255神猫 ミーちゃん、ネロの婚約を祝福します。
シュバルツさん程の人なら俺が男爵になった事は知っているはずだと思う。このまま黙ってる訳にもいかないので話してみる。さりげなくね。
「そう言えばですねぇ。今度、男爵位をもらいました」
「そうですか……やはり、ネロさんの事でしたか。友人などからは子猫を連れた若者が、新興の貴族に拝命されたと聞いてはおりましたが……」
「ブロッケン山周辺の領地も頂きました。フォルテかニクセにウイラー道具店の支店を出しませんか?」
「ハハハ……考えておきます。ですが、貴族となった以上気を付けなければいけませんよ。貴族は相手を蹴落とす事しか考えず、足の引っ張り合いばかりですから」
「そんな人ばかりなんですか? 貴族と言う人達にはまだほとんど会った事がないので」
「そのうち、嫌でも会うようになります。近時ではレーネ姫様のお誕生日祝賀会でしょうか。ネロさんも出席しなければならないでしょう」
「面倒ですね……」
「仕方ありません。それが貴族の仕事の一つですから」
「話し相手が居ないのもなんですから、シュバルツさんのお知り合いを紹介して頂けませんか? なにぶん貴族に知り合いがいないもので」
「ネロさんは派閥的にはどの派閥になるのでしょうか?」
「派閥?」
何それ? 大まかな派閥は国王、宰相派、北辺境伯派、西辺境伯派、東辺境伯派はもう無いらしいと教えられた。小さい派閥もいくつかあるらしいけど、間違ってもそれらの派閥には入ってはいけないとも釘を刺された。
「国王、宰相派ですね。北、西共に辺境伯には会った事すらないので」
「わかりました。何人かに声を掛けておきましょう。ですが、紹介されたからと言って信用してはいけませんよ。自分の目で見て信頼できる者を見つけなければならないのが貴族社会です」
「ご教授、感謝します」
うちに戻るとキッチンでみんながお茶を飲んでいたので、あの疑問を投げかけてみた。
「俺とユーリさんって結婚するって知ってた?」
「何を当たり前の事を言ってるんですか! 私達はユーリ様をちゃんと将来の奥方様として接しています! 旦那様とは言え、失礼な事言わないでください!」
ヤナさんがプンプンしながら言ってきた。他の面々も何を当然の事を言ってるんですか? って顔をしている。ミーちゃん達を連れてリビングのソファーに座って考える。
「当然なの?」
「み~」
「え!? そうなの?」
「み~」
「ミーちゃんもそう思うの?」
「み~」
「がう」
「きゅ~」
「……」
みんなそう思っているんだね……。心当たりはあるような無いような。でも、俺ってプロポーズをしたのかな? 記憶にないのだけど……。
「みぃ……」
そうかぁ、俺結婚するんだぁ。向こうの世界で彼女居ない歴十九年の俺が、異世界に来て彼女を飛ばして奥さんができちゃうなんてわからないもんだねぇ。それもユーリさんみたいな才女で美人でボンキュッボーンな女性と結婚できるなんて、それだけでこの世界に来た甲斐があったと言うものだよ。向こうのポンコツ神様に感謝すべきなのだろうか?
「ミーちゃんは俺とユーリさんが結婚しても良いと思ってる?」
「み~」
「そっかぁ、じゃあまだやる事が多いから取り敢えず婚約って事で良いのかな? 結婚はもっと落ち着いてからだよね」
「み~」
ミーちゃんは俺とユーリさんの結婚を祝福しているようだ。ミーちゃんが嫌って言ったらどうしようかと思っちゃったよ。
となると婚約指輪、必要だよねー。烈王さんからもらった宝石の原石から作ってもらおうか? シュバルツさんに頼んで見繕ってもらうのもありかな。
ん? ミーちゃんが何か咥えてるね。ミーちゃんから咥えている物をもらうと、指輪?
「み~」
幻影の指輪 AF 自分の姿を映し出した幻影を自由に出せる。時間は三十秒程。ミーちゃん、いつの間にこんなAF手に入れたの?
「み~」
前から持ってた? 指輪にはピンクの宝石が嵌っている。どこかで見た記憶が……。これって……まさか、烈王さんからもらった使えないAFシリーズ?
「み~」
マジで~! と言う事は俺が立てた仮説通りになったと言う事か。他にも変化した物ってある? ミーちゃんまたなんか出してきた。フローラ神の加護の腕輪 フローラ神の加護が得られる。おぉー、確かに変化している。ちょっと微妙だけど……ポンコツ神様だからね。他のAFは変わってないようだ。
俺の仮説通り、AFをミーちゃんに預けておくと性能が良くなるみたい。俺が立てた仮説はこうだ。AFとは神様の力を集め封じて作られた物。だけど、年月が経ちその力が弱まってきているのではないのだろうか。そこで神猫であるミーちゃんの近くにある程度置いておくと、神気みたいな物が溜まって元のAFに戻るのではないかと言う事。
あながち間違ってないような気がする。他のAFもあるから要検証だね。
それはさておき、幻影の指輪、AFだしピンクの宝石が綺麗でデザインも可愛らしい。ミーちゃんおすすめの指輪だから、ユーリさんに渡す婚約指輪には申し分ないはず。ユーリさん、喜んでくれるかな?
「み~」
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