240神猫 ミーちゃん、ネロ君は人誑しだと思う。

 翌日、一頭の狼にグレンハルトさん達の事を頼むよとお願いして、グレンハルトさん達を門まで見送ってから早朝アポなしで王妃様に会いに行く。王様だと会えないと思うから。



「ネロ君、こんな早くからどうしたの?」



 ニーアさんの案内の元、いつものテラスに行くといつも通り王妃様とレーネ様が居る。レーネ様は他メンバーが居なくてがっかりのご様子。レーネ様のがっかり感などつゆ知らずルカ、レアとノアはミーちゃんにダイブ!



「フォルテに行って来たのですが、問題が多すぎて報告と指示を仰ぎに来ました」


「あら、そんなに酷かったのかしら?」



 取り敢えず、最初から説明していくと王妃様の表情が険しくなっていく。レーネ様はそれを感じたのか、ミーちゃんの所に行ってしまった。ニーアさんは眼鏡を外して目元をつまんで首を振っている。王妃様の機嫌が悪くなる事がわかったからだろうか?



「それは証明できるの?」



 レティさんの読み終えた資料を王妃様に差し出す。王妃様はさっと目を通しただけだけど、事の重大さは読み取ったようだ。



「その罪人達はどうしてるのかしら?」


「全員捕まえて、今日王都に向け護送されます。ついでに闇ギルドの手の者二人もです」


「護送は誰が?」


「警備隊では厳しいと思い、フォルテのハンターギルドのギルド長に依頼しました。口封じされないように、手練れをお願いしてあります」


「流石、ネロ君。抜かりはないわね。わかりました。罪人と元代官の方はこちらで処理します。ネロ君には悪いけど、早急にフォルテを掌握して頂戴」


「グレンハルトさんに当面の間、フォルテの代官をお願いしました。あの方なら闇ギルドに遅れを取る事はないはずです。牙王さんの手の者も一頭つけて居るので余程の手練れでもない限り近くに近寄る事すらできないでしょう」


「どうして五闘招雷がそこで出て来るのかしら?」



 かくかくしかじか、王妃様にご説明する。



「ネロ君は人誑しの才もあったのね……」


「み~」



 ミーちゃんまで……。それより、押収した物はどうすれば良いかの確認もする。



「ネロ君の好きにして良いわ。ネロ君の領地の事だから、王族であってもとやかく口を出す事はできないわ」



 押収した物の他、家や屋敷、土地全て俺の物らしい。さて、どうしようか……。取り敢えず、役所で見つけたAF 護国の剣は献上しておこう。大いなる災いを防ぐなら俺より王様が持ってる方が良いように思えるからね。


 剣を王妃様に渡すと、ニーアさんがワナワナ震えている。どうしたんでしょう?



「ネロ様……その剣の価値をご存知で?」


「み~?」


「AFでしょう?」


「ディメール王国の宝剣と呼ばれた剣です……」



 ディメール王国、この国を建国した勇者の奥さんの国。当時この大陸唯一の国で魔王からこの大陸を解放していった国である。今は分裂して各王国になってしまっている。そんな国の宝剣がなんであんな所にあったんだろう。堅守の箱も出して見せてみる。



「この箱を開けるには決められた言葉が必要のはずですが……ネロ様はどうやって開けられたのでしょうか?」



 キーワード設定されていたらしい凄い機能だね。それよりも、恐るべきは解錠のネックレス。このネックレスの前では開かない鍵は無いのではないのでしょうか? 解錠のネックレスの事は決して言えないので……開いてましたと誤魔化したよ。



「それにしても、とんでもない物を献上してくれたわね」


「ご迷惑ならもう一度封印しますけど?」


「しないで!」


「それは宝剣への冒涜です!」



 レーネ様、大声にビクッとしてルカ達をギュッと抱きしめてしまい、ルカ達から非難の鳴き声があがっている。欲しいなら素直に欲しいって言えば良いのにね。



「み~」



 王宮を後にしてレティさんを連れてフォルテに向かう。



「レティさんはこれからどうします?」


「寝る」



 寝るんかい!



「情報は夜に集める。闇ギルドも日中はほとんど寝てるぞ。少年」


「レティさんにお任せします。二日後に一度会いに来ますので」


「逢引きか?」


「ちゃんと情報集めて置いてくださいよ!」


「なんだ、少年はつれないなぁ」



 そんなレティさんはほっといてギルドに向かう。ちなみに、レティさんには高級宿に泊まる事を要求された……。うちのベッドに慣れたので、安宿のベッドでは眠れないとのたまいやがった。了承したけどね。



「準備はできてるさね」



 ハンターギルドの裏に幌馬車が用意されていた。てっきり護送用の馬車でも用意するのかと思っていた。



「そんなもんに乗せて行ったら、狙ってくれと言うようなもんさね」



 幌馬車の内側には厚めの板が貼られていて、弓矢から罪人を守れるようにしてあるらしい。今回、護送の警護をしてくれるのはギルド長おすすめのパーティー五組。途中セッティモでもう一パーティーを雇って王都に向かうそうだ。



「お前達、準備はできてるかい! まだなら、四十数える間に準備しな!」



 ハンターさん達が慌ただしく動き出して、北門に向かう。罪人は既に着替えさせられ北門に移動されていた。全員、手足に枷が着けられ闇ギルドの二人には猿轡と目隠しもされている。用心に越した事はない。どうせ、この事は闇ギルド関係に知られているだろう。


 何事もなく無事に王都に着くよう祈っておこう。



「み~」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る