第13話 ダンジョン②_サキュバスクイーン


 目を覚まし、無事に一夜を過ごせたことに安堵した。水の跳ねる音がするので、誰かが風呂に入っているらしく、ライオンを出しっぱなしだったから俺のMPは枯渇寸前だ。

 体を起こすと隣でモーレットがいびきをかいていた。それ以外のメンツは既に起きて、思い思いのことをやっている。朝風呂に入っているのはアイリだ。

 伸びをすると、まだ体の中に昨日の疲れが残っているのがわかった。そう感じたら、俺も熱い風呂に入りたくなってきた。


 寝袋を抜け出してテーブルに着くと、ワカナが朝食とコーヒーを用意してくれていた。ノミの竹のコーヒーはもう貴重品になっていて久しぶりに見た気がする。半分しかないのは、二人で一つということなのだろう。


「寝袋なんかは、ここにおいておけばいいわよね」

「重たいものは何でも置いとけばいいさ」

 不精なことを言い出したクレアに俺が答えた。

「犬も買ってたじゃない。あれは使わないの」

「うーん、食料とか持たせておくのか。呼び出してる間はMPが回復しなくなるんだよな」

「別に貴方のMPなんて使わないじゃない」


 クレアに言われて、それもそうかと俺はキャリードッグを召喚した。馬鹿そうな顔をした大型犬が目の前に現れる。胴体にバッグが付いていて、そこに何でも入れられるようになっている。

 そこに食料と、昨日出たドロップを放り込んだ。犬に重そうな様子はない。

 ドロップは妖精の羽の他に、誘惑のささやきというサキュバスの尻尾の先に付いたハート形の何かと、強化ストーンという装備品の強化に使う石が出ていた。まだろくにレアアイテムもないので、強化ストーンは使わずにとっておくことにしている。


 アイリが風呂から出てきたので、交代で俺も入った。すでに江戸っ子もぶったまげるほどの熱湯で、ちょっと浸かっただけですぐにあったまった。そしてライオンを消しておいた。

 俺がいなかったら、こんなものを呼び出しとくだけでも苦労するはずだ。結構なMPを消費する。まあ、魔力11の俺にとっては何の負担もない。

 風呂から出たら、ちょうどモーレットが朝飯を食い終わったところだった。


 そうなると、次にやることはサキュバス退治しかない。昨日は紫のおっぱいが夢にまで出てきたのだ。今だって、悶々としすぎて頭が変になりそうだが、それでも、それをするしかないのだからどうしようもない。

 犬がちゃんとついてくることを確認しながら、俺たちは昨日のホールに出た。


「ふぁーあ、さて始めるか」

「そうね、いくわよ」


 クレアが先頭を歩き始める。それで否応なく昨日の続きが始まった。ランクが高いだけあって、サキュバスの経験値はそれなりにある。魔法書が落ちているので、ドロップも悪くない。

 やるしかないよなと思いながらクレアにいていくと、さっそくサキュバスが現れた。

 小さいでもなく大きすぎるでもない、程よいおっぱいが目の前に現れて、一夜を挟んだおかげでまたギクリとさせられる。こちらに笑い掛けながら、サキュバスは襲い掛かってきた。俺は目を瞑って剣を振り下ろした。


 こんな作業をやらされるのは、精神的につらい。

 午前中を終える前に、俺とモーレットはついにランク24を達成した。アイリたちも17まで来ているので、もうすぐ次のスキルである。

 俺が覚えたのはエンフォースドッジで、通常攻撃を50%の確率で強制的に回避できるようになるスキルだ。これはスキルでの攻撃に対しては効果を発揮しない。モーレットはペネトレーションバレットで、俺と同じく50%相手の防御力を無視できるようになる。どちらも使用することで効果が発揮される。


 そのあとで、アイリたちがランク18になって昼飯休憩にすることにした。アイリとワカナはクラスⅤの魔法が解放されて、クールダウンリダレクションのパッシブスキルを得た。

 リカは身代わりの術を覚えた。攻撃を受けると丸太をその場に残して、本人は離れたところに現れるというスキルだ。このスキルは魔法に対しては効果を発揮しないので、今のところは特に必要がなさそうなスキルである。


「今のところは順調にやれているわね」

 昼飯を食べながらアイリが言った。

「まだリカが安定してないけどな」


 リカは敵を引き連れてくるときに、たまに瀕死になっている。サキュバスの魔法は強力なので、少しのミスでも、そんな状態になる。もしサキュバスが強力な移動阻害付きの魔法を持っていたら、そのたびに死んでいることになる。


「もう大丈夫、コツは掴んだ」

 リカが仏頂面でそう言った。

「お前はいつも口だけだよな」


 俺は全員の様子を確認した。クレアの装備の耐久値が思った以上に減っている。予備の装備も持ってきた方がよかっただろうか。いや重量的に考えてそれは無理だっただろう。途中で修理すると耐久値の減りも緩和されるが、モーレットはまだそのスキルを得ていない。

 このゲームでは一定の耐久値を割り込むと、その装備は壊れて消えてしまう。耐久値が減ってくると、見た目にもわかるようにゆがんだり曲がったりしてくる。


 布の装備などはすぐに壊れるが、鉄の装備は耐久値が高く設定されている。それでも、クレアがほぼすべての攻撃を受けているので、減り方も激しい。


「リカの服は、まだ耐久値が残ってるのか」

「む、ちょっとヤバいかもしれない」

「はは、お前はお色気担当のくのいちにでもなるしかないな」

「壊れたらどうするの」

「そのままやるしかないだろ。どうせ装備なんて大して必要ないしな」

「はずかしい」

「もうみんな見飽きてるよ」


 俺の言葉にリカはちょっとむっとしたような顔になる。これで少しは真剣になるだろうか。

 俺の防御力は52、クレアは102、リカは18である。今更8かそこら減ったところで大差はない。

 しかし暗闇で視界が悪いから、敵を見つけるのは大変だろう。

 ワカナはマイペースでやっているし、特に気になるところはない。アイリは洞窟暮らしに不満がありそうなこと以外は問題なし。モーレットはいつも通りだ。


 午後もドーム状の広間をぐるぐると回っていたら、中央の方が騒がしくなった。俺たちは最初から三時間くらいかけて、このドームを一周するというのをずっとやっている。だから真ん中の方は、まるで手つかずだ。


 敵が溜まるとまずいから、そっちも片づけておこうというような話になった。クレアを先頭にして歩いていくと、敵の姿も見えないのにピンク色の煙が足元から噴き出してきて、いきなりクレアのHPが真っ白になる。

 俺も攻撃を受けたらしく、レジストに成功しましたという表示が出ているにもかかわらず、HPはミリしか残っていなかった。


 すぐさま、ワカナとアイリが回復魔法を連発して、俺たちのHPはもとに戻った。

 ゲームがバグったのかと思っていたら、ピンク色の靄の中で一回り大きなサキュバスが目の前に現れた。そこにクレアのメイヘムが入る。

 表示にはサキュバスクイーンとあった。

 ワカナもアイリもすべての回復魔法がクールダウンタイムに入っている。やばいんじゃないかと思うが、サキュバスクイーンはクレアに殴りかかったのみだ。


 その攻撃力は大したことがなく、アイリがクレアにポーションを使っていたが、その必要もないくらいで普通に倒すことができた。

 まさかのボスだった。それにしても、あの攻撃力はとてつもない。最初の魔法攻撃は、俺とクレアだったから何とか耐えたようなものだ。クレアはいきなり八割くらいのHPを削られていた。


「なんかスゲーアイテムがでてるぜ」


 モーレットに言われてインベントリを開くと、サキュバスクイーンのランジェリーというものが入っていた。それに、クラスⅣ魔法書、フレイムストライクが入っている。


「うお、クラスⅣの魔法書だぜ」

「きゃあ、凄いじゃない!」


 俺の言葉にクレアが飛び上がって喜ぶ。

 サキュバスクイーンのランジェリーは、防御力1にロスト耐性に強化可能のタグまでついていた。そして魔法強化+5までついている。その+5が%なのかなんなのかわからないが、かなり強いことは間違いない。俺たちが初めて手にしたレア装備だった。


「すげーな。これはワカナかアイリの装備だな。めっちゃ強い装備だぜ。まあワカナかな」


 これまでの感じから、ワカナの回復力がまだ足りていない。なのでこれは彼女が装備すべきものだろう。俺はインベントリの中からサキュバスクイーンのランジェリーを取り出した。

 うーん。なんと表現したものか。


「紐だよな」

「紐よね」

「紐だぜ?」

 覗き込んだクレアとモーレットが反応に困っている。

「ほらワカナ、装備しろよ」

「嫌です」

「いや、嫌とかじゃなくてさ。結構強い装備だから我慢してくれよ」


 ワカナは首を横に振って、言うことを聞こうとしない。

 仕方ないので俺は彼女の手を取ると、それをクレアに握らせた。


「これは仲間のために必要なことなんだ、クレア。あそこの横穴に連れて行ってやれ。おい、モーレット、そこでこれを着せてやれよ」

「わかった」


 クレアは言われた通りに、ワカナの手を掴んで横穴の中に入っていた。モーレットもさっきの下着を手にしてそれに続いた。しばらく、ワカナの抵抗する声と叫び声が聞こえて、静かになったらモーレットが出てきた。

 モーレットの顔が少し赤い。


「すげーぜ。あそこの部分が、パカッと開いたままになるんだ」

 モーレットは真顔でそんなことを言った。俺が意味を分からずにいると、手でパカッと開いたままになってる様を説明してくれる。

「パックリ開いて、穴の中まで丸見えになってるよ」


 さすがの俺も顔が熱くなるのを感じる。しかし、着せるように言ったのは俺だから今更引き返せない。必要なことだったと自分に言い聞かせる。

 それにしても、このゲームを作ったの奴は、神だか悪魔だか知らないが、頭がおかしい。

 しばらくして真っ赤な顔で、目に涙を浮かべたワカナが横穴から出てきた。


「まあ、ローブがあるんだし、見えるものでもないからさ。スカートも長いし大丈夫だろ」


 なんと慰めたらいいかわからない俺は、そんな言葉を並べたてる。ワカナはぷいっと俺の言葉を無視した。そして、暗闇の方を見ている。

 そんなワカナの様子を見ていると変な想像をせずにはいられない。サキュバスの相手だけでもつらいのに、これ以上悶々とさせるのは本当にやめてほしい。

 ワカナは黙ってついてくるので、しばらく放っておくことにした。


 そのまま何時間も狩りを続けて、俺たちはキャンプに戻ってきた。

 ワカナはすぐに目隠しの裏で着替えたようだった。そして俺にお湯を入れるように要求してくる。なので俺はライオンを召喚した。二つ召喚しておくのは辛いので、犬の方は召還を解除した。

 当然のように荷物は全部床に落ちてしまったので、一ヶ所にまとめておいた。


 しばらくするとワカナは風呂場で洗い終わったサキュバスクイーンのランジェリーを、隅の方で裁縫スキルを使っていじり始める。

 それが終わると、テーブルにやってきて食事を始めた。


「広がらなくなるように出来たのか」


 そう聞いた俺は、ワカナに思い切り睨まれた。

 そしてリカに馬鹿ねと言われてしまった。


 それから風呂に入り、昨日と同じく眠りについた。サキュバスはランジェリーの他にも、強化ストーン五個、アイスナイフという行動阻害の効果付きのナイフ、フレイムストライクの魔法書一冊、ミスリルの原石三個、エメラルド三個、そして20000ゴールドを落とした。

 魔法書はアイリに覚えさせてある。サキュバスクイーンは美味しすぎる。クレアのHPにはまだ余裕があったし、これは継続して倒したい。


 それから三日ほど、朝から晩までひたすらサキュバスを倒し続けた。俺とモーレットのランクは28まであがり、アイリたちは23になった。クレアもようやく31になった。

 ダンジョンの中にずっといるので、時間の間隔もないし、寝る時間と休憩以外はずっと狩りをしているので、なんだか変な頭痛にも悩まされるようになった。クレアやモーレット、リカは普通にしているが、ワカナとアイリは憔悴した顔をしている。

 クレアの装備はまだなんとかなっているが、リカが装備しているボンタンのような忍者服のズボンはそろそろ耐久値がなくなりそうである。


「そろそろ、一旦上に戻らないか。かなり稼げたはずだぜ」

「でも、もう一度ボスを倒したい」

「だけど、あれ以来出てないだろ。いい加減に太陽の光が見たいよ」


 リカと無駄話をしながらも、俺は剣を振り続けている。この戦いにもかなり慣れて、話しながらでも戦えるようになっていた。

 リカが引いてきた敵を俺たちが倒し終わると、彼女はまた闇の中に消えていった。

 そしてまた、リカが瀕死になりながら敵を引いてくる。それももう見慣れた光景で、特に驚きもしなかった。だけど今回は忍者服の下がなくなってパンツが丸出しだった。


「お前もお色気担当が板についてきたな。まだ続ける気力は残ってるか」

「他に人が来たりしない限りは、まだ続けてもいい」

「なるべく見ないようにするのがマナーだと思うわよ」

 リカのパンツを指さして笑っていたら、クレアにそんなことを言われた。

「アイリとワカナはもう帰りたいよな」

「ま、まだ頑張れるかな」

「もう少しだけなら大丈夫よ。貴方は不平ばかりでだらしないわね」


 なんでそんなにやる気があるんだよと思いながら、俺は何も考えないようにしようと努めた。真っ暗闇に囲まれているとブラックホールの中にでもいるような気がしてきて、それがなんとも心細いのである。きっと女どもは想像力が足りてないから平気でいられるのだ。

 なんか暗闇に囲まれていると、足元すらふわふわしてくる。

 サキュバスの胸や尻にも見慣れて、何も感じなくなっていた。


「そういやさ。こいつらのおっぱいって、クレアのにそっくりだよな」

「なっ!」

「へー、マジかよ。そうなんだぁ」

「ちょっと変な目で見ないでよ。この変態!」

「モーレットは、いつの間にそんなもの見たんだよ」

「昨日、クレアが風呂入ってるときに覗いたんだ」

「やめなさいって言ってるでしょ!」


 午後に入って、そんなことを話している時だった。ドームの中央がまた騒がしくなる。やっと来てくれたかと、俺は飛び上がりそうなほどうれしかった。これで帰れる。


「ワカナ、マジックバリアを俺とクレアにかけろ。リカは周りの敵を引き離してくれ。回復魔法のクールはあがってるか」

「使えるよ」


 リカは俺が言うまでもなく、すでに動き始めていた。ワカナからの魔法がかかったところで、俺たちは音のした方に行く。すぐにピンク色のガスが足元から吹き上がった。

 俺はレジストに成功した。クレアのメイヘムが入ったので、現れたサキュバスクイーンに斬りかかった。最初のダメージはなんなく回復できた。チェインリーシュが入ったところで、アイリの魔法も一通り放たれた。

 俺が斬りかかると、サキュバスクイーンは簡単に地面に倒れた。


 すぐにドロップを確認すると、フルヒールの魔法書にマステレポートの魔法書が入っていた。あとはライトニングストームの魔法書とダイアモンド、エメラルドが三個、それにゴールドだ。

 そのあとで、リカが引いていたサキュバスも無事に倒しきった。


「はあああ、やったああああ。さあ帰ろうぜ」

「そうね、私も満足」

 リカもようやくそう言ってくれた。

「それじゃ、キャンプに戻りましょう」

 一番やる気だったクレアもそう言ってくれて、俺は心底ほっとした。

「じゃあフルヒールはワカナで、マステレポートはじゃんけんでもしてくれよ」

 じゃんけんの結果、アイリが覚えることになった。


 それで俺たちはキャンプに帰り、持ってきたものをインベントリにしまった。重たいものは全て犬の背中に入れてしまった。

 帰りはボスもいるし、ロストが怖いのでリコールスクロールを使う。


「モーレット、短パン貸してやれよ」

「ああ、そうだったな」

「危ない。忘れてた」


 モーレットはクロークの中に手を入れて、履いていた革のショートパンツ取り出すとリカに渡した。リカがそれを履いたところで、俺たちはリコールスクロールを破いた。

 魔法が発動すると景色が一瞬で色を取り戻した。飛んだ先はセルッカの街の噴水前だった。

 みんなが感動の声を上げる中、俺はもう早くベッドで休みたくてしょうがなかった。


「明日と明後日は休みで、その後のことは後で決めよう」

「さんせー、アタシは帰って寝るぜ」


 それで俺たちはギルドハウスに帰った。俺はもう何も考えずにベッドに横になって寝た。

 次の日に起きたのは、昼前くらいの時間だった。起きてリビングに行くと、アイリとワカナが疲れの残る顔でご飯を食べていた。さっき起きたばかりなのだろう。

 俺はシャワーを浴びてから、何飯だかよくわからないものを食べた。たぶん昼飯になる。

 食べていたら、外からリカが戻ってきた。


「出た魔法書は売ってみたか」

「一度並べたら、一瞬で全部売れた」

「凄いな。それならNPCと同じ値段でもいいんじゃないか」

「NPCと同じ値段で売れた。多分もっと高くても売れる。値段はどうしたらいいの」


 聞けばNPCの雑貨店から魔法が売り切れたらしい。それで、並べた先から売れていったそうだ。流通が少ないから、需要が溜まっていたんだろう。


「コウタあたりに聞いてみるといいかもな。いつも市場にいる奴なんだけど知らないか」

「知ってる。最初の頃はお世話になった。確かに、彼に聞いてみるのがいいわね」

「強化ストーンはワカナのあれに使ってみるのがいいんじゃないかな。ロスト耐性もあるし、何よりレアだしさ」

「うっ、そ、そう……」


 俺は出ていた強化ストーンをワカナに全部渡した。それで強化すると、全部使って+3サキュバスクイーンのランジェリーになったそうだ。三十個近く使ってそれなら、+1か+2くらいまでにしとくのが現実的なようである。出来たものは見せてくれなかった。

 ロスト耐性があるといっても耐久値があるから、そんなに長く使えるわけじゃない。それでも下着はほとんど耐久値も減らないから悪くないはずだった。


 防御力は7まで上がり、下着の中では破格の性能になる。魔法強化の数字は変わらなかった。本当ならクレアの装備に使ったほうがいいだろうが、今のとこ彼女の装備は使い捨てレベルのもだからもったいない。

 夕方にはすべてのアイテムが売れて、今回の儲けは全部で75万ゴールドとなった。六人がかりで何日もかけてだから、多いのか少ないのかわからない。

 そこで俺は会議を開いた。


「この金をどう使ったらいいか。意見はあるかな」

「私は特に、今の装備で問題ないかな。新しい杖は欲しいかも」

「私も杖は欲しいわね」

 確かに、ワカナとアイリに杖は欲しい。

「じゃあ、クレアの装備は買いなおさなきゃならないから、それは買うとして、杖二本と、忍者刀、それに銃も買うか、残りは少しだけ分けて、あとはプールしとくってことでいいか」

「貴方はどうするのよ」

「俺はもう、魔剣くらいじゃないと攻撃力が上がらないしな」

「そう、貴方がそれでいいなら、私は何もないわ」

「クレアもそれでいいか」

「いいわよ」


 買うものが決まったので、俺はリカと市場通りに行った。

 まずは月影という攻撃力24の忍者刀を買う。中忍の忍び装束も安かったので買った。


「ショートパンツだわ」

「まあ、そういうコンセプトなんだろ」

「そういう趣味なの」

「なわけねーだろ」


 そしてガーディアンズプレートメイルというのがセットで18万だったので買った。小手とブーツもついている。耐久値も高くて、防御力もセットで80ある。そこに防御値21のナイトシールドも買った。

 これでクロークまで入れれば防御値はかなり余裕が出る。まあ物理防御値なので、しばらくはサキュバス相手にやるつもりだから、あまり高いものを買っても意味はない。


 次に、クールダウンリダレクション10%とMP回復+5の付いたマナスタッフを一本。

 そして、魔法ダメージ+10とMP回復+5の付いたブラックウイザードスタッフ。

 そして、ピーコックという攻撃力58の銃。

 これだけ買って36万ゴールドだった。


 俺の使っているロングソードの攻撃力が48なのに対して、街で売ってる一番高い魔剣が、攻撃力87のカーバンクルブラッドソード、54万ゴールドだ。しかもHP吸収までついている。ドラゴン系の魔剣にはHP吸収が付くようだ。

 プール金は必要だし、買える額じゃなかった。


 ギルドハウスに戻り、みんなに二万ゴールドずつ配り、残りはプールすると宣言した。

 新しい装備にアイリが一番喜んでいた。今まで使っていたゴボウみたいな杖は気に入ってなかったらしい。クラスⅢまでの魔法もコンプリートして、クラスⅣも二つ覚えたのだから、もう十分な戦力だ。

 ワカナも回復魔法をほとんど覚えたので、もう不安はない。

 後はリカが安定してくれたら、ほぼ完成である。

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