解説:第一夜 ししどの晴天
BGM「ししど晴天大迷惑」
構想時点:
最初、この話はBGMのようなドンチキ系はちゃめちゃSF(すこし ふしぎ)怪奇ファンタジーになる予定でした。
妖怪コンビが怪異トラブルに巻き込まれてドッヒャー!解決!みたいな短編連作の感じを想定していたのです。
なので、この『獏』と二人の若者の話は無く、これは次話の雲児と空船がドライブしてるときのBGMでした。
(ドッヒャーまじかよ!なんでこんなクソ長ェ暗い話になるんだよ! いつもそうです。なんでこんなことに。ふしぎ。)
季節は夏。
甲子園の中継がラジオから流れる演出を考えていたのに、いざやると出来上がったのは夜の居酒屋なので、甲子園やってません。おまえは阿呆やなぁ……。
本編:
天女と人魚の調停を行うためにやってきた獏と、『人魚に関連するが、限りなく他人』という二人の邂逅です。
プロローグであり、エンディングAでもあります。
テーマは『矛盾』『境界』。
『ししどの晴天』というタイトルも、晴れてるのに濡れてる、という一見しての矛盾。相対する要素がぶつかった状況を指してます。
ただ、『天気雨を指している』と解釈をすれば、それはもうただの自然現象です。
解釈によって変わるこのタイトルは、作品全体を表すものとして、作品自体のタイトル候補でもありました。
もちろんこのタイトルは元ネタ楽曲からの引用でもありますが、その楽曲自体が「細けえこたアいいんだよ!楽しくいこうぜ」みたいな感じの歌詞なので、酩酊状態で怪談をしているこの状況にはあっているかな、と思った次第。
作中で語られる『クモジの話』『橋の能面』『黄泉の船』という三つの『境界』にまつわる話をするうち、若者二人は知らずのうちに人魚の生末を決める審議の中に放り込まれております。
彼らは矛盾の中間、狭間で、『どちらを選ぶか』を決めさせられているのです。
BGMと雲児:
♪燦々照らす太陽背負って 今日もいい天気!
(人魚が泣いたら雨が降る。雲児が泣いても雨が降る。)
♪遊びに行こうぜ 今日も間違い侵して 狭い隘路を通り過ぎ行けば……
(空船を旅に誘う暗示。雲児の道中(じんせい)は『間違い』ばかり。隘路の先にあるのは……)
♪全部どうにでもなれ メソメソ歩いて珍道中
♪どんな顔してみても無様に笑える真っ白け
♪散々痛い目に目に遭った毎日を消して
♪もう二度としょうもない嘘なんてないように いらんもんから全部捨てていけ……
あれだけ思い出したかった記憶は、けっして良いものではない。
大人の体を持っている空船への羨望、妬み、そしてその記憶を自分だけが持っている苦痛……。
どうして空船も思い出すように手引きをしたのか、という雲児の心境については、読者皆様に推理していただきたいところなのですが、ただ言えるのは、雲児の想いもまた、矛盾し、境界にありますよ、ということです。
でもまあ、最終的に、雲児は捨てるどころか、『巽』という仇まで拾うことになりましたがね。
けっきょくそういう奴なんですよ。雲児ってやつは前世からね。
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