さらに落ちる

もうずいぶんと長いこと落ち続けている。

ここには「時間」という観念がないのだろう。

なにしろお腹もすかないし、のども渇かないのだから。


この「世界」では落ちることだけが唯一の行為なのかもしれない。

終着点があればいいのだが、果たしてそこはどこなのだろうか。


連続している暗闇の中を落ち続けていると、見えない自分の存在さえもあやふやになってくる。

なるほど、確かに身体の各部はきちんとあるべきところにある。

しかし、この終着の見えない暗闇の世界で、ましてや何もすべき事のないこの世界で、身体は何の役に立つのだろうか。あまりに不安定だ。


今、確かにここに存在しているのは、思考している「自分」という存在だけなのだ。


奈落があるのなら、その底に辿り着いてみたい。

早く、もっと早く答えがほしい。


もはや、幾星霜、落ち続けているのかわからない。




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