100神猫 ミーちゃん、みんなの健闘を称える。

 訓練場に来ました。



「なにするにゃ?」


「模擬戦だよ」


「あっちの人達とかにゃ?」


「そう、怪我させない程度にボコボコにしてやって、セラもね。ルーくんは魅了眼を使って相手の無力化をお願い」


「面白そうにゃ!」


「にゃ!」


「がう!」



 ミーちゃんは応援お願いね。



「み~」



 ミュラーさん達蒼竜の咆哮のみなさんは、ニヤニヤしながらこちらを見ている。気味が悪いです。



「アハハハ! まさかそんなおチビちゃん達が相手じゃないだろうね!」


「ルールは真剣使用不可の模擬戦。四対五になるが良いのかね?」


「構いません。これで勝てば文句を言う事もないでしょうから」


「ハンッ、舐めた口を聞くじゃないか。謝れば許してやろうと思ったけどやめだよ!」



 話を聞きつけた暇なハンターさん達やギルド職員がギャラリーになっている。ワイワイ、ガヤガヤ、あーでもないこーでもないと勝敗の予想をしてるようだ。


 ペロは模擬戦用の小剣を楽しそうに振り回し、セラはまだ猫化したまま、ルーくんに至っては欠伸をしている。うちのメンバー、大物揃いです。


 俺は武器を全部外して、大きな水袋を担いでいます。水はたっぷり入っていますよ。後は予備で痺れ薬の粉末を紙で包んだ物をいくつか隠し持ってます。一応の為にね。



「それでは始めるぞ。始め!」



 ペロと元の姿に戻ったセラが豹獣人さんと犬獣人に向かって行った。


 猫獣人のお姉さんが武器を落としてニヘラ~って笑っている。ルーくんの魅了眼だ。ルーくんの役目は終わり。危ないから下がっててね。



「がう」


「アニヤ! ちっ、怪しい術を使いやがって。ティム行くよ」



 その猫獣人のティムさんは歯をガチガチ言わせブルブル震えている。もう戦うどころではありませんよ~。


 開始から水スキルで過冷却水を作り、状態変化でボール状にしてぶつけまくってます。相当寒いと思う。俺なら勘弁して欲しいと思うくらい。



 ペロもスピードで犬獣人さんを凌駕している。あっ、剣を弾き飛ばして喉元に剣を突きつけた。剣の腕前も上のようです、ペロ凄い!


 セラは圧倒的。元の姿に戻った事で動揺した豹獣人さんを、力で押しまくっている。前足で剣を払ったり、剣を持った手を尻尾で叩いたり完全に遊んでるようだ。豹獣人がセラの尻尾で脚を取られ倒れたところで、喉元に牙を突き付けた。本気を出すまでもなかったってとこだね。


 残すは虎獣人のお姉さんのみ



「まだ、やります?」


「ふざけるな!」



 剣を構え素晴らしいダッシュで突っ込んで来る。こっちも誘いなんだけどね。


 俺が構えてない事に反応できなかったと思ったのか、目の前まで来てニヤリと虎獣人のお姉さんは笑った。そう、笑った後吹っ飛んで行ったね。至近距離で空気大砲を喰らったから気絶したかも。



「ぐっ、い、今のは……」



 おぉー、タフだ、タフだよ。男のハンターでさえ気絶したのに、立ち上がってきたよこのお姉さん。


 だけど、面倒だから痺れ薬の包みを出して、ふぅーっと息を吹きかけ大気スキルでお姉さんの口や鼻にまとわりつかせる。


 剣を落として倒れ込んだ。


 ブルブル震えてる猫獣人のティムさんに



「まだ、続けますか?」



 って、聞いたらブンブン首を横に振っている。



「ギルド長!」



 ギルド長は何が起こったんだって顔をしていたけど、俺の声で我に返ったようだ。



「それまで」


「余裕だにゃ」


「にゃ」


「がう」



 訓練場は静まり返っている。静まり返ってたと思ったら、波打つような歓声が湧きあがった。


 そんな俺達にミーちゃんが走って来て、みんなの健闘を称えてペロペロしてくれてます。ルーくんは猫獣人のアニヤさんに捕まってチュッチュッされてる。あれって何時解けるんだろうね。



「み~」


「がぅ……」



 ミーちゃんから桶を出してもらって水袋から水を注ぎお湯にして、震えている猫獣人のティムさんにかけてあげる。



「た、助かる、よ」



 何度かかけてあげると、やっと震えが止まったようだよ。



「ラウラとアニヤはどうなったんだ?」



 豹獣人さんと犬獣人さんが起き上がて、虎獣人のお姉さんの所に行く。


 虎獣人のお姉さんは、体は動けないけど目でギロリと俺を睨んでくる。



「ただのマヒ状態ですよ、そっちのお姉さんは魅了状態です。しばらくすれば回復しますよ。もちろん、万能薬でも治りますけどね」


「毒を使ったのか!」


「人聞きの悪い言い方やめてください。痺れ薬で毒じゃありません。痺れる以外全くの無害ですよ」


「卑怯な手口を使ってくれたな」


「あるぇ~、まさかの敗者の言い訳ですかぁ?」


「ぐっ……」


「油断していたんでしょうけど、これが本当の戦闘ならあなた方は全滅ですよ」


「「「……」」」


「ネロ君、その辺にしておけ。暗闇の牙には良い教訓になったであろう。油断と言うものがどれほど恐ろしいものかな」



 まあ、ギルド長がそう仰るなら仕方ない。コップにミネラルウォーターを入れて異常状態の二人に飲ませる。



「はれっ?」


「う、動ける」


「おい、茶番は終わりだ! 仕事に戻れ!」



 ギルド長の声が掛かり、ギャラリーが強制解散させられた。ミーちゃんを抱っこして会議室に戻る途中、ミュラーさんが話しかけてきた。



「やり過ぎなんじゃないかな? ネロ君」


「このくらいで丁度良いと思います。調査に出てから勝手されても困るので」


「それだけ重要な調査と言う事かな?」


「そう言う事です」



 会議室に戻ると、ギルド長からきつい一言が発しられた。



「今の暗闇の牙では、何度戦ってもネロ君達に勝てんぞ。わかっているな!」


「「「……」」」


「それで、この依頼受けるか?」


「う、受けさせて頂きます……」


「文句は言わせんぞ」


「わかっています」


「ネロ君、だそうだ。儂に免じて、先程の事は水に流してはくれんか?」



 なんか拍子抜けって感じです。ギルド長が上手くまとめてしまった。まあ、面倒がなくて良いんだけどね。



「蒼竜の咆哮のみなさんは受けて頂けますか?」


「我々は最初から受けるつもりだった。問題ない」



 と言う事なので、実質的な説明に入りますか。ミーちゃんを抱っこしたままなんだけど良いよね。



「み~」






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