第23話「第二章」その9

「なるほど、市民団体が橋を封鎖していると」

 その情報は、偵察隊を通じて東海統合運用本部に伝えられていた。

「説得、は難しいでしょうね」

「自衛隊車両は緊急車両でもあるから、警察に頼めば──」

「いや、今は警察も第二機動隊を出してるから、守山署にそんな余裕があるとは考えにくい」

「しかし矢田川を渡らなくちゃどうにもなりませんよ」

 ベースとなっている第十師団司令部の幹部達は積極的に意見を交わし始め、オブザーバー参加の大学教授達は話に置いてきぼり。ただ一人を除いて。

「ガイドウェイバスを使うなんて、どうでしょう?」

 名古屋理科大学教授、睦月 新次教授である。専攻は深海生物学だが、趣味の範囲で交通にも詳しい。

「確かに隊員の移動は可能だ。しかし、大曽根から現場まではそれでもあるぞ」

 幹部達が反応してくれたのが嬉しかったのか、続けざまに

「なら、名二環なら車両も大丈夫です」

 さらなるアイディアを口に。大学教授としては若手ということもあり、他の教授達の、専攻分野以外には関知せずといった態度とは一線を画した興奮の様である。

「だとすると送り込める──いや、NEXCOに一度当たる必要があるし、向こうに対しての見せ駒も必要だな。もちろんその隊も出来れば使いたいが」

「ならいっそのこと、橋を架けちゃえば?」

 睦月の方は、もうタメ口になっている。

「そうか。それならいけるな」

 反応したのは現場での指揮権を与えられている川越 昭光。自衛隊全隊出動という大博打であやうく大目玉を喰らいそうだったが、政治の混乱で危うく逃れていた。

「春日井から自走架橋装置を持ち出すか。施設大隊は可能条件を提示、偵察隊はその条件に合致した場所を調査するよう命令を出せ」

「ええ、了解です」

「あと名鉄瀬戸線やJR中央本線が使えるかも確認してくれ。最悪、隊員だけでも運びたい」

「それは、県庁を通じて」

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