52神猫 ミーちゃん、アルター商会の商隊と出会う。

 流石に緊急と聞きギルド職員さんも対応してくれ奥の部屋に案内される。



「セッティモのハンターギルドにようこそ。統括主任のグレンダです」


「ネロです。こっちがミーちゃんです」


「可愛らしい、職員さんですね」


「み~」



 グレンダさんに職員証明書、緊急用手形、手紙を渡す。


 レンダさんが手紙を読み終わり、職員証明書と緊急用手形を返してくれた。



「事情はわかりました。至急ハンターを送りましょう。それと、手紙には明日着く事になっていますが……」


「乗って来た、スミレの調子が良かったもので早く着きました」


「そうですか。今日はこの街で一泊ですよね。宿はお決まりですか?」


「お勧めの宿はありますか? 馬も泊まれる場所でお願いしたいのですが」


「明日の出発の事を考えると北門の宿が良いでしょう。地図を書きますね」



 グレンダさんに見送られ、ハンターギルドを出ようとすると外が騒がしい。外に出ると男がスミレをベタベタ触っていて、スミレが嫌がっている。



「ちょっと! スミレが嫌がってるでしょう!」


「み~!」


「なんだ~てめぇ。こいつの持ち主かぁ~。ありがたく思え、俺がこいつをもらってやる」


「なに馬鹿な事言ってるんですか!」


「こんなガリガリの馬、もらってもらえるだけありがたいと思いな! 俺が飯食わせて高く売ってやんよ!」


「ふざけるな!」


「み~!」


「なんだてめぇ。やんのかごらぁー!」



 この男、剣抜いちゃったよ。どうすんのよ? ねぇ、グレンダさん? グレンダさんは両手を肩まで上げ首を振ってるね。自分で解決しろって事ですか……。


 相手は剣抜いちゃったしね、これは正当防衛だよね、っね。空気大砲をぶっ放した。至近距離で……吹っ飛んで行ったね。



「これで、良いですか?」


「えぇ、見事でした。そいつを捕まえて牢に入れときなさい! ハンター資格剥奪の上で裁判にかけます」



 流石に、周りにいたハンターさん達が驚いている。



「その男は、ギルド職員に剣を抜いたばかりか、緊急の伝令の馬を奪おうとした。これは死罪に値します」



 ハンターさん達がグレンダさんの言葉に納得したようで、気絶している男をロープで縛りあげる。



「済みませんでした。まさか、これ程の愚か者がうちのギルドに居るとは、恥ずべき事です。見直す必要がありそうです。それにしても、先ほどのあれは異能ですか?」


「大気スキルですよ」


「大気スキル……」


「そのうちに、ギルドに報告書をあげますよ。スキルの見直しについて」


「そうですか、楽しみに待ってます」



 グレンダさんと別れ宿に向かった。向かう途中ずっとスミレは不機嫌。あたかも、レディの体をベタベタ触るなんて失礼しちゃうわ、って怒ってるみたいだよ。


 宿に着いて部屋を取ってから、スミレの身体を綺麗に洗ってやるまでプンスカしてた。桶に水と飼い葉を用意してやっと収まったようだ。明日もよろしくね。


 宿でミーちゃんと夕食をとって部屋に戻ると、ミーちゃんがソワソワして俺に向かって鳴いている。おトイレならそこに用意したでしょ? ミーちゃん。今度はプンプン怒り出してテーブルをテシテシ叩いている。なんでしょう?


 とうとう、ミーちゃんは実力行使に出て、餡子の載った皿を出してきたね。



「食べたいの?」


「み~」


「さっき、ご飯食べたばかりだよ」


「み~」



 お菓子は別腹だよ~って、どこでそんな事を覚えたの? 仕方ないね……。



「少しだからね」


「み~」



 ミーちゃんは餡子を美味しそうに食べる。餡子のどこがミーちゃんの琴線に触れたんだろう? お菓子なら食べるのかな? 今度プリンでも作ってみようか、ハチミツプリンだけどね。俺も食べたいし。



 翌日も夜が明ける前に起きて出発する。今日も絶好調のスミレ、速いよ~。


 途中、見た事のある商隊を見つけたので、スミレにスピードを落としてもらう。アルター商会の商隊だ。商隊の責任者のゼフさんに声を掛けた。



「こんにちは」


「おや、ネロさんじゃないですか。どうしたんですか?」



 商隊は一旦、止まって休憩になった。



「ネロ君、この馬バトルホースだよね。どうしたんだい?」



 護衛の八つ眼の牙リーダーのファーレンさんはスミレの事が気になるようだ。


 簡単に、別れた後の事を話すと、いつぞやの炎使いのお姉さんに



「あんたって波乱万丈な生き方してるわね……」



 誉められてるのか、貶されてるのかよくわかりません。商隊はクアルトに帰る途中のようで、ゴブリンの話には困惑しているようです。ある意味、敵陣のど真ん中を通る事になるからね。



「それでは、ネロさんはこれから王都へ」


「はい。スミレは速いですから」


「痩せているが、賢そうな良い馬だね」



 ファーレンさんがスミレの頭を撫でているけど、スミレは嫌がっていない。昨日のような男は例外なんだろう。



「それじゃあ、みなさんお気をつけて」


「ネロさんも、気を付けるんですよ」



 アルター商会の商隊と別れ次の目的地に向かう。途中、ゆっくりと昼食をとったけど、夕方前に予定のだいぶ先のセストの街に着いた。この分で行くと明後日には王都に着きそうだよ。


 まずは、バザー漁りだ。なんかこの頃、バザー漁りが楽しくなってきた。砂の中から一粒の宝石を探すみたいだし、店主さんとのやりとりもなかなかの緊張感で良い。


 ミーちゃんも、この雰囲気好きだよね。



「み~」




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