第43話「第二章」その29
『堀川河口に到達。水門に目視での異常なし、内側に進入した個体は全て射殺できた模様』
名古屋市中区三の丸・愛知県庁本庁舎内に設置された災害対策本部。自衛隊員からの報告がスピーカーを通じて本部室内に響いた。
「新堀川など他の河川のチェックが済めば、状況終了となります。知事、会見の準備を」
「ああ、了解した」
「にしても何故、ここ名古屋に来たんでしょうね。しかも地震発生直後という最悪のタイミングで」
「さあな、本人に訊いてくれ」
そう副知事と会話を交わしながら、永田愛知県知事は会見場の方へ向かっていった。
名古屋市中区三の丸、愛知県庁本庁舎記者会見場。既にマスコミの記者達は集まっており、その開始を待っている。
「状況、予定通りに終了しました」
「そうか」
秘書からの報告を受け、永田愛知県知事が動き出す。
知事が姿を見せると、新聞社のカメラのフラッシュが焚かれるのを皮切りに、記者達も緊張を高めめる。
「愛知県知事の永田です。この度の二〇××年愛知県沖東海地震及び南海地震の被害に遭われた皆様に、まずはお悔やみ申し上げます。──さて、当地震の発生直後に確認され、その後名古屋市付近に上陸した海洋生物について報告致します。つい先ほど、陸上自衛隊守山駐屯地に置かれました東海統合運用本部より、陸上自衛隊による対処作業の第二段階・堀川口防潮水門内側を含む上陸個体の掃討を完了したと連絡がありました」
何故か新堀川側に進入する巨大ウナギは皆無だったため、事態は比較的早く終了している。念のため想定だけはされていたが。
「また愛知県警より中川区平池町・ささしまライブ24地区にて行っておりました同作業を完了したという報告も入っております。名古屋港水面上に確認される個体群についてはまだ未着手でございますが、第四管区海上保安本部および海上自衛隊による同種の対応を依頼しており、体制が整い次第開始すると返答を受けております」
実際には第四管区だけでなく関西空港のSST(特殊警備隊)など銃器戦闘に優れた人員も投入されるが、主力はあくまで第四管区なのでそう表現された。海上自衛隊は横須賀地方総監部が中心だが、大型艦艇は人員や災害物資の輸送に使うのみで直接戦闘には加わらない予定である。
「今回は自衛隊法施行以来初となる治安出動要請を致しましたが、その目的にかなったよい働きをしてくれたと考えております。無論警察官達も、地震発生直後で降雨があるという環境の中笹島では奮戦してくれました。この後は地震に対する対応に全力を注ぐことになりますが、県民の皆様もどうかご協力をお願いします」
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