278神猫 ミーちゃん、VIPです。

 カンテラに灯をともし、強行軍でクイントに戻る。街に着いた時には真っ暗だった。俺とジンさんはハンターギルドに直行し、他のみんなは蒼竜の咆哮のホームで休んでもらう。


 ハンターギルドの中はまだ忙しい時間帯なので混雑している。美猫親子はハンターのお姉さん達に可愛がられているね。そんな中でエバさんを見つけたので声を掛けた。



「あら、ネロ君。もう、戻って来たの?」


「ちょっと急用ができまして、セリオンギルド長に会えますか?」


「俺からも頼むぜ」


「お二人にそう言われてしまえば、断れないわね。ちょっと待ってて」



 ミーちゃんと美猫親子の所に行きご挨拶。パルちゃん、眠そうだったのにミーちゃんを見たら可愛いお目々をぱちりとさせて、ミーちゃんに飛びつく。ミーちゃんも嬉しそうにペロペロしてあげてる。それを見ているハンターのお姉さん達も頬を上気させて見ているね。


 エバさんがセリオンギルド長に会えると言って来たので、ミーちゃんを美猫親子の元に残してジンさんとギルド長室に向かう。



「どうした、もう迷宮探索は終わりか?」


「その迷宮探索で行き詰まりまして、一旦戻って来ました」


「ほう。どんな難問だ? 強敵か?」



 セリオンギルド長とエバさんに迷宮に入ってからの事を話して聞かせる。



「おいおい、四階層でオークだと……こいつは貴族共が黙っちゃいないぞ」


「この頃、オークの話はロタリンギアの事しか聞きませんからね」



 高級肉だからね……って、問題はそこじゃないんですよ! 話を途中で折られたけど、続きを聞かせてあげる。



「獣人だと……」


「迷宮に村なの……?」



 そこで、下層に降りる道の場所を猿獣人が支配していて行く事ができない事、狐獣人や他の獣人達と協力して猿獣人をその場所から追い出す事を話す。



「で、どうするつもりだ?」


「ハンターに依頼を出したいんですが、どうでしょう?」


「無理だな。集まらん」



 今、クイントで活動しているのは主に初級のハンターさん達らしく、中堅のハンターさん達はゴブリンキング戦に行っている。上級ハンターを連れて行かれるとギルドが困ると言われた。



「暗闇の牙なら話をしてやっても構わんぞ」


「斥候は役に立ちますねぇ。お願いします」


「いつ、向かう?」


「明日、明後日でやる事があるので、出発は三日後の早朝で」


「わかった。話はつけてやる。代わりに、その村をハンターの拠点にできるように話をつけて来い」


「おそらく問題無いですね」


「それから、オークの肉はどうした?」



 セリオンギルド長とエバさんが鋭い目付きで俺を見ている。食べたいの?



「忙しかったので解体はしてないですが……」


「じゃあ置いていけ。タダで解体してやる」



 食べたいのですね……しょうがないので、オーク五体と毒にやられたオークリーダーを置いて行く事にする。後で聞いた話だけど、解体したお肉を商業ギルドに卸すと、街のお肉屋さんや料理人が狂喜乱舞したそうだ。


 ミーちゃんをお姉さん達から奪取してホームに行くと、腹ペコ魔人共がお腹を空かせて恨めしそうに待っていたよ。そう言えばお昼抜きだったからね。



「一食分、損したにゃ。その分、今食べるにゃ!」


「にゃ!」



 君達はいつも好きなだけ食べてるような気がするけど、いつも以上に食べるって事かな?



「ご飯食べたら、お風呂に行こう!」


「お風呂屋さん大きくて良いよね~」


「入るだけじゃなくて、体洗いとマッサージも最高だぞ」


「おぉー! あれは最高にゃ!」


「にゃんこ先生、そんなに良いですか?」


「人に体洗われるのはちょっと……」


「試しにやってみるにゃ。にゃんとも言えにゃい心地よさにゃ。マッサージにゃんかあまりの気持ち良さに眠ってしまうにゃ!」


「「おぉー」」



 そして夕食、腹ペコ魔人恐るべし! 本当にいつも以上に食べてしまった。ペロもセラもお腹をパンパンに膨らませてコロコロ転がっている。ミーちゃんそんなコロコロ転がっているペロとセラに何が面白いのかじゃれついているね。



「ほら、共同浴場に行くよ!」


「しょうがないにゃ。腹ごなしに行くにゃ」


「にゃ」



 腹ごなしって……まだ何か食べる気ですか? 流石、腹ペコ魔人共……。




「ミーちゃん、よく来たね!」



 共同浴場に入って聞こえた第一声がそれかい? 俺達は客じゃないのだろうか? ミーちゃんは常連中の常連、VIP待遇だね。向こう側でもレティさんとカオリンが中に入ったようで、番台の上にセラが飛び乗っておばさんにスリスリしてる。セラさん、良くわかってらっしゃる。ここで誰が一番偉いのかを……。


 番台のおばさんはミーちゃんとセラを抱っこしてニンマリ顔。



「もう一匹のオチビちゃんはどうしたんだい?」



 ルーくんの事だろうね。



「長旅なので王都の家でお留守番です」


「そうかい……残念だねぇ」



 おばさん人数を数えて各四枚ずつ木札を渡し



「良いかい、ゆっくりと入って来るんだよ。中の者には、あたしが念入りにって言ってたとお言い」



 それで良いのか……職権乱用じゃないんだろうか? このおばさん相当に偉いんだろうね。もしかしてオーナーだったりして?



「うちのお風呂も良いけど……」


「おっきいお風呂は最高にゃ!」


「にゃんこ先生。通ですなぁ~」


「ふー、風呂は心のオアシスだな!」



 ジンさんは最初に三助さんに洗ってもらっている。初めてだって言ってたからね。最初は抵抗があるかもしれないけど、一度やってもらえば病みつきになるはず。


 女性陣も楽しんでるかなぁ?






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