282神猫 ミーちゃん、高級肉をご馳走する。

 烈王さんの杯に新しいお酒を注ぐ。



「それで、どんな事を学びたいんだ?」


「全て。なんですけど、取り敢えず転移関係からお願いします」


「まあ、初歩の初歩だな。いつからやる?」


「すぐに覚えられるものなんですか?」


「センス次第だな」


「み~」



 センスですか……そう言う物は持ち合わせていないんだよねぇ。



「できれば、すぐにでも転移門を作れるようになりたいんです!」


「なんに使うんだ?」


「流れ迷宮の出入りに」


「そんなもん。ギルドか国にやらせれば良いんじゃねぇ?」


「すぐには作ってくれませんよ。所詮お役所仕事ですから」


「しょうがねぇなぁ。なら何個か作ってやるよ。但し、迷宮用だからな」



 迷宮用と言うより短距離の転移門なのだそうです。前に貰った転移門は遠距離も可能なうえ、制限まで付けられる高性能版。


 烈王さん、また紙を取り出してサラサラと何かを描いていく。



「これとこれが対な。わかりやすいように同じ印を描いといた。使い方はこの前と一緒だ」



 十枚の紙を渡してきた。対になっていると言うから五個分の転移門なんだろうね。助かるわぁー。



「しかし、迷宮のどこが楽しいんだ? ありゃあ、神人が造ったもんだろう」



 さらっと凄い事を口にしたね、烈王さん。



「そ、そうなんですか? でも、いろいろ役に立つ物が手に入るので人族にとってはとても貴重なものなんですよ。オークのお肉も手に入るし」


「オーク肉だと! ネロ、持ってるのか! あれは旨いんだよ!」



 竜もオーク肉が好きなようだね。外に出て火を起こして、解体してもらったオーク肉を串に刺して焙っていく。走り回って遊んでいたルーくんとラルくんもその匂いに誘われ寄ってきてお座りして待ってるね。食べる気満々。


 スミレは森の中を自由に駆け回っているので戻って来る様子はない。思う存分楽しんでください。また、当分うちの牧場だけの生活になるから。


 焙ってるお肉に塩胡椒を振りかける。他にも味噌焼、甘辛醤油焼も作った。ミーちゃんの為にお魚を焼くのも忘れてませんよ。



「み~」



 焼けたお肉を細かく切ってお皿に盛りルーくんとラルくんの前に置く、ミーちゃん用のお魚もほぐしてお皿に盛ってあげる。その間もルーくんとラルくんはちゃんと待ってます。お子ちゃま達が待ってると言うのに……。



「旨めぇー! こいつにはエールだな、エール。ネロ、エールくれ!」



 男親の威厳以前にひととしての威厳はないのか!



「召し上がれ」


「み~」


「がう」


「きゅ~」



 うちの子達は本当に良い子だよ。それにしても、オーク肉に味噌あうねぇ。味噌漬けにすればもっと美味しいかも。オーク肉は生姜焼きにしても良いかな? 厚く切ってトンカツ……ソースが無いんだった。ならカツ丼で決まりでしょう!


 烈王さん、遠慮なくパクパク食べるし飲む。オーク肉はオークから百キリ位取れるけど、その中でも最高級部位は一キリ五万レト以上で取引されるらしいです。


 その最高級部位をパクパクと……。



「ネロ、おかわり!」



 烈王さんオーク肉に満足したようで、エールをやめて蒸留酒に戻したようだ。スミレも満足したのか戻って来たので、後日時空間スキルを学びに来る事を約束してお暇する。



「ネロ、お酒置いてけよ」


「きゅ……」



 ラルくんが恥ずかしそうに顔を逸らした事は見なかった事にしようね。


「み~」



 うちに戻ると馬屋の横の倉庫に武器防具が届いてると言うので、収納しに行くとなかなかの量が揃っていた。義賊ギルドの人達頑張ったんだろうね。プリンだけじゃなくオーク肉も送った方が良いかな?



「み~」



 その日の夜はユーリさんが戻って来てからみんなとオーク肉を食べた。夜遅くだったけどルーカスさんの弟のベルティさんの奥さんエフさんが、腕に縒りを掛けてオーク肉を料理してくれた。エフさんもうちに来てからうちの調味料を使うようになり、もともとの腕もありとても美味しい料理を作ってくれる。



「おいひぃでふ!」



 ヤナさんちゃんと食べ終わってから喋りましょうね。お行儀が悪いですよ。ルーカスさんのいとこのフランツさんとテレサさんは黙々……涙を流して食べてるね。ルーカスさんとカティアさんララさんはいつもと同じように行儀良く食べてます。ベン爺さんはほんの少しだけ食べて、残りはルーくんとラルくんに食べさせていた。お口に合わなかったかな? レティさんはこの間食べてるからそれ程の感動はないようだ。



「久しぶりに食べましたが、やはり美味しいですね」



 ユーリさんはハンターをしていただけに何度か食べた事があるようだ。



「あの迷宮にオークが出るとなると、多くのハンターが集まるのではないでしょうか?」


「どうなんでしょう? すぐ近くがゴブリンキングと戦ってる場所ですからね。そっちに行っちゃうんじゃないですか?」


「それを踏まえても、オークはハンターにとって最高の素材ですから集まると思います。セリオンギルド長が情報を開示すればですけど」



 今、あの流れ迷宮はハンターさんの出入りを規制している。あまり多くのハンターを入れてしまうとモンスターの取り合いがおきて、最悪ハンター同士の殺傷沙汰が起きるのを防ぐ為だ。


 オークも多く居る訳ではないので、確かに多くのハンターさんを入れると取り合いが起きるだろう。三階層のロングテイルエイプも厄介なモンスターだから、四階層にたどり着くのも大変だろう。


 でも、今回の件が片付けば五階層に転移門を設置しようと思っている。五階層が自由に出入りできるようになれば便利になるだろう。大公様に言われた獣人の移住の件もあるしね。



「み~」





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