19神猫 ミーちゃん、旅の準備をする。

 その後、明日から隣街に行く為、道具を集めてる事を話すとシュバルツさんは色々アドバイスをくれた。その間、ミーちゃんはシュバルツさんの腕の中に居たけどね。


 そして、店の中からこれだけは買って行きなさいと、ランプを持ってきた。


 宿の部屋にある物より頑丈そうな作りで、全面を明るくする物ではなく後ろに付いている反射板が自由に広げられるようになっていて、光を当てる範囲を調整出来るようになっている。


 真っ暗な場所で光がないのは致命的、高くても頑丈な物を持つ事が大事と言われた。


 他にも、保温具と言う物でスイッチを入れると暖かくなる道具に、日除けの帽子を勧められたので買う事にした。保温具はミーちゃんがとても気に入ったようだよ。



「み~」



 全部で五万レトだったので、四十五万レト貰った。


 シュバルツさんに帰って来たら、また来ますと言ってお暇しました。



「み~」


「またのお越しをお待ちしております」



 ミーちゃんの挨拶にもちゃんとキリッと対応するシュバルツさんはどこまでもプロだ。見習うべき事だね。でも、ミーちゃんを見る目はとても優し気に見えたね。


 お昼の時間になったので今日も屋台の場所に行き、テーブルでミーちゃんにご飯を食べさせる。ミーちゃんに預けていた熱湯の入ったコップを出してもらい、確認するけど熱湯のままだ。全く冷めていない。今、沸かして入れたと言っても、誰でも信じるだろう。よし、これで決まったね。ミーちゃんが食べ終わったら作戦開始だ。


 ミーちゃんが食べ終わるのを待ち、近くの雑貨屋さんで木製の皿と深皿を十枚ずつ買い込み屋台の場所に戻る。目に付いた美味しそうなの物を注文して、買った皿に入れてもらいミーちゃんバッグに収納してもらう。その後、パン屋を探して出来立てのホカホカパンだけを買ってミーちゃんに収納してもらった。


 これでいつでも出来立ての料理が食べられる。残りは、宿の旦那さんのドガさんに作ってもらおうと思う。調味料のおかげで、前以上に料理の味が良くなっているから確実な選択だろう。


 夕方にはまだ早いけどハンターギルドに行かないと駄目なので、約束していた武器屋に先に行く事にした。



「おっ、良いとこに来たな。丁度、終わったところだ」


「それは良かったです。午前中に紹介してもらった職人さんの所に行って来ました」


「そうか、なんだって?」


「とても良い品だと言ってました。修理と調整に十日程掛かるそうです」


「そうか、やっぱり良い物だったか」



 そう言いながら、カウンターに短剣と小剣を置いた。持って来た時とは打って変わって見違えてしまった。



「持ち手の皮を巻き直した。こっちの短剣は滑り止め程度だがな。どちらも見れば見る程良い剣だ。この小剣は銘が打って無かったが、名工が鍛えた剣に違いないな」



 握ってみるとしっくりくる。鞘も持って来た時はくすんでわからなかったけど、蔓が巻き付いたような模様が施されていた。



「それからな、その短剣どうやら投げて使う物のようだ。切るのでは無く、刺す事を目的に作られている。重心も持ち手側じゃなく持ち手より少し前にあった。なので投げて使うと判断した」


「ダーツや投げナイフって事ですか?」


「そうだな、だが、うちで売ってるような使い捨てのナイフと違い、大きく重量があるからな相手に与えるダメージが大きくなる。反面、使い捨てにするにはもったいなさ過ぎる。投げたら回収してたんだろう。だから、使う人間がいなく作られなくなったんだろうな」



 成程、いちいち回収するのは面倒くさいもんな、外したら尚大変だ。それにしても、この短剣の鞘も綺麗だな。緑がかった銀色のようだ。



「その短剣に関しては、何の金属を使ってるかわからなかった。結構古いものだからな、失われた技術なのかもしれん」



 AFだからね。古くて当たり前、遺物って言う位だから。


 店主さんは剣と一緒に剣帯も一緒につけてくれた。肩と腰に巻くずれ落ちないタイプの物だ。なかなかに格好良い代物だね。



「良いもん見せてもらった礼だ」



 その場で着け方を教わり装着して小剣と短剣も取り付ける。コートを羽織ると全く帯剣してるのがわからない。これは良いね。気に入りました。



「ありがとうございます」


「言っとくが、間違っても自分から戦いに参加するんじゃねぇぞ。良い武器持ったからって、兄ちゃんが強くなった訳じゃねぇんだからな」


「はぃ……肝に命じておきますぅ……」



 ちょっとへこんだ状態でハンターギルドに来ました。パミルさんを見つけたので行ってみる。



「あら、ネロ君。勇ましい格好ね」


「え? どう言う意味ですか?」


「コートの中に剣か何か装備してるでしょう?」


「わかるんですか?」


「わかるわよ。これでもハンターギルドの主任よ」



 成程、説得力がありますね。見る人が見ればバレバレなんですね。またへこんでしまう……。



「それで来てもらった件なんだけど、この手紙を向こうのハンターギルドに届けて欲しいの。それとこれが引き取り証、後は地図ね」



 そうだね。これがないと向こうで路頭に迷うところだった。



「それから、明日の朝は六の鐘出発だから、遅れないで西門まで行ってね」


「はい。わかりました。それで何という商会なんでしょうか?」


「あら、言ってなかったかしら? アルター商会よ。この街でも五本の指に入る大店ね」



 ふーん。そうなんだ、全く知りません。



「最後に何か起きた時は、ハンターの指示に従うこと。今回護衛の依頼を受けたのは中堅の信頼できるパーティーと、若手だけどこのギルドで一番期待されてるパーティーだから、彼らの指示に従っていれば間違いないわ」


「わかりました」


「無理はしないで気を付けて行くのよ。帰りは向こうのハンターギルドで手配してくれるように手紙に書いておいたから、勝手に帰らないようにね」


「もちろんです。まだ死にたくありません」


「よろしい。ミーちゃんも気を付けるのよ。ネロ君から絶対に離れちゃ駄目だからね」


「み~」


「あ~ン。ミーちゃんと会えない日々が続くと思うと憂鬱だわ……」



 ははは……。何も言うまい。


 用件も済んだので、宿に戻りますか。ミーちゃん。



「み~」





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