第11話「第一章」その10
『緊急地震速報です。三重県沖で地震。東海、和歌山県、奈良県は強い揺れに警戒──』
『緊急地震速報、愛知県西部、震度五弱、S波到達まであと──』
愛知県警本部、会議室。NHKラジオ第一放送が災害報道を中断、また会議室内に設置された高度利用者向け情報受信装置が「余震とは違う」緊急地震速報を伝えた。しばらくすると室内でも揺れが感じられるようになる。災害警備本部の本部長となった成瀬はそれを聞き、体感し、頭の中の応援隊数をすぐに組み替えた。それをしつつ、目は尾頭橋上空を飛ぶ県警ヘリからもたらされた映像の方を向いている。
一方、成瀬の周囲以外は混乱状態。時間と共に警戒対象域が拡大、宮崎県まで達する。それが示すのは「南海地震の発生」。
「第一中隊の一部を尾頭橋に割く。連絡してくれ」
「はい、了解です」
成瀬はただ、冷静。「現状を打開するのに未来の部隊に関することはあまり関係ない」からだ。
「中部管区と第二機動隊は?」
「管区は準備完了、第二はまだです」
「なら管区は笹島へ派遣だ。堀川を遡ってきた以上、中川運河経由で到達することは十分にあり得る」
「では連絡します」
「──警備課長代理、状況が判っているのか!」
そんな「まるで気にしていないような様子」に、誰かが怒鳴る。しかし成瀬は動じない。
「ええ。──近畿及び四国からの応援は厳しいでしょう。加えて名古屋市南部の浸水域は拡大、巨大ウナギも北上する可能性が」
成瀬は的確に答える。さらに
「雲の様子からして雨が降る可能性もありますから、余計厄介です。──誰か、予報をチェックして」
「先程から気象台に問い合わせてますが、通じません」
名古屋地方気象台には先程の地震で問い合わせが殺到していた。実際に地震情報を分析・発表しているのは気象庁本庁で、地震については情報の中継役でしかないのだが。
「テレビでいい」
「テレビは特番ばかりじゃ……」
「データ放送があるだろう?」
「──了解」
成瀬はため息をつく。
「さて、第一中隊はどうなっているかな」
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