第39話「第二章」その25
名古屋市中区と中村区の境界(西区も近いが)を流れる堀川。名古屋駅から東に延びる桜通の橋・桜橋や伝馬橋を南に行き、地下鉄東山線が地下を通る錦橋付近に部隊が差し掛かった所で、陸上自衛隊第三十五普通科連隊の先遣部隊は巨大ウナギの姿を水面上に確認した。
「対象視認。発砲許可を司令部に求めよ」
指揮官が通信担当に命令する。敵側に決定的な攻撃手段がないと観察の結果推測されたため、銃などを使用する際は師団司令部(今回の場合は実質統合運用本部だが)の許可を原則得てからの実行とされた。もちろん実際に支障のある対抗手段を持ち合わせていないかの調査も進められており、尾頭橋での機動隊との交戦で死亡した個体に対し研究者による解剖調査が行われつつある。
「司令部に確認、許可出ました」
「よし。──構え!」
両岸に分かれて南下していた部隊が公道から水面近くへ下りる。そして持っていた八九式小銃を水面へ向け、照準を合わせる。
「撃て!」
指揮官は同時に右手を上げる。そして銃数丁の小銃が、火を噴いた。
直後、水が盛り上がる。出現したのは黒く、細長い、巨大な生命体。それは苦しむように暴れ出し、突然水面に突っ伏した。
「次弾装填!」
しかし指揮官はその成果の喜びを表に出すことなく、次に備える。まだまだ先は長いと覚悟していたからである。
「次の個体、確認しました! 現在橋の下付近」
双眼鏡を持っていた隊員が次の目標を報告する。
「構え! 目標は現在錦橋付近を航行中!」
全員の照準が合ったのを確認し、指揮官は再び号令。
「撃て!」
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