218神猫 ミーちゃん、お祭りに参加する準備は万全です。

 ギルドの職員さん達と一つ一つ解決策を模索していく。商業ギルドで試算していた額より大幅に増える事になりそうだ。その分、収入も増えるから問題はないんだけど。


 取り敢えず、ブースの貸し出し料を決めて、良い場所はそれなりの貸し出し料にする。食べ物以外のお店は一番外の外周にブースを設置する事にした。それに合わせて警備の人数を決めてハンターギルドに依頼を出す事も決める。



「では、飲み物以外は各店舗で値段を決めて良いのですね?」


「構いません。ですが、過剰な値段設定には商業ギルド側で注意してください。それと、堅気ではない人も参加希望してくると思うのでその辺も注意です」


「闇ギルドが関わってくると?」


「闇ギルドに関わらず闇金融、マフィアなどが目を付けるでしょうね」


「どう、対処しますか?」


「許可書の発行と見回りぐらいでしょうね。怪しい者は随時摘発するしかないでしょう。王宮からも兵士が派遣されますから、そちらに突き出すしかないと思います」



 金になりそうな所にはそう言う人達は必ず群がる。どんな世界でも一緒だろう。



「それから、この託児スペースと言うのは必要なのでしょうか?」


「多くの人が集まれば、迷子が出るのは必然です。小さい子を預ける場所を作っておけば親御さん達も安心して楽しめるので、結果的に多くのお金を落とします。託児所もタダではないですし」


「「「なるほどぉー」」」



 ミーちゃんがお船を漕ぎだしてきたので、猫に小判クッションを出してあげる。



「みぃ……」



 クッションにの上に丸まってすぐ、すぴぃーと可愛らしい寝息をたて始めたよ。


 それからも打ち合わせを続けて、気付けば零の鐘が鳴っていた……。明日来る事を約束して今日は帰る事にした。今日考えた事はベルーナでも考えられる事だから明日、さっき作ってもらった議事録をベルーナの商業ギルドに持って行こう。


 うちに戻り、遅い夕食を食べてからミーちゃんとお風呂に入る。



「だからー、入る時は札をちゃんと出して置いてください!」


「……」



 レティさんが入ってました……俺も脱衣所をちゃんと確認していればわかった事なんだけどね。


 ミーちゃんと俺自身の体を洗って湯船につかる。



「私はどうすれば良いのだろう……」



 ポツリとレティさんは言ってくる。



「どうすればも何も好きにすれば良いんですよ」


「好きにとは……何を好きにすれば良い?」


「全て」


「全てか……少年は何も命令してくれないんだな……」


「できればしたくないですね。ですが、する時はそれなりの理由がある時です。でも、した時でもレティさんの考えは尊重しますよ」



 レティさんはミーちゃんをその大きな胸元に抱きよせ、頬を摺り寄せる。



「私もモフモフに生まれてくれば良かった……」



 モフモフはモフモフで大変だと思いますけどね。



「大奥様が亡くなられ、自分が本当に操り人形なのだと痛感している。何も考えられない、何をして良いかも思いつかない。私は本当に存在して生きているのかとさえ思えてくる。自由とはなんなんだろう……」


「焦る必要はありませんよ。ゆっくり考えていきましょう。時間はいくらでもあるんだから」



 レティさんがこくりと頷いた。



「四日後……いや、三日後かヴィルヘルムで夜にお祭りがあります。そこに同行してください」


「ヴィルヘルム? 今から発っても間に合わないぞ。少年?」


「そこは問題ありません。レティさんにお願いしたいのは、そのお祭りに紛れ込んでいる闇ギルドなどの害虫の駆除です」


「一人では難しいぞ?」


「紛れ込んでいる害虫を見つけてくれるだけで構いません。実際の駆除は別の人がしますので」


「それは命令か?」


「うーん。早速ですが神猫商会としての業務命令になりますかねぇ。嫌なら断っても構いませんよ?」


「いや、構わない。了解した」



 次の日からはとても忙しい日だったよ……ヴィルヘルムとベルーナの商業ギルドを掛け持ちしてヒルデンブルグとルミエールの王宮にも何度か行って話を詰めてきた。夜は夜でから揚げなどのつまみ作りと大忙し、作っても作ってもペロ達に奪取される始末。困ったものだよ。ミーちゃんなんか言ってちょうだい。



「み~」



 アレックスさん達にも当日の夜に神猫商会として出店する事を伝えているので、その日から三日間は日中はお休みにしてくださいと言ったけど、自分達は問題無いので店を開けると言っていた。ちゃんと休んでいるのか心配になってくる。今度ちゃんと帳簿を確認しよう。


 町中に今日から三日間の催し物の事は事前に知らせている。ヴィルヘルム支店の改装に来ている大工さん達も今日は早めに仕事を切り上げお祭りに行くと言っていた。まだ、始まっていないけど町中お祭りムードに浮かれているのは確かなようだ。


 時間にはまだ早いけど中央広場は既に準備が始まっている様子。いつもなら屋台などがまだ並んでいる時間帯だけど、屋台の主人達も夜の準備に入っているんだろう。


 俺も一度商業ギルドに顔を出してから準備に入ろう。


 金儲けは二の次、今日は楽しんでやりたい。街の人達も楽しんでくれると良いね。



「み~」






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