　商業ギルドに寄って最終打ち合わせをしてから、うちに戻りレティさん、ペロ、セラ、ルーくん、ラルくん、スミレ姐さん、バロ、狼四頭を連れてヴィルヘルムに飛ぶ。

　アレックスさん達も店を閉めて、俺達が来るのを待っていたようだね。

「きゅ～!」

「シュトラール、元気にしてましたか？」

　ラルくんがクリスさんに抱きついて顔ペロしてる姿は犬にしか見えない……敢えて言わないよ。

「それにしても、大勢で来たものね」

「手伝いにはなりそうにないようだが？」

　知ってる者、知らない者もいるので紹介する。レティさんはずっと緊張しっぱなしのようだ。おそらく、今どこにいるのかさえわからないと思う。そんな状態でこの四人はドラゴンですと言ったけど理解できているか微妙。ドラゴン四人にはレティさんを氷族と紅霊族のハーフと紹介したけど、四人とも何とも思って無いようだ。ドラゴンにとって魔族だろうが人族だろうが関係ないんだろうね。

　それからクリスさんペロが嫌がってるので離れてください。いや、ルーくんもですからねってセラ、毛を逆立たせて威嚇しない!　仲良くやってよね……。スミレ姐さんとバロは我関せずって感じだね。バロもドラゴンの前ではビビるかなって思ったけどなんともなくて良かったよ。

　みんなと一緒に中央広場に行きペロ、セラ、ルーくん、ラルくん、スミレ姐さん、狼四頭、バロは託児所ブースでお仕事。お子ちゃま達の相手をしてもらう。モフモフだし、スミレ姐さんやバロは優しいので問題無いでしょう。ペロもああ見えて面倒見が良いからね。

　ミーちゃんとアレックスさんには神猫商会のブースで、お手伝いに来てくれた商業ギルドの受付のお姉さんとつまみを売ってもらう。アレックスさんだけでは大変なので、手伝いを探していたところ商業ギルドのお姉さん達が一斉に挙手した時にはちょっとびっくりした。最初は話し合いで決めてもらおうと思っていたけど、喧嘩になりそうだったので厳選な抽選のうえ決めてもらった。イケメン……悔しくなんかないんだからな!

　残りの俺とクラウディアさん、クリスさん、アルさんはエールを冷やす係。俺はノンアルコールも担当する。会計は商業ギルドの方がやってくれるので、お金を払った人が四ヶ所に分かれた俺達の場所で受け取っていくスタイルにした。流れ作業の方がスムーズにいくと思っていたんだ、この時までは……。

　時間になり、花火が上がり商業ギルドの職員さんとハンターギルドで依頼を受けたハンターさん達の誘導でお客さんが会場に入ってくる。

　椅子を置いたテーブル席も作ったけど、ほとんどはテーブルだけの立ち飲み席にしてある。椅子を置いた席は有料にして、数席だけシルバーシートと称してご老人達用も作っている。

　席はほとんど埋ったけど席につけずにいる人も多く居る。これはしょうがないけど始めてしまおう。商業ギルドのギルド長が司会を勤め、大公様の祝辞として代理の方が初めに挨拶をしてくれた。これによってこのお祭りが、国が承認して行われている事を知らしめる効果がある。これは国にも商業ギルドにもメリットがある事だ。商業ギルドはこのようなお祭りを開いた事で株が上がり、国は平和である事、豊かである事、何より寛容である事を示す事ができる。

　大公様の代理の方が祝辞を読み終え、祭りの開始を宣言すると波を打ったような歓声があがった。

　さあ、ビアガーデンならぬエールガーデンの始まりだよ!

　始まったのは良いけど、予想外の出来事が……。

　クラウディアさんとクリスさんの所には長蛇の列が、アルさんの所には奥様達らしき列が、俺の所にはお子ちゃま達が……あれ？

　お子ちゃま達の注文はすぐに捌けたので、クラウディアさんとクリスさんの手伝いをするとお客さんに嫌な顔をされる……。

　仕方ないので俺は後ろで冷やしたエールを作るだけで、渡すのはクラウディアさんとクリスさんに任せる事にした。だけど、エールの他にジュースも担当しているから俺の負担が半端ないんですけど……。クラウディアさんもクリスさんも冷やして渡してはいるけど、数が数だけに列は伸びる一方。このスケベ野郎共が!

　捌ききれ無いので商業ギルドの職員さんを呼び、綺麗どころの受付のお姉さん二人を援軍に呼んでもらう。俺は完全に裏方に回って接客は応援に来たお姉さん二人に任せた。何とか列が四つになり少しずつ列が短くなっていく。

　アルさんはマダム達にキャーキャー言われ、ニヒルな笑顔を見せてさらにキャーキャー騒がれている。これだからイケメンって奴は……アルさんはダンディーだけどね。

　神猫商会のブースも大賑わいのようです。イケメンアレックスさんに美人な受付のお姉さんに加え愛くるしい我が神猫商会の代表が鎮座していれば、客が寄って来ない訳が無い。特に今回は魚のフライになんちゃってタルタルソースをつけている。一度食べれば病みつきってもんだよ。なんちゃってマヨネーズは暇してたジンさんに混ぜ混ぜしてもらった。やり終えた後は死んでたそうです、宴会時には復活してたようだけど……。

　さあ、エールガーデンは始まったばかり、ミーちゃんも頑張ってね。

「み～」