283神猫 ミーちゃん、苦労してるんです。

 夜遅くだったけど、ユーリさん達との楽しい夕食を終えて風呂に入ってゆっくり休む。朝、早く起きてレティさんを連れてクイントに飛ぶ。


 みんなも準備が整っていたので、こちらも倉庫に山積みされた武器防具をミーちゃんバッグに収納してもらい、集合場所の門へと急ぐ。



「お久しぶりです。ブロッケン男爵殿」


「やめてくださいよ。ネロで構いません」


「み~」


「なぁ、だから言ったろこいつはネロで良いんだよ」



 虎ミミのラウラさん、あなたには是非とも敬ってこうべを垂れて欲しいですね。



「み~」



 暗闇の牙のリーダーである豹ミミのケヴィンさんは申し訳なさそうにこっちを見てる。



「他の貴族の前では困りますけど、今は一介のハンターネロでお願いしますね?」


「一介のハンターには到底見えんがな……了解した。今回もリーダーはネロで良いんだな?」


「戦い以外でしたらそうなります。戦いに関してはジン……ジクムントさんの指示に従ってください」


「五闘招雷のジクムント殿とご一緒させて頂けると聞き、大変恐縮です。私は暗闇の牙のリーダーをしていますケヴィンと言います。よろしくお願いします」



 暗闇の牙のメンバーが自己紹介してくれているけど、俺達にって言うよりはジンさんにって感じだね。ラウラさんなんか握手までお願いしてるし。いつも普通に接しってくれてるからだけど、ジンさんってやっぱり凄い人なんだよね。


 うちのメンバーの紹介も終わり、ペロとセラが久しぶりの再開に話に花を咲かせている。ミーちゃんもモフられてます。



「どう言う知り合いだ? ネロ」


「ゴブリンキングの偵察に一緒に行った二つのパーティーの一つです」


「もう一つは、俺の蒼竜の咆哮っす」


「お前らも苦労してんだなぁ」


「み~」



 そこ! なに、ウンウン頷いてるんですか! ミーちゃんも何故頷いてらっしゃるんですか?



「確かに死ぬような思いはしましたが有意義な依頼でした。あの依頼は我々のパーティーの誇りでもあります」


「依頼料も良かったっす」



 ルーさん……見も蓋もない事を……。


 今回の件はセリオンギルド長から何も聞いていないと言う事なので、暗闇の牙のパーティーに今回の依頼内容を伝える。



「帰って良いかな?」


「また死地に送り込まれるのか……」


「馬鹿野郎! 俺達の同族同士が争ってるんだぞ!」


「そうよ。これこそ意義ある事よ」


「まあ、ネロだしな」



 なんですか? ラウラさん、俺だとなんか問題でも?


 ここで長話もなんなんで、迷宮へ移動を開始する。宗方姉弟も暗闇の牙のメンバーとはすぐに仲良くなって話に混じっている。レティさんは深々とフードを被っているけどね。どうせ、中に入れば脱ぐんだから同じなのに……やはり魔族と言う事に引け目を感じるのだろうか……。



「いやぁー、飯が旨いんだよ!」


「そうよね。普通依頼を受けて外に出たら不味い携帯食が普通だから」


「安心するにゃ。ネロと一緒にゃら美味しい食事以外あり得にゃいにゃ!」


「にゃ!」


「ネロさんと一緒にいて不味いもの食べた事ないですからねぇ」


「ネロさん、商人なんかやめて料理人になるべき~」


「ん? ネロは貴族だろう? そこで何故、商人が出てくるんだ?」


「ネロは、貴族で商人でハンターでもあるからな」


「「なんだそりゃ!」」



 ハイハイ、無駄話もその辺でね。迷宮に着きましたよ。ジンさんがギルド職員さんと受け付けを済ませてくれる。さあ、行きますか。



「魔族だったのか……」



 レティさんが迷宮に入りフードを外すと、案の定こうなった。



「レティさんは元義賊ギルドに居た方です。今はうちの神猫商会で働いてもらっています。主に俺とミーちゃんの警護担当ですかね」


「み~」


「ぷっ、神猫商会って……」



 なんですか? アニヤさんあなただって猫獣人でしょう。何か文句ありますか? それに突っ込む所はそこですか? 代表のミーちゃん、プンプンですよ。



「み~!」


「言っとくがこいつは強いぜ。お互い本気を見せた事はねぇが、やり合ったら勝てるかどうかは運かもな」


「五闘招雷のあなたにそこまで言わせるとは……」



 犬獣人のラルスさんの犬ミミがピコピコしていて可愛いです。でも、男なんですよねぇ。やっぱりパトさんは別格だね。



「み~」



 一応、暗闇の牙のメンバーはそれほど魔族に対して偏見は持っていないようなので大丈夫でしょう。それに、百聞は一見に如かずレティさんの実力を見れば自ずと納得するはずだよ。


 一階層、二階層のゴブリン、ロックリザードは無視して先を急ぎ三階層に降りる道に来ると暗闇の牙のパーティーが立ち止まる。



「盾役が居ないが、大丈夫なのか?」



 猫獣人のティムさんが不安な声を出す。他のメンバーも同じ感じ。



「俺が盾役を引き受ける。問題ねぇよ」


「取り敢えず、俺達が先に戦いますので、その後随時参戦してください。人数が多いですからローテーションで行きましょう」


「み~」



 今回、ミーちゃんはお休み。神雷スキルはギリギリまで使わないでもらう。俺の雷スキルの供給はしてもらうけど。



「み~」



 ルーさんが先行して索敵してくる。進む道は前回と同じ、先に進む事を優先させる。すぐにルーさんが戻って来てロングテイルエイプがこの先に居る事を教えてくれる。


 気付かれないギリギリの場所まで近づき俺とカオリンで先制攻撃。後はジンさんが前に出てロングテイルエイプを引き付け、各自攻撃に回る。いつもと違うのはトシが攻撃に回らず、ジンさんと同じように盾役に回っている事だ。剣より槍の方が牽制しやすいから、ジンさんの指導のもと盾役の訓練をしてるらしい。実践でやらせる所がジンさんらしく、鬼教官と言われる由縁だね。



「凄いな……圧倒的じゃないか」


「あたしらが手も足も出なかった相手なのにな」


「相性と言うのもあるが、こいつら強いぜ」


「あの魔族の女も凄いよ」


「そうだな……」



 慣れもあるけど、みんなの動きがとても良い。連携が良くなってきている証拠だ。無理はしないで仲間を信用して任せられる。良いパーティーだよ。



「み~」



 倒したロングテイルエイプをミーちゃんバッグに収納して、先に進む。次の戦いからは暗闇の牙も参加してくれて戦いが楽になる。暗闇の牙のメンバーはしきりに盾役って大事だなぁって唸ってます。ジンさん様々だね。



「み~」







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