第7話「第一章」その6
名古屋市港区、愛知県警港警察署分庁舎(旧水上警察署)。名古屋港水族館や南極観測船ふじ・名古屋港ポートビルなどのレジャー施設が集まるガーデン埠頭の防潮堤沿いに位置しており、高潮被害防止のため高床式庁舎でもある。この庁舎に入っている船舶課の課長、桐野 英忠はただ海をじっと眺めていた。
港署と水上署が統合されたことにより、こちらに課本体を置くのは船舶課だけである。他の課は分室さえ置いているものの、現在は本庁舎へ出払っていた。船舶課も県警保有の警備艇を使い、海上保安部と合同で避難の呼び掛け及び「例の件」の調査に当たっている。
すると部屋に置いてある電話機が鳴り、桐野はそれを取った。
「はい船舶課」
『こちら港署災害対策本部、県警ヘリが伊勢湾シーバース(知多市沖合にあるLNGの陸揚げ施設)付近で第一波を視認した。高さは施設が水を被る以上。──名古屋港高潮防波堤の地震被害は見た目からして軽微と推定される』
「……了解」
高潮と津波ではそのエネルギー量が大きく異なるため、伊勢湾台風を機に作られ老朽化が激しく、さらに地震による影響を受けた高潮防波堤で被害を防ぐのは困難である。だがしかし、多少なりとも被害軽減には効果がある。
しばらくして名港トリトンの一つ、名港中央大橋に派遣されていた課員から無線が入った。
『──津波はポートアイランドを飲み込みました。巨大ウナギの一部個体も打ち上げられています。残りの個体は……津波に乗り北北西に移動中』
「それは──まっすぐこちら、ガーデン埠頭に向かっているってことだな」
『はい……』
県警の戦いが、ここに始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます