変化

それでも、例外というものは何事にも起こり得るのだ。

それは暗闇の中を落ち続け、麻痺してしまった感覚に「光」がさした瞬間でもあった。

「光」といっても物理的な明かりではなく、それは物体として下方に迫ってきたのだ。

正確にいえば、迫っていたのは落ち続けている自分の方なのだが、「光」がさしたことに変わりはない。


それは見紛うことなく、かつて自分がこの暗闇に一歩踏み出す前にいたベッドであった。

下方にそれを認識した刹那、既にベッドははるか高みにあった。

何もできずに素通りしてしまったのだ。

猛烈な速度で落ち続けているということすら忘れていた。

頭上のベッドはもう見えなくなった。


どうやら奈落の底には辿り着けず、何の事はない、暗闇の中を落ちながら元の地点に戻ってきただけだったようだ。


長いこと(本当に長いこと)何も感じなくなった感覚に変化が訪れた。少しだけ何かを感じることを思い出した。残念なことにその感じにあった名前はとっくの昔に忘れてしまった。


もう一度その例外の地点に巡り合う事はあるのだろうか。

例外はあくまでも例外だったのではないか。


そして、もう一度その例外に合った時に自分は手を伸ばして元の世界へのきっかけをつかむ事ができるのだろうか。

そもそも、手を伸ばそうと思うのだろうか。


何も変わらない暗闇を落ちているだけの自分と、何も変わらないベッドの中にいるだけの自分に何か違いがあったのかは、今となってはもうわからない。




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