるかもしれないからにゃ。会いたいにゃ」


「「おぉー」」


「み~」



 ミーちゃんもケットシーの赤ちゃんに興味ありの様子。ミーちゃん、赤ちゃん大好きだからね。狐獣人の赤ちゃんにもべったりだったもんね。ケットシーの赤ちゃん、可愛いんだろうなぁ。俺もペロに一緒について行こうかな。



「み~」




 安全地帯を出発して何事もなく下の階層に降りる階段に着き下りていく。壁は洞窟の様な荒削りで一本道。ここまで来ると、余計な罠やザコモンスターは出て来ないようだ。


 ジンさんが立ち止まり皆を見る。よく見るとジンさんの額に汗が滲んでいる。



「ネロ。これはマジでヤバイぜ」



 ジンさんの危険察知スキルが反応したようだ。俺の直感スキルに反応は無い。最近、俺の直感スキルは働いていないような気がするけど……どうなのよ?




「凄い重圧プレッシャーにゃ……」


「にゃ……」


「俺……ちびりそうっす」


「なんか、胸が苦しいです」


「あたしも……」



 皆、何かの重圧に耐えてるかのような表情をしている。いつもクールなレティさんでさえ、俺の腕を掴んでいる。


 うーん。俺は何も感じないんだよね。ミーちゃんなんか、俺の肩の上で欠伸までしている。いつも通りの平常運転だ。



「み~」



 ジンさんは悩んでいるようだ。先に進むか、撤退するか。でも、ここまで来て撤退する気は無い。



「俺は……進みたいです。皆は?」


「み~」


「い、行く決まってるにゃ!」


「にゃ!」


「ここまで来て帰れませんよ」


「行くしかないのだ!」


「私は少年の妻だからな、ついていくに決まってる」


「ハァ……。行くしかないっしょ」



 皆も想いは同じようだ。それを聞いたジンさんは呆れ顔。でも、ジンさんも行くんでしょう?



「言っとくが、お前らの面倒をみる余裕はないかもしれないぜ」


「まあ、行ってみて駄目だと思ったら、撤退も視野に入れるって事でよいのでは?」



 行くだけ行って何があるか見てからでも遅くないのでは? 最悪、危ないと思ったら全員を転移プレートでクイントまで転移するつもりだ。ゴーレム回廊の前の安全地帯に転移門は設置しているから、再度挑戦も可能だしね。行くだけ行ってみようよ。


 ルーさんが先行して見てくると言いましたが止めた。ここまで来てザコモンスターが出て来るとは思えない。どうせ、この先でボスモンスターが待ち受けているのだろう。急ぐ必要はない。


 誰も喋る事なく淡々と進んでいくと、道の先に明かりが見えてくる。全員にミーちゃんのミネラルウォーターを渡しておく。遠慮しないで飲んでください。命大事にですよ。


 ミーちゃんもミーちゃんバッグから転移プレートを出してきて咥えてます。良くわかってらっしゃいますよ。うちのミーちゃんはしっかり者です。転移プレートに紐を通してミーちゃんの首に掛けておく。ミーちゃんはいつも俺の肩の上か、コートのフードの中に居るので、何かあればすぐに転移できる。


 俺も戦う準備をしよう。銃は正直、高レベルモンスターには力不足だ。動きやすくする為ミーちゃんバッグにしまう。代わりに水の入った水袋を担ぐ。水を過冷却状態にしてぶつけても良し、そのままぶつけて雷スキルの補助にしても良いと思う。


 今、考えられる最適な状態になる。皆も準備が整ったようだ。



「準備は整った。いざ、行かん!」


「姉さん、矢筒を忘れてるよ……」


「……テヘペロ♡」


「本当に大丈夫かよ……」


「ジンさん、いつもの事っす」


「緊張感ねぇなぁ……。緊張してる俺が馬鹿に思えるぜ」



 まあ、それがこのパーティーの良いところ。ガチガチに固まって動けないよりましだと思うよ?


 さあ、本当に準備が整ったようだ。


 じゃあ、行きますかね。



「み~」



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