67神猫 ミーちゃん、腹ペコ魔人に呆れる。
何故、こうなった……。
ギルドの酒場の厨房で絶賛、料理中です。
ミーちゃんはカウンターの上で、ハンターのお姉さん達に愛想を振りまいている。ペロは食べ物をタダにすると言う言葉に釣られて、酒場のウエイトレスさんと一緒に給仕に走り回っている。
ギルドの酒場に入り切らないので、外で飲んでるハンターさんが居る始末。これも全てジンさんが悪いのだ。そう、悪いのだ。今回の件に手を貸してくれたハンターさん達に言ったつもりなんだろうけど……。
「今日は無礼講だぁ! パァーっと飲むぜ!」
「「「おぉー!」」」
今回の件に関与してないハンターさん達も、ジンさんの掛け声でこの混沌とした宴会に突入してきた。依頼から戻って来たハンターさん達も随時突入してくる。お酒も足りないので、酒屋に言ってどんどん搬入してもらっている。今回の件で手に入れたお金は全て俺が預かっているけど、湯水のように消えていってる。
食べ物も酒場の厨房だけで間に合わないので、近くの食堂や酒場から勝手に注文して食べてるハンターさんの請求書が俺には回ってくる。た、足りるのか? 不安です……。
このハンターさん達の大賑わいとは対照的に、ギルド側はお通夜のような雰囲気で淡々と仕事をこなしているようだ。誰一人として喋っていない。初めて見る光景ですよ。
ヤン君は今回の件に力を貸してくれたハンターさん達に、何度もお礼をしてから家に帰って行った。病気のお母さんと妹さんが居るので宴会には誘えない。代わりに食べ物をたくさん持たせてあげた。とても喜んでたね。
「疲れたにゃ……お腹空いたにゃ」
「頑張れ、ペロ。空腹こそが最高の調味料と言ったのは誰にゃ!?」
「ペロにゃ! 頑張るにゃ!」
ペロは扱いやすくて助かるよ。から揚げは取っておいてあげるからね。
「なんだ? ネロは飲まねぇのか?」
「飲みませんよ。それに誰のせいでこうなっていると思っているんですか!」
「いや、まあ、ぽろっと口から出ちまってよう。わりぃ……」
「資金も不安ですよ。預かったお金の三分の一は既に消えました」
「ハハハ……マジかぁ? まぁ、戦利品は売却してねぇから何とかなるだろう。足りなければこいつらから徴収するからよ!」
疲れた顔したゼストギルド長がカウンターに来て腰をおろした。
「儂も一杯、馳走になりたいんじゃが?」
「しょうがねぇな。大先輩にそう言われたら、飲ませねぇ訳にはいかねぇよな」
水スキルでキンキンに冷やしたエールをギルド長に出す。
「旨いな。これはスキルの力か?」
頷いて見せる。
「セルティオは本部付きに戻す事にした。あの化け物共の下でもう一度勉強し直して来いとな」
本部に居る人って
「ネロ君、君はどうするつもりじゃ?」
「一応、使者の役目は引き受けた身なので、それは最後まで遂行しますよ。後は、俺を雇ったのはクアルトのハンターギルドですから、セリオンギルド長と話をしないと駄目でしょうね。クイントに現れた流れ迷宮のマッパー役も引き受けているので」
「マッパーってマップスキル持ってんのか? ネロ」
「えぇ」
「ネロ君は多才じゃな」
「人はそれを器用貧乏と言いますよ」
「「……」」
おいおい、冗談のつもりで言ったのに、笑ってよ! なんなのその沈黙は、あなた達もそう思ったって事ですよね……。
「みぃ……」
ミーちゃんまで……。
「ま、まあ、多才な事は良い事じゃ。今回の件についてはネロ君の事は伏せておくつもりじゃ。変な目を付けられてしまわぬようにな。問題は、本部の目は誤魔化せん事じゃ。少なくともネロ君の身辺は探られよう。介入してくる可能性もあり得る」
「ありがとうございます。できれば、余り目立ちたく無いので……本部の件は仕方ないでしょう」
正直、面倒だね。ばれる事はないと思うけど、ミーちゃんの事もあるからね。
「み~」
ミーちゃんは余り気にしてないようだ。贅沢さえしなければ田舎でスローライフってのも良いんだけど、日本という物資に恵まれた中で育った俺が耐えられるかが一番の問題だと思う。
いざとなったら、ペロの故郷に逃げ込もう。ミーちゃんを邪険に扱う事はないだろうしね。
最終手段は神様に頼ることかな。なんか良いアイデア持ってるかもしれないしね。これも全てミーちゃんの為! だからね。
結局、無礼講の宴会はギルドが閉まる十一の鐘まで続き、ハンターさん達は二次会へと消えて行き、残されたのは洗い物の山と請求書の山だった……。あれだけあったお金がほとんど無い。余った分はマスターに渡しておき、ジンさんに渡してもらうように頼んでおいた。
その後、酒場のマスターとウエイトレスさん、ペロとの四人で何とか日が変わる前に洗い物を終らせた。代わりに料理や食材を沢山もらったけどね。
宿に帰るとスミレがプンスカ怒っていた。忘れてた……。ご飯は宿の方が与えてくれたらしいけど怒ってるね。ペロと疲れた体に鞭を打って、スミレの世話を念入りにさせて頂きましたよ。はい。
部屋に戻り、やっとペロと夕飯にする。夕飯と言うより夜食だよ。ミーちゃんは酒場に居る時に夕飯を食べていたので、今は俺の横で餡子を舐めてる。
「ウマウマにゃ!」
山盛りのから揚げがペロの無限腹ペコ地獄に消えていく。右手にから揚げ、左手にピラフおにぎり夢の最強タッグですが、ペロの無限腹ペコ地獄の前には唯の余興でしかなかったよ。出しては消えて、出しては消えて……。それを見ていたミーちゃんが、けぽっとなってしまった程。腹ペコ魔人、恐るべし。
寝る段階になり一悶着。ペロがベッドで寝たいと言うけど却下しました。
今のペロのお腹は妊婦さんより大きい。そんなお腹で転げ回ってミーちゃんを圧死させるつもりかぁと言ってやったら、渋々おとなしく猫化してキャリーバッグに入って行った。入るのにお腹が邪魔で苦労してたのはご愛嬌。
ミーちゃんはなんか寂しそうにしている。短い間だったけど昨日までは、弟分のルカが居たからね。ミーちゃんをギュッと抱きしめてから、お休みなさいと言ってあげた。
「み~」
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