75神猫 ミーちゃん、アズキアイスを食べる。
丘の上でスミレに乗ったまま眼下を見下ろすと、遠くに太陽の光をキラキラと反射させる湖が見える。次の目的地ニクセは湖畔の街だ。湖に先端を突っ込んでいるように見えるのは、港のようになっているんだろう。
セラが飛び降り黒豹の姿に戻りスミレと並走するように走る。今までスミレの上でじっとしていたので、全力で体を動かしたくなったのだろう。
「がう」
ルーくんは無理だからおとなしくしてようね。
「がぅ……」
スミレはセラに合わせて走ってるようだ。ハンターや旅人、行商人の方がスミレが通り過ぎると驚いて見てる。門に着く前にセラは猫の姿に戻ってぴょんとスミレの上に戻ってきた。
何故か、門の辺りが騒がしいようだけど何かあったのかな?
「大丈夫だったか!」
へっ? もしかして俺に言ってます?
「君だ! バトルホースに乗ってる!」
俺の事のようです。話を聞くとバトルホースに乗った旅人が黒豹に襲われてると、防壁上に居た物見の衛兵さんが見て慌てて人を集めたそうだ。ご本人のセラは欠伸をして関係ないからねと言った様子だよ。
「気付きませんでした」
嘘です。そう言う他ありませんです。
「まあ、バトルホースに乗っていればそんなもんだろうな」
と、衛兵さんは言ってくれましたが、警備は厳重になるそうで多くのハンター達も動員されるようだ。
セラ、絶対に黒豹の姿に戻るなよ。ペロも間違っても余計な事は言うなよ。ペロの口を押さえてやる。
「にゃお~ん」
「フガフガ……コクコク」
「みぃ……」
ミーちゃんは呆れ顔。ミーちゃんこれは仕方ないよ、不可抗力です。
ここに長居は無用、バザーに寄ってペロと俺の夏服を買わないと。ペロは半袖半ズボンを三着、俺は薄手のシャツとズボンを三着に寝巻用に半袖半ズボンを一着買った。
他にも食材や果物を買い足していき、ついでに物色もして行く。
バザーの端は湖に面していて、一画が砂辺になっていたのでみんなで行ってみる。スミレは鞍を外してやると湖に飛び込んで行った。ペロとセラも泳いでいる、猫かき?
ミーちゃんとルーくんは俺と一緒に砂遊び。大きな山を作ってトンネルを掘る。こっちと向こうでミーちゃんとルーくんが恐る恐るお互いを覗き合っている。何を思ったにかルーくんが自分の体より小さい穴にダイブする。案の定トンネルが崩れ、ミーちゃんが驚いて俺に飛びついて来た。ルーくん、大丈夫か? って思ったら、前足で砂を掻いて新たなトンネル工事が着工されてた。
こんなのんびりしたのも良いよね。でも、そろそろ宿を探そうか。
スミレやみんなが泊まれる宿を探して歩きやっと見つけ、ベッド一つでは足りないのでツインでお願いする。
スミレの世話を終えて、夕食前にこの街の共同浴場に行ってくる。みんなはお留守番。よろぴく。
この地方の共同浴場はサウナがメインと宿の方に教えて頂きましたが、ニクセは水が豊富なので普通に浴槽もあり十分に堪能させて頂きました。やっぱり、お湯につからないと疲れは取れないよねぇ。
宿に戻って夕食にしたけど、三人前頼んだら宿のご主人が驚いていた。セラも猫化して小さくなっているけど、食事は普通に食べる。どこに入ってるんだろうね。
夕食後はミーちゃんとルーくんのお風呂、砂まみれですから。洗面台でわしゃわしゃ洗ってお湯を掛け洗い流してから、ミーちゃんとルーくんはお湯を張った桶一緒にまったりしてる。ペロとセラは湖で泳いだから良いそうだ。
その間にバザーで買ったスイカのような果物を布で絞っておく。水スキルで絞ろうとしたら、水が出てきた……難しい。過冷却状態にして衝撃を与えるとフローズンになる。お湯から上がったルーくんとセラが美味しそうに食べてる。俺も食べてみたけど甘みが少ない。もともとの味が余り甘くないようだ。売るとすれば蜂蜜を入れるべきかな?
ペロにはバナナを見つけたのでそれを串に刺して凍らせ食べさせている。これも甘みが少ないようなので、蜂蜜を掛けてるね。チョコなんて、ある訳ないか……。
柑橘系の果物も絞ってフローズンにしてみる。余り甘くはないけど、酸っぱさが心地よく感じる。俺は好きだな。誰も食べてくれないけど……。
そして、ミーちゃんは俺をジッと見ている。そう、ジッと見ている……。
ここ数日食べてないから忘れたのかなと思っていたけど違うようだ。どうやら、安心して味わって食べれる場所まで我慢していたようだね。
はぁ……。ミーちゃんバッグから出して、スプーン一杯分を皿に出してあげ、試しに凍らせてみた。濃厚アズキアイスです。
「み~!」
ミーちゃんのペロペロが止まらない。そんなに美味しいの? ミーちゃんに断ってほんの少し食べてみた。牛乳で割ってから凍らせた方が美味しいかも。濃すぎるね。ミーちゃんは気にしてないようだけど。
宿の部屋は窓を開けているので湖からの涼しい風が入ってくる。一応、虫除けに桶にほんの少しシャンプーを溶かして窓際に置いている。虫が一匹も寄って来ないからありがたいね。
さて、寝ましょう。ペロとセラとルーくんで一つのベッドを使ってもらう。セラとルーくんにはペロが寝相が悪いと言う事は教えてある。気を付けてね。ミーちゃんは俺と一緒だよ。
「み~」
翌朝、セラの悲鳴で目が覚めた……。猫姿のペロに羽交い締めにされてる黒猫姿のセラの姿がそこにあった……おぉ、ジーザス。ルーくんは無事のようだ。しかし、ペロは器用だ。
「みぃ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます