第32話 デート
なんとなく隣で寝ているはずのニャコの尻尾に手を回そうとした。しかし俺の手に尻尾の感触は伝わって来なかった。もしかして、いじりすぎたから取れてしまったのではないかと焦ったことで、俺の頭は覚醒した。
目を開くと小さな金髪の頭が俺の布団から少しだけ出ている。隣で寝ていたのはクレアだった。布団を剥ぐと赤い顔をしたクレアと目が合った。
なんとなく記憶の片隅に、ニャコを布団の中に引っ張り込んだ記憶がある。
どうやら間違えてクレアを引っ張り込んでしまったらしい。
「こういうことは、プロポーズされてからなんじゃなかったか」
「勝手に引き込んだのはそっちでしょ。お尻触ったわよ」
「ニャコだと思ったんだよ。お前は任務を最後まで果たせないんだから起こしに来ようなんて考えるなよ。毎回こうじゃないか。もう二度とそんな野心が起きないようにしてやるよ」
そう言って抱きついたら、ものすごい力で跳ねのけられた。その力を利用して、俺はベッドから出る。
「今日は起こしに来たんじゃないわ。しばらくは休暇が欲しいって言いに来たのよ」
「休暇ってなんだよ。毎日遊んでるだけじゃないか」
「貴方と違って、私たちは好きでモンスターなんかと戦ってるわけじゃないの。今の私たちはお金持ちなのよ。だからしばらく休みたいわ」
「だけどお前がいなかったら何もできなくなるだろうが。誰が敵に殴られる役をやるんだ」
「みんなにも了解を取ったわ。誰も反対しなかったわよ。お金があるから休めてよかったって言ってたわ」
確かにドラゴンのドロップがとてつもないものだったから、みんな懐が温かいのだ。最近はロストもしないし、お金の使い道もないのだろう。特にワカナなんていくらため込んでるのかわからないほどだ。
しかし俺はすでにクウコで使ってしまっているから、手持ちなどほとんどない。
俺はクレアと共にリビングに出て朝食のテーブルについた。
「だけど、一日暇でもやることもないだろ。何をするんだよ」
「そんなの、いくらでもあるよ。作りたいものも沢山あるし」
「そうだよなー。アタシもスラムの奴らに会いに行きたいしな」
「会いに行くのはいいけど悪い影響を受けてきたら駄目よ」
「クレアは教育ママみたいだな。悪い影響なんかねーよ」
「アイリは何するんだ」
「アルクのランク上げを手伝ってあげる予定よ」
「リカは」
「旅に出る」
「ユウサクはどうするのよ」
とクレアが言った。
「しょうがないからタクマたちのところにでも入れさせてもらうさ。他にやることもないしな」
「呆れた。たまにはゲームから離れなさいよ」
「お前だって、ちくわのランクを上げてやるならゲームのうちじゃないか」
「なるべく景色のいいところでやるつもりよ。貴方とは違うわ」
「クレアあたり連れて行けよな。盗賊が出ないとも限らないぞ」
「心配してくれてるの」
「まさか。面倒は増やすなって言ってるんだ」
「こないだアイリの帰りが遅かったときは心配そうな顔してたじゃない」
「あらそうなのね。セルッカの周りでやるから心配なんてないわよ」
「クレアって嘘つきだよな」
「そうかな。大会の賞品を魔剣と交換しに行った日、帰りが遅いのを心配してなかったっけ」
「ワカナまで何を言い出すんだよ。あれは晩飯が食えなくてイライラしてただけだ。ぼんやりしすぎてて、何も見てないよな」
「へー、そうなの」
「おい、アイリ。お前は耳が聞こえないのかよ」
朝飯が終わったらギルドハウスにはワカナとクレアだけが残されて、あとはみんなどこかへと行ってしまった。俺はタクマに連絡を取ってみたが、サキュバス狩りに出てしまったからしばらくは帰れそうにないと言われた。
あんなダンジョンの最奥まで俺一人で入って行くことは出来ないから、今日は本格的にやることがない。
しばらくするとクレアもどこかに行ってしまった。俺はテレポートスクロールをいくらか持っておこうと、ギルドの共有チェストを開いたら、みんなが適当に持ち出した後らしく、8枚しか残っていなかった。
これはまだドロップも少なくて市場にも数が出ていない。宝物庫から持ち出した中でも、かなりの貴重品だ。今もリカが市場のコンパニオンで一万近い額の売りを出している。
それをずいぶんと気やすく持ち出してくれたるものだ。俺は残りから3枚ほどを自分のインベントリに移した。
そんなことをしているうちにクレアが帰ってきた。
「ちょっとお願いがあるんだけどいいかしら」
「なんだよ。俺はこれから忙しいんだぞ」
「イヤらしいことをするのに忙しいんでしょう。ちょっと手伝ってほしいことがあるのよ」
「なんの手伝いだ」
「アイスクイーンのドレスっていう、ワンピースのようなアイテムがあるのよね。市場で見つけたんだけどすごく高かったのよ。それで買うのを迷ってるうちに売れちゃったの。それがどうしても欲しいのよ」
クレアが装備できるということは、ただのアバターアイテムだろう。
「トロールキングの腰蓑とかじゃ駄目なのか」
「そんなこと言うならもう頼まない」
「そんな簡単にすねるなよ。冗談だろ。手伝うのはいいけど、どうして俺なんだ」
「だって、ものすごい沢山の人が一斉に襲い掛かるのよ。騎士のダメージじゃドロップなんて来ないらしいわ。魔剣士ならきっとドロップもあると思うのよね」
そんなことなら任せておけと気安く請け合ったのが間違いだった。30分後、王都から一本道で来られる氷結の洞窟にやって来た。そして以前に俺が落ちたショートカットの落とし穴を滑り降りると、ボスの部屋はすぐ目の前である。
やって来て15分もすると、俺は後悔の念に襲われることになった。
「なあ、それでボスはいつになったら出てくるんだよ」
「知らないけど、二時間以内には出るそうよ。人もたくさん集まって来てるから間違いないわ」
奥歯をガタガタいわせながら寒さに耐えているのに二時間くらいとは何事だろうか。熊の毛皮のコートを着ていても、動かずにいたらひどく寒いほどの温度だ。ここには雪まで降っている。
俺以上にクレアの方も寒さに震えていた。栄養失調みたいな体をしているんだから当然だろう。仕方なく、俺はインベントリの中に入っていたクロークをクレアに掛けてやった。
寒いからもうちょっと近くに来いと言ったら、そんなことしませんと断られる。金属の鎧なんか着ていて俺よりも寒いはずなのに、何を気にしているのだろうか。
それから二時間ほども待っていたら、自分に降り積もる雪すら払う気力もなくなって、俺もクレアも真っ白だ。20人ほどが、ひたすらこの寒さに震えているのだから馬鹿らしい。
さすがにもう無理だという頃になって、やっとアイスクイーンが現れた。俺は最初にデストラクションを放って、オシリスの宝剣で斬りかかった。
たった一回斬りかかっただけでアイスクイーンは光の粒子に変わった。
ドロップはリコールスクロール2枚だった。俺がこれでは、クレアではドロップなど得られないだろう。周りの奴らもあれが出たこれが出たと騒いでいる。
「これはアイリでも連れてこなきゃ駄目なんじゃないのか」
「冷え性だとか言って来てくれないのよ」
「当り前だろうが。俺だってもう二度と嫌だよ」
外れのリコールスクロール二枚で、一人分の日当くらいは出ているから、稼ぎが悪いわけではないと思う。しかし、この寒さには耐えられない。
「二日後にもまたあるのよ。お願いだから一緒に来て」
「コウタを紹介してやるから、そいつに頼め。ここに来ている奴らだって、きっと金目当てなんだから市場で売るはずだ。出たら必ず買えるよ」
「でも、前に見た時はすぐなくなっちゃったのよ」
「そんなの買うのは、貴族かなんかだけだろ。コウタはコンパニオンが出してる売りまで全部把握してるような奴だから、頼んでおけば間違いないよ」
「じゃあそれでもいいわ。薄情な男ね」
「馬鹿だな。確率的に考えて不可能なんだよ。こんなところで待ってたら死ぬぞ。今だって生きてるのが奇跡だぜ。そんな体でこんなところに来るのはやめろよ」
「軟弱ねえ」
「寒さは腕力で解決しないぞ」
紫色の唇でよくそんなことが言える。こいつだって体に雪を積もらせてガタガタ震えていたのだ。どうしてあれで死なないつもりでいるのかわからない。結構危ないところだったんじゃないだろうか。
リコールスクロールで帰らないかと言ったら、もったいないから歩きましょうと言われて、歩いて帰ることになった。
特になんの合図もなく、当たり前のようにしてその場にいた20人ほどで氷結の洞窟にいるモンスターを倒しながら地上に戻る。
今回最高ドロップを得たのは、アイスブーツとかいう凍結による行動阻害を防止するブーツを出した格闘家の女で、まるで英雄のように称えられている。
30万でも売れるとか騒いでいたから、そんなものかと思い、俺が直接交渉して買い取らせてもらった。青い革のブーツで俺かクレアが装備するのものだろう。
しかしクレアはセットボーナスのある装備を付けているし、俺はレジスト出来る。だから、あとでワカナに、リカが装備できる足袋にでもしてもらおう。
氷結の洞窟を出たら、それで解散ということらしく、みんな思い思いの方に散らばって行った。なので俺はクレアと共にギルドハウスを目指して歩くことになった。
「でも、凄く高かったから私の手持ちで足りるかしらね。心配になってきちゃった」
「体でも売れよ」
「ふふっ、じゃあユウサクとデートでもしてあげたら、一万ゴールドくらいは貰えるのかな」
「あのな、おとぎの国じゃねーんだぞ。手で抜いたら二千円、口で抜いたら四千円、穴を使わせたら八千円。それをゴールドにしたくらいが現実の相場だぜ」
そう言ったら、クレアは馬鹿じゃないの馬鹿じゃないのと顔を真っ赤にして騒ぎ始めた。俺のことを汚らわしいだのなんだのと言ってくる。
「事実なんだからしょうがないだろ。知識として知ってるだけの俺をなんで悪く言うんだ」
「アンタは心まで汚れきっているのよ。信じらんない。それを聞かされた私の心まで汚された気持ちだわ。どうしてくれるのよ」
「アンタとか言って、また地の性格が出てきてるぞ」
「じゃあ、一万ゴールド払ったらユウサクともデートが出来るの。……あっ、別にデートがしたいわけじゃないわよ」
「俺は売りに出してねえよ」
「そうなの」
「だから今日だって、俺の善意で付き合ってやったんだぞ。感謝くらいしろよな。その俺のために下着を差し出すくらいのこと訳ないだろ」
「それ、私のことを女として見てないみたいで頭に来るのよね」
「お前はあれだな、普段の冗談を真に受けすぎなんだな。真面目すぎてつまらないタイプだ」
「まあいいわ。次は別にあげてもいいわよ」
「マジかよ」
次に俺が引き取ろうと思っているのがウサギのウサコなのだが、体型がクレアと同じくらいだからちょうどいい。ただ問題として、ウサコは「ちわっすー、ウサちゃんだよー」みたいな性格であることが引っ掛かっている。
あんなものに大金はたいてそばに置いておこうなんて、酔狂が過ぎる気がしてしまうのだ。顔だけは間違いなくかわいいのだが。
「なあ、デートでもしてみるか」
こんなことを言い出したのは、なんとなくとしか言いようがない。なんとなくそういう気分になったのだ。
「い、いきなり、なにを言い出すの」
「ほら、そんなことしてたら、俺も人間の女に興味が持てるようになるかもしれないだろ」
「じょ、冗談じゃないわ。して欲しかったらお願いしますって頼みなさいよ」
強がってはいるが、誰が頼んだりするかよとか言ったら泣き出しそうな顔をしている。
「頼むよ。いいだろ」
「そんな頼み方があるかしら。上から目線よね。それで何をするの」
クレアはニヨニヨした笑い顔を見せた。
「そこら辺で飯でも食ってから、店でも見て回ろうぜ」
「いいわ。どうせ今日はすることがないものね」
飯屋に入ると、店内の視線が一斉に俺たちに集まった。俺は裸電球だし、クレアだって立派な装備をしているからしょうがない。
なによりドラゴンを倒したことで、有名になっているのだ。しかしこの視線にも慣れてしまって、特別の感慨はない。
俺は集まった視線に一瞬だけギクリとしてから、開いている席に座った。
俺はフライドポテトにピザ、それにトマトソースのかかった白身のフライを頼んだ。もとの世界じゃ菓子パンだって買うかどうか悩むような懐具合だったのに、こっちの世界では値段すら見ないで注文ができる。それだけでも、もとの世界なんかには帰りたくはないなと思った。
「前からずっと聞きたかったことがあるのよね。ほら、通学バスが一緒だったじゃない」
「へえ、気が付いてたんだな」
「当たり前でしょ。それでいつも、もの凄く辛そうな顔でバスに乗ってたわよね。なにをそんなに辛いことがあるんだろうって、いつも不思議だったのよ。何がそんなに辛かったの」
「学校に行って授業を受けることより辛いことがあるかよ。夜遅くまでゲームしてたから朝はいつでもしんどかったしな」
「そんなことだったのね。すごく気の毒で、いっつも心配してたのよ。損したわ」
「この世界にいる俺は、まるで水を得た魚のようだろ」
「まるで刃物を与えられたサイコパスのようだわ。私のことを傷つけて嬉しそうにしてるもの」
「腕力ふるう相手を与えられたゴリラが何言ってるんだよ。冗談もわからずに暴力で俺を傷つけてるのはお前だぞ。まさか今まで俺にしてきた仕打ちを忘れたわけじゃないよな」
「覚えてるわ。それについては謝ったし、仲直りもしたじゃない」
「仲直りを押し付けてきただけだろ。いや、デートなんだからこんな話題はやめよう」
「そうよ。やめましょう」
顔だけはかわいいからクレアを眺めているのは悪い気分ではない。いかし一瞬で食べ終わった俺とはうって変わって、クレアの食事は遅々として進まない。やっと食べ終えたかと思ったら、イチゴパンケーキを頼み始める。
「まだ食うのかよ。半分は俺に寄こせ」
「食べたいなら自分で頼みなさいよ」
「早く出たいから半分にしてくれって言ってるんだよ」
俺がひと口で半分食べたパンケーキをクレアは5分以上かけて食べた。逆に才能かと思えるほどの遅さである。
一緒に食べようと言い出したのは俺だから、なるべくイライラを顔に出さないようにしたのがいけなかったのだろうか。
「いくらなんでも、努力したらもう少し早く食べられるよな」
「急いで食べたわよ。ユウサクがずっと退屈そうにしてたものね。文句があるなら言ったらいいじゃない。ゆっくり食べてもいいのかと思ったわ」
「どうして、ちんたら食べる必要があるんだよ」
「よくまあデートでそれだけ辛そうな顔ができるわよね。通学バスの時と同じ顔をしてたわ」
「俺は時間を無駄にするのが嫌いなんだよ」
「無駄ですって!? もう貴方に期待するのはやめにするわ」
「いや、だけど俺はなるべく顔に出さないように努力してただろ」
「そう、じゃあ私も次からはもっと早く食べるように努力しようかしら」
「そんな努力しなくていいって。一生懸命食べてるお前もかわっ……」
「なによ。なんで顔が赤いわけ。……ま、まさか可愛かったとか言うつもりだったの!」
「そんな騒ぐなよ。恥ずかしい奴だな」
「なんなの。口説こうとしてるの。何が目的なのよ!」
「だから騒ぐなって、口が滑っただけだよ」
「アンタ、その顔で女の子惑わすようなこと言うのやめなさいよ。良くないわ」
「冗談を聞かせてやっても怒るし、褒めてやっても怒るんだな」
「まさか私をアンタのハーレムに加える気じゃないでしょうね」
「頼まれたって入れてやるかよ」
「二人で何をしているわけ」
いきなりそう声をかけてきたのはアイリだった。こいつも昼飯を食いに王都まで戻ってきたのだろう。テレポートが使えるからどこでも行きたい放題でうらやましい。
「飯食ってる以外のことしてるように見えるか。そろそろ喧嘩別れするところだけどな」
「そう、食べ終わったならどきなさいよ。他の人が座れないじゃない」
俺は耳を引っ張られて立ち上がらされた。
「いってーな。変な音がしたぞ」
「別にそんなんじゃないわ。ちょっとご飯を食べただけよ」
そんな言葉もアイリには通用しないらしく、クレアは睨みつけられていた。
朝は機嫌がよかったのにすっかり不機嫌になって、アイリは俺たちを追い払った。
「そんなに怒ることないでしょ」
「怒ってないわよ」
「どうせ嫉妬に狂ってるだけだよ。もう行こうぜ」
「二人きりでどこに行くわけ」
「ちょっと王都の店を見て回りたいんだよな。お前も来るか」
「二人と違って私は忙しいの」
俺たちは飯屋を追い出された。王都の昼下がりは気持ちのいい陽気だった。俺たちは装備をインベントリに移して店を片っ端から見て回ることにした。どんなものが売っているのか見ておきたかったからだ。
「はあ、体が重くて歩くのがだるいな」
「ホントね。ちょっと食べすぎたわ」
「なあリンゴが売ってるぜ。握り潰せるか、ちょっと試してみろよ」
「嫌よ。服が汚れるじゃない」
「握り潰せる自信があるのかよ」
俺は露店で売られているリンゴを一つ買った。
「ほら、ゴリラって人間の倍も握力があるんだってさ」
「4倍よ。倍なんて大したことないじゃない。ものを知らないわね」
「ふーん」
「ふふっ、いいわ貸してみなさい」
クレアはいきなりゴシャッとリンゴを握り潰した。
このゲームの力ステータスは、近接の攻撃力を上げるだけで所持重量は増えない。つまり筋力を上げるステータスは体力だけである。これは力にステータスを振る侍などがプレートアーマーを来たりしないようにするゲーム的な配慮であると思われる。しかし実際は、体力にステータスを振ってプレートアーマーを着こんだ侍も多い。
「ほら、食べなさいよ。食べ物を粗末にしたら駄目でしょ」
「お前も食えよ。デザートにちょうどいいだろ」
「いらない。もうデザートは食べたし、砂糖が入ってないものはデザートとして認められないわ」
「金の心配もせずに好きなものだけ食えるなんて天国だよな」
「かわいい女の子ともデートできてるしね」
「恥ずかしいなら言うなよ。顔が真っ赤なんだよ。見てるこっちが恥ずかしくなるだろ」
王都の店を見て回ったが、特に何も面白いものはあまりなかった。それにしてもドラゴンを倒したことまでTVで流れたらしく、どこに行っても注目される。
「キャーキャー言われていい気なものね。武器も忘れていったってのにね」
「でも俺がいなかったらお前らだけであんなの倒せないぜ」
「みんなが力を合わせたおかげよ。全部自分の手柄だと思っているの」
「まあな。そろそろ帰るか」
「それで、デ、デートはどうだったのよ」
「人間の女には懲りたよ。二度としたくないね」
「そうなの。私だって二度とじだくないわ」
クレアが強がりながら目に涙をためている。さすがの俺も気の毒になった。
「でも、もうちょっと試してみるのも悪くないかもな」
そう言ったら、わかりやすいほど笑顔になった。
「それに付き合ってあげるかどうかはわからないからね」
何がわからないだと思いながらギルドハウスに帰ってきた。しかしワカナとメイド服の二人がいるだけで他は帰ってきていない。帰ってくるつもりがあるのかもわからない。
晩飯の時間になってやっとアイリだけが帰ってきた。
タクマたちはまだサキュバスの相手で帰りはわからない。やることがなさ過ぎてクレアとデートなんかすることになったのだ。
明日はどうしようと考えながら眠りについた。
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