93神猫 ミーちゃん、ペロの格好を誉める。

 宿に戻り夕食にする。女将さん自ら給仕についてくれた。新顔のペロ、セラ、ルーくんの世話を焼きたいようだ。


 ドガさんの料理は確実に進化しており、クイントに行く前に比べて格段に味が良くなっている。繁盛してるのは当然だね。


 部屋の方もほぼ毎日満室状態で新しい給仕の女性、息子さんの彼女を雇ったそうで宿の増築も考えてるそうだ。



「ネロには感謝してもしきれないよ。ミーちゃんもね」


「み~」


「好きなだけ、泊まっておいき。もちろん、お代はタダだよ」


「嬉しい話ですが、明後日の早朝には発たないと駄目なんですよ」


「そんなに早くかい? 次、来るのは何時頃なんだい?」


「ゴブリンとの戦いが終わったらでしょうか……」


「そんな大きな戦いになるのかい?」


「国やハンターギルドはそう見てますね」


「まあ、あたし達にゃ何もできないけどさぁ。寂しくなるねぇ」


「みぃ……」



 ミーちゃんは悲しまないでって、女将さんの手にスリスリしている。



「ネロ。あんたは戦いに参加しちゃ駄目だよ。こんな可愛い子達が居るんだからね」



 みんな俺より高性能なんですけどね。



「せいぜい、後方支援ぐらいにしか役に立ちませんよ」


「それで良いんだよ。無駄死にするくらいなら後ろ指さされてもお逃げ! 死んだら何にもならないんだからね!」



 女将さんはミーちゃんとじゃれてるルーくんを撫でながら、そう言ってくれた。


 そうそう、借りてた桶を返そうとしたら、笑いながらあげるよと言われた。すみません……。




「ほう。坊ちゃんか? もう来ぬと思うて、あの鎧売ろうと思っとったところだのう」



 おじいさんの目は本気だ……あぶない、あぶない。


 修繕に出していた飛龍の皮鎧を取りに来ている。今回、クアルトに来た目的の一つでもある。


 おじいさんに着け方を教わりながら装備する。武器防具は持ってるだけでは駄目、装備しないと意味がないってどこかで聞いた記憶がある。どこかの偉人が言ってたんだっけ?



「小手や脛当ては、ついとらんがどうするのう?」


「なにか良い品でもあるのですか?」


「よくぞ聞いてくれたのう。実はのう、ジュエルリザードの皮を手に入れての端材で小手と脛当てを作っておいたのう」


「ジュエルリザードの皮って高いんですよね」


「高いが、一式分作った余りで作ったものだからのう。小手と脛当てしかない!」



 要するに、おじいさんは最初から俺に売ろうとしていた訳だね。この商売上手が!



「幾らですか?」


「残金と合わせて四十五万レトでどうだのう? 普通この値段では買えんのう」



 飛龍の皮鎧が五十五万レト位の価値があると言ってたから。小手と脛当てだけで四十万レトって言うのは高いね。でも飛龍の皮鎧より防御力があるものだからそんなものなのかな? 命を守ると思えば安いものだね。



「買います」


「ネロ。格好良いにゃ。ペロも欲しいにゃ!」



 そう言えば、ペロって鎧とか着けてないよね。



「ペロに合いそうな鎧ってありますか」


「ないのう。そんなちみっ子に合う鎧となると、特注で作らんとのう」


「ち、ちみっ子じゃにゃいにゃ……」


「クアルトに戻ったら、ゼルガドさんに職人さんを紹介してもらって作ってやるよ。でも、ペロはスピード重視だから軽い鎧しか無理だと思うよ」


「それでも良いにゃ。約束にゃよ!」



 おじいさんに小手と脛当てを着けてもらい、確認するけど若干大きいくらいで問題ない。これは確実に狙っていたんだろうね。まあ、良い物だから文句は言わずお金を払って後にした。




「これはミー様にネロさん。お久しぶりでございます」



 シュバルツさんもブレないね。何故、俺だけなの?



「今日は大勢でお越し頂き、ありがとうございます」


「今日は相談があって来ました」


「相談ですか?」



 シュバルツさんは窓際にある商談用のテーブルに案内してくれ、お茶を入れてくれる。


 セラとルーくんは足元の陽の当たる所で丸くなっている。ペロは珍しい品に興味津々のようで店内を見て回ってるね。ミーちゃんはシュバルツさんの膝の上で可愛いらしい欠伸をしている。



「それでご相談とは?」


「拠点を王都に移そうと思ってます。それで王都でアクセサリーや骨董品の売買についてアドバイスを頂けないかと思いまして」


「そうですか……王都へ。確かに今はそれの方が良いかもしれませんね。私も王都に移ろうと思ているところです」


「やはり街道が封鎖されたせいですか?」


「はい、北街道は問題ありませんが南と東が使えないのでは……今はまだ在庫があるので問題はありませんが、物価が高騰しつつありますので私のような取り寄せに頼る店は厳しいです」


「そうなんですね……」


「ですが、王都で私に商売のいろはを教えてくださった方が後継者が居ない為店を閉める事になり、私に店を譲りたいと仰ってくれているのです。それをお受けしようと思っている次第です」



 シュバルツさんが王都に店を出すのか、これは渡りに舟かもしれないね。



「実は、多くのアクセサリーや骨董品を持ってまして、その買い取り先に困ってるところなんです。商人ギルドには入ろうと思っているのですが、実績や信用の無い私が取引しようとしても足元を見られるのが落ちですから」


「成程。最初はそうかもしれませんね。自分でお店を持とうとは思わないのですか?」



 シュバルツさんはミーちゃんを優しく撫でている。ミーちゃんも気持ち良さそうだ。



「私自身の鑑定が頼りですから、信頼できる人が居ない限りお店は無理だと思ってます」


「王都に行くにしても、ここを畳んでから北回りでの移動ですから時間が掛かりますよ」


「えぇ、問題ありません。王都でお待ちしてます」



 シュバルツさんから王都のお店の場所を聞いておく。雑談をしながらお茶を飲んでると、ペロが赤いお子様用のマントを持って来た。うん、ペロに似合いそう。



「ネロ、これ欲しいにゃ」



 お子様用のマントなのでペロに丁度良い。赤い羽根付き帽にも良く似合うね。長靴も買おうか? ミーちゃんも、ペロちゃん似合うよ~って顔で見ている。



「店じまいとして、お安くしておきますよ」



 結果、赤いマントは良い物だった……。防水仕様でマントの中は常時常温に保たれる高品質。貴族のお子様なんかが着るものらしいです。まけてもらって十五万レトでした。ペロ、大事にしてね。



「姫。格好良いと思わにゃいかにゃ?」


「み~」





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