47. 読み
◇◆◇
「三条さん、一番よくない展開になりそうよ」
如月カイとのテレパシーが途切れ、遠隔監視もできなくなった四宮シノアは、三条カノンに現状報告をする。
「結界張られたの?」
「張られたわ」
三条カノンは、一番よくない展開というのを理解していたようで、すぐに結界の言葉へと考えが結びついた。
結界が張られている状態であれば、もちろんテレパシーもできなければ、遠隔監視もできないので結界内で何が行なわれているのもわからない。
無事でいてほしい。ただただその思いだけが三条カノンの脳裏によぎる。
「四宮、体力は大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。遠隔監視には時間つかったけど、テレパシー自体はそこまで使っていないので、想定の範囲内の消費のはず」
「OK、それじゃ、私達も化学実験室にいきましょう」
化学実験室にて
扉を開けると、誰もいない。結界は一種の異世界空間であるから、同じ”場所"ではあるが、仮想異世界に飛んでしまった如月も七海もいないのは当たり前である。
「四宮、私が七海の結界内に入るから、結界を破ってもらっていい?」
「三条さん、受け入れられない結界内に入ることのリスクはもちろん覚悟しているわよね?」
「もちろん。そこまでを一応受け入れた上で、四宮と役割分担したんだから」
「三条さん。。。。。」
「四宮、やめて。前回、如月を助けた時に、どこかで借りを返したかったの。だから、このタイミングは上等」
しばし、四宮シノアは何かを思うような態度をとりつつも
「わかったわ。それではいくわよ」
「よろしくね」
四宮シノアと三条カノンは一度、化学実験室を出る。四宮シノアは目を閉じ集中する。
「I'll switch here to a batlefield.I’ll Initiative.Air.Blood.Sound.All disappearance.Sets.The world of the barrier」
時が止まるような、背景がダークサイドに陥り、少しだけ重力が重く、吐き気をもよおすような空間。結界が張られる。
「ドンピシャね」
「ええ」
化学実験室内で七海ナミが結界を張ったと踏んでいた四宮シノアと三条カノンの読みは当たった。
結界がある状態の空間を含め、結界を張ると、自分たちの支配している結界空間ではないものの、その存在を把握することができる。
ドンピシャと言った三条カノンはまさにそのことを指しており、ええと言った四宮シノアもその読みの当たりに少し興奮を高めていた。
「私の体力が先か、結界を破壊できるのが先か。。。。。ね」
「I’ll power for battle.I’ll tiger’s magic,Sets」
四宮シノアは、術式の呼び込みと共に、青白い炎に包まれたバズーカの形状をした武器を発動させる。
そして、結界の一点に集中して、バズーカを放つ。
とてつもない爆風と爆音を鳴らし、さらに連続してバズーカを放つ。四宮シノアは早くも全身に冷や汗をかき、息を切らし始めていた。
◇◆◇
「如月カイ、、、、、あなた、、、、、魔術使えるの?」
七海ナミは自分の想定の中に俺が魔術を使えることはなかったようで、驚きを隠せないみたいだな。
まーかくいう俺もそうなんだが。
「おいおい、前提が違うだろ。そもそも七海も魔術全開だな。どうなっているんだ?
お前もそっち系統の世界軸から来たってことなのか」
「如月カイ、あなたに答えることは何もありません。
ここまでの状況になってしまったので、あなたには死んでもらいます」
ついに来たか。俺の抹殺目的のエージェント。
四宮シノアとのテレパシーが取れなくなってまだ1.2分しかたっていない。
四宮シノアも三条カノンも急いでこちらに向かってきたとしても5分10分はかかるだろう。
それまで、魔術全開で俺を殺すことに気持ちまっしぐらな七海を俺は相手にしなくてはいけないのか。
どう考えても、四宮シノアや三条カノンがつく頃には俺はロストしているだろうな。
三条カノンが与えてくれたこの力も使えて、後2発。。。。。
「なぜ、いままでこんな周りくどいことしたんだ?
俺の存在を消すのが目的であれば、最初からこうしていればいいだろう?
わざわざ俺の家に来て、ヒナリを人質にとるような行動をして、俺に対して条件提示して」
そこまで話しながらも自分で気づいてしまった。
七海ナミの目的は、俺にタイムマシン改めタイムパラドックスボックスを作らせないことである。
だからこんな回りくどいやり方をしたのだろうか?
そして、俺がタイムマシンを作ることを宣言してしまったもんだから、いわゆるプランB、プランが何パターンあるのかはわからないが、別のプランでの今回の結界からの魔術からの俺の抹殺に結びついているのかもしれない。
「どうしたんです?なぜ黙ってるんです?」
「いや、七海の狙いがなんとなく読めてな」
「何言ってるです。狙いが読めたところでもう如月カイ、あなたの運命は決まっているので、どうでもいいことでしょう?」
「いや、そうでもないぞ。七海、俺がタイムマシンを作らないで七海がタイムマシンを作ることが一番の目標だよな?」
「そうですよ。それがどうしたんですか?」
「つまりは、タイムパラドックスボックスのキッカケの存在に、七海ナミ、お前はなりたいんだろ。
過去改変はナイーブらしいからな。
一番の理想は俺が生きている状態で、七海がタイムマシン改めタイムパラドックスボックスを作れば、完全”キッカケ”の役割の交代の意味を表す。
ところが、今回のプランであると俺を仮に消したとしても、七海がタイムマシンを作り上げるまでの間に他の人間にその”役割”がうつる可能性がある。
そうなると今度は、すべての平行世界の混沌になる可能性もある。
キッカケの犯人が一時的にだけどわからなくなるからな。
どうだ?」
完全にぐうの音も出ないほどの仮説を七海に当ててみる。
そこでどんなリアクションを七海がするかである。
「全部ではありませんが、おおよそはその通りですよ。だからなんなのです。
さきほども言いましたが、だからといって、如月カイ、あなたの運命は、変わらないですよね」
「そこで相談だ。俺も自分の命がおしい。俺だって、別にタイムパラドックスボックスの”キッカケ”になりたいわけじゃないんだ。
ただ一応こと流れに身を任せいたら、俺がタイムマシンを作ろうってことになっただけで、絶対にやりたいことではない。
むしろ、やってくれるやつがいるのであれば、全然その役目を任せたい。あの二人にも俺がちゃんと上手くいってなんとかするから、最初のプランだった、俺をタイムマシンから遠ざけるプランで進めてみるのはどうだ?」
「今更ですね。。。。。ちょっと待ってください。考えます」
よし!!
七海ナミは、やはりファーストプランのほうが望ましいようだ。
なんとかここで時間を稼げれば。
そう思っていた矢先。
ーーードゴン!!
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