65神猫 ミーちゃん、金庫を開ける。

 ハンターさんが見つけた金庫には、ほんの少しの金貨銀貨が入っていただけだった。



「こいつは偽装用だな。ネロが見つけた方が本命らしいな」



 鍵開けスキル持ちのハンターさんが、金庫の解錠に挑んだけど失敗に終わった。



「ペロも鍵開けスキル持ってるよね?」


「持ってるにゃ。でも、家の扉ぐらいしか開けた事ないにゃ……まあ、やってみるにゃ」



 家の扉ぐらいって……開けて何してたんだろうね? ペロくん……。



「みぃ……」



 ペロは何かの道具を出してカチャカチャと本格的にやっている。



「うーん、駄目にゃ……ペロの技量では開けられないにゃ」


「仕方ない。後で本職呼ぶしかねぇなぁ」



 ハンターさん達が金庫に興味をなくし他の捜索に移る。



「み~」



 何故か、ミーちゃんが俺をテシテシ叩いている。どうしたの? ミーちゃんは何かを咥えて渡してきたね。ミーちゃんお気に入りの赤い宝石の付いたネックレスだ。鍵? まさかね……カチッ。ネックレスを近付けたら音がした……マジですか。



「おぉー、ネ、フガフガフガ……」



 ペロが余計な事を言わないように口を塞ぐ。ミーちゃん! 早く余計な事を言わないようにって、ペロを説得して!



「み~」


「フガフガ……ひ、姫がそう言うなら黙ってるにゃ……」



 当たり前だよ、検証はまだだけどおおよその予想は付く。これが人に知られたら命がいくつあっても足りない。緘口令を敷かせてもらいます。


 でもなんで、こんな事ができたんだ? ミーちゃんのネックレスを再度鑑定してみる。AF 解錠のネックレスとなっていた……なんで? いや、この事は後で考える事にしよう。



「ジンさん。金庫開いちゃいました。テヘペロ」


「み~」


「てへぺろってペロの事にゃ?」



 ややこしくなるので、ペロ君黙っててくださいな。



「どうやって開けた……?」


「なんか適当に?」


「適当ってよぅ……」



 金庫の中は書類が多数に、金貨が一杯入った袋が四つ入っていた。思ったより少ないね。こう、金銀財宝を期待していたんだけど……夢の見すぎ?



「それはお前、期待し過ぎだろ。マフィアと言っても一つの組織だ。運営するのに人件費、維持管理費、諸経費だって掛かるんだぜ。それにリスク分散で金は分けている可能性もあるしな」



 何とも現実的なお話ありがとうございます。勉強になりました。と言う事は、俺もリスク分散した方が良いのだろうか? でも、ミーちゃんバッグ以上に安全な場所って無いよね。



「み~?」



 ミーちゃんを見つめていたせいで、ミーちゃんが不思議そうに首をかしげて、ど~したの~? って顔をしている。



「ミーちゃんは可愛いな~って」


「み、みぃ……」



 照れるミーちゃんも、破壊力抜群です!



「お前ら、何やってんだ? んな事より見てみろ。これはヤバいぜぇ」



 金庫にあった書類をジンさんが見ている。何がヤバいんでしょうか?



「これを見ろ。この国の伯爵の名前だ……侯爵の名まである」



 この国の貴族がマフィアと繋がっている証拠の書類だそうだ。王妃様に渡そうか? そうしよう。王妃様なら上手く使ってくれるに違いない。



「これ、俺が預かりますね? 王宮に伝があるんで渡しておきます」


「おいおい、伝って……。これの意味わかってるのか?」


「要するにクズ貴族って事でしょう? 上手く使ってくれる人知ってますので」


「そ、そうか? じゃあ任せるぜ。こいつは俺には危険過ぎる。ネロもすぐに手放せよ」




 どうやら、あらかた接収は済んだようだ。後は問題の依頼人を取っ捕まえて、ギルドで洗いざらい喋って頂きましょうかね。


 ハンターさんの別働隊が問題の依頼人を捕まえに行ってくれているはずなので、ハンターギルドで合流する予定だ。ヤン君に荷物を見せて確認してもらったら、間違いないそうだ。これで全ての駒はハンターギルドに揃う事になる。


 大勢のハンターさんがギルドを取り囲んでいる。依頼から戻ってきたハンターさん達も話を聞いて合流してるようだ。こりゃ、大変だよ……落とし所を間違えたら暴動が起きかねないね。


 ハンターギルドに着くとギルド長が出迎えてくれた。横には完全に血の気が引いたセルティオさんが居る。



「お前は何をしとるんじゃ?」


「何をって、ギルドの怠惰な部分を正してるところですが?」


「話は聞いとる。それでどうじゃった?」


「もうすぐ、待ち人が来ますのでお待ちを」



 待ち人はまだ到着していない。ゼストギルド長がセルティオさんにギルド職員証明書を投げつけ啖呵を切った事を聞いてきた。



「ハンターギルドの職員を辞めると言ったそうじゃな。どうするつもりじゃ」


「そうですね。こんな腐った場所で働くくらいなら、断わったばかりですが、宮廷料理長の弟子にでもなりますかね」


「儂の前でもその辛辣さはやめんか……」


「そもそも、ギルド長がしっかりとしていればこんな事にならなかったのでは?」


「ぐぬぅ……言いおるわ」



 どうやら、待ち人来たるのようです。



「な、何をする。私が誰か、わかってやっているのか!」


「ようこそ、おいで下さいました。マフィアの手先のエッボさん」


「な、何を言っている」


「既に、あなたとのマフィアとの関係は、ここに居るハンターさん達全ての知る所です。観念してください」


「……」



 役者は揃った。さあ、正義の鉄槌を受けてもらいましょう!



「み~!」





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