第41話「第二章」その27

『愛知SATワン、確認できる個体を全て撃破した』

『愛知SATツーも同様』

「大阪指揮了解」

 名古屋臨海高速鉄道西名古屋港線(あおなみ線)ささしまライブ駅コンコース。「大阪指揮」こと、笹島現地指揮本部は静まり返っていた。残るは下流へと確認を進める部隊からの報告と、「名古屋指揮」こと愛知県警現地指揮本部からの連絡を待つのみである。

「警視庁からの応援、向こうに到着したそうです」

「健闘を祈る、と伝えておいてくれ」

 自衛隊の主力が市民団体によって妨害されたため、警視庁機動隊は結局そちらへと回されることになった。治安出動下であるため自衛隊で対処することも可能だったが、それは世論を配慮しての措置である。

「部隊、中川閘門に到着したそうです」

「状況は?」

「ええっと……しばしお待ちください」

 藤田はふっ、と溜め息をついた。そこまでたどり着くまで連絡がなかったということは、裏を返すとそこまでの区間において新たな個体は確認されなかったということでもある。

 少し間が空いて、連絡員は戻ってくる。

「運河面に確認された個体はなし、水面状況が悪いので詳細は不明だが、名古屋港側には数体いる模様」

 厳密に言えば中川運河も名古屋港の港湾区域に入るのだが、彼は要するに海側と言うことを指していた。津波により海底に堆積した砂やヘドロが拡散し、水中の様子は確認しづらくなっている。

「海は海保や海自の担当だからな……。とりあえず監視を続けるように連絡」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る