222神猫 ミーちゃん、お客さんにアーンさせます。

 翌日、疲れた体に鞭打って味噌と醤油を作ってる村に行く。



「大豆ですか? もちろん、たくさん育ててますが……収穫にはまだ早いと思いますが?」



 畑に連れて行ってもらうと畑一面青々と大豆の成長過程である枝豆がなっている。取り敢えず、一株分収穫して村長の台所を借りて茹でてみる。茹であがった枝豆に塩を振り味見をすると……枝豆です。でも、ややライト。味が無くはないけど、軽い。



「これは、なかなか、病みつきになる食べ物ですな」



 村長さん最初食べ方がわからず、戸惑っていたけど食べ方を教えたらパクパク食べてる。たまに、お口に入らず顔に当たったり、変な所に飛んでいったりしてるけどね。


 枝豆は枝豆用に育てられた品種なんだとその時始めて知ったよ。でも、村長の食べっぷりを見てると十分にいける様な気がする。


 村長に頼んで大量に譲ってもらう事にした。



「好きなだけ持って行ってください。大豆はこの辺りではどの村でも作っていますからね。まあ、余り売れる作物では無いので、使うのもこの村か家畜のエサにするくらいですから」



 お言葉に甘えて刈り取っていく。こ、腰が痛い。


 うちに戻ってから、ララさん達と手分けして茎から枝豆を取り茹でていく。ララさん達にも味見してもらったけど概ね好評のようだ。ただ、食べ方を教えないとどう食べて良いか悩んでいたのは村長と同じだったね。


 エールガーデンの時間が迫って来たのでみんなを連れてヴィルヘルムに移動する。二日目のエールガーデン開始の挨拶は商業ギルドのギルド長がおこなうようだ。


 今日も大勢のお客さんが集まっている。今日は最初から裏方に回り接客はお姉さん達に任せてる。お陰で昨日程の混雑は無い。代わりにアルさんの所が女性客で溢れてる……。



「よっ!」


「良いんですか? 今日も来て」


「ここは近いしな、短い時間だ問題無い……と、思う」



 それで良いのか……次元竜!



「それより、眷属殿が売ってる、あれはなんだ?」



 そう、今神猫商会のブースがおかしな事になっている。何がおかしな事になっているかと言うと、枝豆を買ったお客さんがミーちゃんの前に枝豆を置くのだ。もちろん、ミーちゃんが食べる訳ではなく、お客さんは枝豆を置いた前で口をアーンと開けている滑稽な姿がみられる。


 何をしているのか? ミーちゃんが置かれた枝豆をミーちゃんの可愛い肉球で押すとポーンと飛んで行きお客さんの開けた口に入っていく、すべてが入る訳ではないけどそれはご愛敬。お客さん達は入らなくても喜んでいる。



「枝豆です。美味しいですよ」



 烈王さんにエールと枝豆を出してあげたけど、烈王さん枝豆を苦戦しながら食べている。



「旨いが、面倒だな」


「食べ方にコツがあるんです」



 さやを持って下からつまんで押し出すようにして、口に入れて見せる。烈王さんも何度か失敗したけどすぐにコツを掴みパクパク食べ始め、エールもゴクゴク飲んでる。



「プハッー。こりゃあ、良いな。豆なんて滅多に食わないが、これは酒に合う。良く見つけたなぁ。ネロ」


「珍しい豆じゃないですよね。そこら辺にいくらでもある大豆ですよ」


「大豆! 家畜のエサかよ!」


「大豆は秋になって収穫する物ってこちらの人は思ってるようですが、俺の居た世界ではこの食べ方は普通です」


「所変わればってやつかぁ」



 烈王さん感心しながら新しいジョッキ片手に屋台巡りに行ってしまった。フリーダムドラゴン。


 そんな折、王宮の兵士が居る警護詰所が慌ただしくなっている。どうやら、大きな害虫駆除が始まるようだね。王宮の兵士の長とハンターさんの代表、そしてフードを深々とかぶっているレティさんが話をしているのが見えた。


 商業ギルドのギルド長が来て語ってくれた内容は、酔っぱらった人からスリをおこなってる集団と、酔っぱらったスケベ野郎を対象とした美人局つつもたせがおこなわれているらしい。その元締めの場所をレティさんが見つけて来たみたいで、これからガサ入れが始まる事になる。レティさんマジ優秀過ぎ……。


 ほんの少しエールの販売に余裕ができたのでアルさんに俺の場所をお願いし、ちょっとだけお祭りを見て回る。串焼き、スープ、サラダ、クレープの様なものまである。だけど、わかってはいたけど甘味を扱ってるお店はほとんど無い。あるのは塩味の煎餅みたいな物や、パンに蜂蜜をかけた素朴としか言えないような物ばかりだ。


 そんな中、神猫商会では今日からはお客さんの要望にお応えして団子を売っている。流石に団子を食べながらお酒を飲む人は少ないだろうけど、女性やお子ちゃまには大好評のよで甘味では一人勝ち状態のようだね。


 安く砂糖が出回るような良い案はないかなぁ……俺の頭では思いつかない。実は彩音さんから貰った羊皮紙には砂糖の原料になる甜菜の事が書かれていた。ただこの国には無く、別の国にあるけど砂糖としては使われていないらしい。


 何とか手に入らないだろうかと思って続きを読んでみると、なんと!? 迷宮で稀にいろいろな種が手に入る事があるらしく、過去にその中に甜菜の種もあったらしい。そうやって迷宮から見つかったいろいろな種が実を結びこの世界に広がっていく仕組みらしいです。迷宮て一体なんなんだろうね?



 ミーちゃん、俺にも枝豆アーンして頂戴!



「み~」





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