169神猫 ミーちゃん、義賊ギルドの使者に呆れる。

 ジンさんとゼストギルド長の漫才を黙らせ話を聞くことにする。



「どこから漏れとると言われてものう。闇ギルドではなんとも言えんのう」


「どこに居てもおかしくない……か」


「俺はその界隈では有名人と言ってました」


「闇金融潰し、ギルドに喧嘩を売った事かのう。どこから漏れたのやら」


「知らん。だが、義賊にとっちゃあ、手を叩いて喜んだ事だろうぜ」


「引き抜きかのう?」


「さあな、義賊の考えてる事なんかわかんねぇよ。行くしかねぇのか……」



 闇ギルド関連と言ったらもう一つ思い当たる節があるね。ルーくん誘拐事件でも闇ギルドと関わりをもったね。ジンさん、ゼストギルド長の前では言うつもりはないらしいけど。


 結局、行くと言う事に決まった。ただし条件付きで、数名の護衛を認めるならと言う事になった。人選はジンさんに任せた。


 陽が暮れて十の鐘が鳴った時、呼び鈴が鳴った。みんなに緊張がはしったのがわかる。ミーちゃん何が起こったのか戸惑っているけど、この場の雰囲気を感じ取り俺にしっかりとしがみ付いている。



「ネロ様、お客様がおいでです」


「通してください」



 今回は黒ずくめではなく、ローブをすっぽり被った状態で入って来た。



「ふぅ。こんな早い時間の出勤、早出残業でも貰わないと割に合わない」



 知るか、そんな事。あんたの上司に直接言えよ。


 フードを脱いで顔を現す、まるで雪のようだ。なんとなく雪うさぎを思い出ださせる。目が紅いせいだろうか。



「なんだ? 余りにも美人で惚れたか? 残念だがガキには興味無いぞ」


「ガキって……これでも十八です」


「み~」


「……」



 寒い、寒すぎる。北国の人のせいか、寒さが厳しいぃ……。



「冗談はさておき」


「だから、十八だって!」


「私が魅力的なのはわかるが、お姉さんをたばかるものではないぞ。少年」


「もう良いです……」


「みぃ……」



 ララさんとヤナさん、何故あなた達も驚いた顔してるんですか? 納得がいきませんね。すみませんが、 熱いお茶入れてください。



「それで、こんな美人をわざわざ呼びつけたんだ。良い返事がもらえるのだろうな」


「好きで呼んだ訳じゃないんですけどね」


「なんだ少年、照れ隠しか?」


「もう結構です。本題にいきましょう」


「なんだ、つまらん」


「……」


「みぃ……」



 ミーちゃんも、どうやら気付いたようだね。呆れ顔だよ。この人最初から遊んでいたんだよ。何食わぬ顔でお茶飲んでるけど。



「ジン、ジクムントさんとも話した結果、お受けする事にしました。ただし条件付きです。条件は、我々以外で数名の参加を認めて頂きたい」


「護衛かな?」


「そうとってもらって構いません」


「君達の命を取るつもりは無いんだがな」


「保険ですよ」


「まあ、仕方あるまい。承知した。三日後の午後の二の鐘にハンターギルドに迎えをやる。構わないかな?」


「えぇ、構いません」


「我らが女帝も喜ぶ事だろう。では、後日。……そうそう、私は甘いお茶の方が好みだ」



 さっさと帰れ!



「み~!」



 つ、疲れる。これ以上はメンタルがもたない。休ませて……と思ったけどそうもいかず。



「ネロ、護衛は誰が付くんだ?」


「ジンさんに一任してます」


「ネロと姫だけで行くにゃか?」


「そうだね。それの方が何かあった時逃げやすいからね」



 いざという時は、転移装置を使って逃げる。本当にどうしようもない時だけどね。



「ネロ様、お茶会に呼ばれるのであればそれなりの正装で行くのが礼儀かと、お持ちでしょうか?」


「……ないね」


「仕方ありません。本来であれば作らせる所ですが明日、既製品を買いに行きましょう。その時にサイズを測り、数着作らせるのがよろしいかと」


「よろしくお願いします……」



 翌日、行きましたよ。ルーカスさんとカティアさんと一緒に。取り敢えず、既製品の礼服を手直してもらい、その間に新しく作る服のサイズや布を決めました。決めたのはカティアさんだけどね。まだ背が伸びる余地があるので、二着しか作りませんでした。そう、背は伸びるんだ。伸びるよね?


 ミーちゃんも薄ピンクのレースのスカーフを買ってもらい、店員さんからお似合いですよって言われてご機嫌です。お茶会にはそのスカーフに黒真珠を合わせお出掛けですよ。



「み~」



 次の日、ペロ達はお休みの日なので朝になっても起きない。隣のベットでぐっすりのようだ。


 俺とミーちゃん、ルーくん、ラルくんはいつものように起きて朝食を食べる。ユーリさんとカイも朝食はいつも一緒に食べます。


 朝食を食べ終わると、ルーくんとラルくんは外に遊びに行く。ミーちゃんとカイはララさんとヤナさんからブラッシングタイム。ユーリさんは俺とお茶を飲みながら雑談をしたり、疲れている時は部屋で二度寝になる。


 そんな時間帯に呼び鈴がなる。誰だろう?



「ネロ様、お客様でございます。ヤンと名乗っている少年とその母親に妹さんでございます」



 こっちから訪ねる予定だったのに、向こうからの来ちゃったの? 無理しなくて良いのに。



「いつも、息子がお世話になっております。私はイルゼと言います、この子は娘のカヤです」


「カヤです。兄がいつもお世話になってます」



 イルゼさんは、年の頃は三十くらいに見える。美人だけど病み上がりのせいもあって疲れた様子が見える。カヤちゃんは十歳くらいかな、なかなか利発そうな女の子だ。こうして、わざわざうちに来るくらいだからまじめな方なんだろう。神猫商会に雇うのにもってこいの人材のようですよ、代表。



「み~」




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