44. 真っ向勝負の行く末

 誰もいなくなった教室にて


「さて、如月くん、どうしたい?」

 四宮シノアの席近辺に俺と三条カノンも座る形で、席について開口一番、四宮シノアが俺に問うてくる。

 この件はお前が決めていいんだよ。という暗黙のメッセージ付きのように思える。


「そうだな。結局、二階堂先生から得られるものはあまりなかったな。

 七海に対して、先生から指示があったので、部活動は一人でやるのはダメだぞ路線でも攻めてみたかったのも、OKもらえなかったし。

 もちろん先生の気持ちとしては七海のぼっち状態をできれば無くして欲しい。という気持ちが聞けたのはよかったが」


 しばらくの沈黙の間。。。。。二人とも考えはあるとは思うが、俺のコメントを待っているように思える。


「正面突破が一番早いな。今から部活に言ってくるので、昨日の話の続きをしてみるわ」

「そうね、外堀があろうとなかろうと、結局最後は正面衝突のほうがいいし、二階堂先生からの情報は、そこまでプラスでもないけどマイナスでもないので気にしなくていいと思うわ。それよりも如月くん、交渉の着地地点を見出したていたりするの?」

「何も考えていない」

「ふー」

 あ、明らかに呆れているな。四宮シノア。


「むしろそちらのほうが大事でしょ。私と三条さんはその場にいれないのだから、変に如月くんが七海さんに言いくるめられたりでもして内容が決まってしまって、それが私達の許容できる範囲から外れていたらすごく困るのだけど」

「相手は小学生だぞ」

「小学生でもお馬鹿でも女の子でしょ。さらに子どもと来てるし。如月くんには一番相性がよくない相手よ」

「なんでだよ?」

「如月くんが変態だからに決まっているでしょ」

「こらこら。俺への信頼度低すぎだろ」

 もうここまでくると変態である事の俺のブランディングはきっとなくならないのだろうと感じたので、変態を否定するのでなく、信頼という言葉で攻めてみる事にする。


「そもそもそんなに信頼度は高くないわ。安心して」

「いやいや。それって安心を求められる事ではないだろ」

 四宮シノアと喋れば喋るほど切ない気持ちになってくるので、ここらで三条カノンさんの助けがほしいです。と言わんばかりに三条カノンをみてみる。

 三条カノンは任せなさい。というアイコンタクトを送ってくる。

 この連携ミスを幾度となくあるからな。全然安心できない。

 あ、四宮シノアが俺への変態認識と安心できない具合はきっとこういうところなのか?と気づいてみる。

 人の振り見て我が振り直せである。

 少しだけ四宮シノアへの自分の見せ方を変えていこうと思った次第である。


「正面突破なんだし、お前、エージェントだろ。お前の目的ななんだ?

 俺達の目的はタイムマシンを作る事だから、お前の行動を邪魔させてもらうし、むしろ俺の傘下に入れ。とかでいいんじゃない?」

「それはいくらなんでも話がぶっ飛びすぎだろ・・・」

「ちょっと待って。考えようによっては、ありかもしれないわ」

 三条カノンのぶっ飛んだ提案に俺はピンとこなかったが、四宮シノアはピンとくるようだった。


「そうなの。なんだかんだ今回の件を整理していくと、大事なのってヒナリちゃんの身の危険の可能性と七海ナミが別世界軸、別時間軸の人ではなかった時の別世界軸、別時間軸の平行世界の存在の情報漏洩リスクだけなの。

 七海ナミが仮にエージェントだとすれば、七海ナミがやろうとしていることが分からないなら全力で止めちゃえばいいと思うし。

 でもよく考えると、今回の動きのキッカケとしては、ヒナリちゃんの身の危険の可能性があるからこそ、如月は一人で七海ナミと接触を図るわけでしょ。

 その流れで考えると、如月が七海ナミにエージェントを問い詰めたとして、タイムマシンの話をしたとして。

 あ、ここはあえてタイムマシンという言い方にしようかと思っているのは、タイムパラドックスボックスと言う固有名刺を使わない事に意味があると思うの。

 タイムマシン自体、普通の言葉だしね。意味合いとしては近いし。

 七海ナミに平行世界とタイムマシンの話をして、それを調べてやり遂げる義務が如月にはあるから、七海ナミのやりたい事はやらせられないし、なんなら俺の傘下で手伝え。って言い放ってもいい気がしてきて」


 逆転の発想とはよく言ったもんで、しかもその案が三条カノンから出てくるのは脱帽である。

 しかしながらよく考えれば三条カノンのタイムパラドックスボックスに関する考え方自体が、俺の考えに沿いながら色々な方向性を模索するという方向性だからこそ、こういった発想ができるのかもしれない。


「そうね、いいと思うわ。そこまで突き詰めた話をするとおのずとエンドルートが決まってくると思うし」

 四宮シノアも一切反対することになく賛同する。

 やっぱり三条カノンと四宮シノアはプロセスが違うだけでゴールは一緒なんだな。と改めて思う。


「可能性のルートとして

 ①え、如月さん何言っているの?気持ち悪いんですけど。のリアクションであれば、その日は如月くんには、そのまま突き通してもらって、後日改めて部員同士の挨拶の時に、如月くんが重度の厨二病者で紹介すれば解決するわ。

 もちろんこのルートの場合は、七海さんも自分のやりたい事やってもらえばいいし、少し乱暴な言い方をすることこの世界軸、時間軸の子なので、実験部を入るのを辞めてもらってもいいような気がするわ。

 ②バレてしまったか、私はエージェントだ。ということであれば、何も隠す必要がないわね。

 後は敵か味方かの話になってくると思うけど、今の流れからすると味方ではなさそうなので、完全に潰すしかないかとは思うわ。

 その場合は三人で全力で抹殺しましょう。

 ③エージェントだけど、味方になりそうだったら、七海さんのやりたい事ををちゃんと教えてもらって、私たちの動きと似たような動きになると思うので、共同戦線を組んだらいいと思うの。

 どうかしら?」

 三条カノンの閃きに、四宮シノアのシュミレーション戦略、なんだか俺達のチームとしての動きが少し見えきたな。悪くない。


「OK。理解した。①の重度の厨二病者で終わる事を個人的にに避けられればと思っているよ。もちろん②も個人的には避けたいから③でいければ言う事ない」

 正直、①の重度の厨二病者である事も言葉に引っかかったものの、②の抹殺という言葉は相当俺には響く。

 ただし、以前にもこのような価値観の違いというものは感じてきたので、ここで話す事ではないと認識している。

 俺が変わっていってしまうのか。

 三条カノンや四宮シノアの感覚を少しでも俺に寄せられていけるか。が個人的な今後の課題ではあったりする。

 

「そうね」

「そうだね」

 四宮シノアと三条カノンは俺がそう考えている事を察しているかのように、ただ普通の相槌だけを打ってきた。


「それじゃ、善は急げだな。俺は今から化学実験室に行ってくる」

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