37神猫 ミーちゃん、迷宮探索に同行させてもらえる。
エバさんは怪訝な顔をしている。
「迷宮はとても危険な場所よ。そんな危険な場所にわざわざミーちゃんを連れて行くのですか?」
ギルドのお姉さん達からもブーイングが上がっている。
「外野は黙っててください。あなた達はミーちゃんと俺の何を知ってると言うのですか? ミーちゃんと俺は一蓮托生、この世界で唯一無二の関係なんです。どちらかが生きて、どちらかが死ぬなんてありえません」
「み~」
まあ、ミーちゃん不老不死なんだけどね。でも、俺が死んだら誰がミーちゃんのご飯を用意するんだよ。
ミーちゃんが俺の顔をペロペロしてくる。大丈夫だよ。死ぬ気なんて毛頭ないからね。
周りは静まり返っている。大きな声を出したつもりはないけど驚いたのかな?
「そうですね……私はネロ君の事を何も知らずに、余計な事を言ったようですね。申し訳ありませんでした。ですが、これだけは忘れないでください。命の保証は最善を尽くすとしか言えません」
「それについては、納得はしていませんが理解はしました。守ってもらうしかないのが現状ですから」
「わかりました。ミーちゃんの同行を認めます」
「み~」
その後、用意する物の話をされ通常業務に戻った。
翌日は、スミレの所に行った後バザーに来ている。朝は人も大勢で活気があり、食材も豊富にある。買いにきたのはトマトだ。そうです、なんちゃってケチャップを作るのです。お米があるのですからお子ちゃま人気の一品、オムライスを作らなければ駄目でしょう。
と言う事で、食材を買ってギルドの酒場の厨房に来ています。
「何するつもりだ?」
「良いものを作るんで覚えてくださいね」
「お、おう」
まずは、お米を炊いておき、その間になんちゃってケチャップを作る。後はチキンライスを作り、薄焼き卵でくるむだけ。はい、できあがり。ついでにケチャップでLOVEとも描いておく。LOVE注入である。
「なんで、卵でくるむんだ?」
「中身が見えないようにですよ。食べる時に初めて中身がわかると楽しいでしょう?」
「そうか?」
「これなんて描いてあるの?」
「俺の国の言葉で『愛』です」
「愛なんだ~♡」
「み~」
「意味あんのか?」
「愛情たっぷりを表現しました」
「……そうか」
そんな愛情たっぷりのオムライスを、サイクスさんとウエイトレスさんで分けて食べる。美味しいし、懐かしい味だね。
「これも人気間違いなしですよ~。マスター」
「あぁ、うめぇよ、これ」
「このケチャップはいろいろな料理に使えるから便利ですよ」
「しかし、教えちっまって良かったのかよ。秘伝の味じゃねぇのか?」
「ニンニク油もこのケチャップも、クアルトでお世話になってる宿のご主人に教えてるんで問題ありませんよ。逆に広がってくれれば、美味しい物がより多く食べれるって事です。今度マヨの作り方も教えますよ」
「マヨが何か知らねぇが頼むぜ」
教える代わりにピラフを貰いました。大量におにぎりにしてミーちゃんバッグに収納しました。昨日、エバさんに保存食は自前で用意するように言われていたからです。クアルトで用意した物も殆ど手を付けていないので、ミーちゃんバッグの中には大量の料理が入っている。
出発の時間が近付いたので準備をする。すると言ってもたいした事はないけどね。問題はスミレをどうするかだ。迷宮探索のせいで毎日のお散歩ができなくなった。せっかく体調が良くなってきたのに、馬舎に閉じ込めていたら滅入っちゃうよね……。連れて行こうか近いとこみたいだし。
「ねぇ、スミレ。この場所に籠ってるのと、条件付きで外に出掛けるのと、どっちが良い?」
「み~?」
スミレは俺とミーちゃんに顔を摺り寄せてくる。お出掛けの方が良いみたいだね。
「わかったよ。連れて行ってあげるから、言う事はちゃんと聞いてね」
ぶるるっと頷き肯定の仕草を見せた。じゃあ一緒に行こうか。
ハンターギルド前に行くと、既に人が集まっている。
エバさんから大まかな説明があり、出発の準備に入る。総勢二百人にもなる大所帯だ。
向こうで迷宮の入り口を防壁で囲む作業がおこなわれる。その為の作業員さんと護衛のハンターさん達だ。他にはギルドの職員が数名同行する。
「君がネロ君だな。私は蒼竜の咆哮のリーダーをしているミュラーハントだ。ミュラーと呼んでくれ。君と一緒に迷宮に入る事になっている。よろしくな」
トカゲさんが話掛けてきた。この人は覚えている。ゴブリン二百匹分の強さを持つ竜人族の方だ。
「ネロです。こっちはミーちゃんです。この子はスミレです」
「なんだ、このガリガリのう……まって、バトルホースかよ!」
蒼竜の咆哮のパーティーのみなさんも驚いてるね。
「えぇ、今ちょっと病気療養中でして、これでもだいぶ良くなったんですよ」
「そ、そうか。大丈夫なのか?」
「何がですか?」
「何がって、なあ? バトルホースと言ったら気性が荒いので有名だぞ」
「スミレはおとなしい子ですよ。変な事さえしなければ、むやみに人を襲ったりしませんよ。ねぇ、スミレ」
ぶるるっと、失礼しちゃうわ、そんな野蛮じゃなくてよってみたいな仕草を見せる。
「そ、そうか、それなら安心だな」
余り信用してないようなので、スミレの背にミーちゃんを乗せておいた。
エバさんが出発前に声をかけてきた。
「ネロ君。その子も連れて行くの?」
「少しずつ、体を慣らしていかないといけないんで、ちょっとした運動がてらに連れて行こうと思います」
「まあ、バトルホースだから問題ないとは思うけど、気を付けるのよ。ミーちゃんもね」
「はい、行ってきます」
「み~」
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