43. ミッションインポッシブル
職員室にて
「失礼します。二階堂先生いますか?」
俺、三条カノン、四宮シノアは、職員室の扉を開け、二階堂先生の机にいなかったのを確認し、近くにいる先生に確認する。
あーはいはい、入部の件ね。と言われた事に、先生達の間では、既成事実として部の存続を報告しているな?と思ってしまう俺がいた。
「おーきたきた。入部の件ね?」
二階堂アヤノ先生もそして、部活の件と言わずに入部の件と返答する事自体が本人の中での確定事項として捉えていることを認識させられる。
「先生、俺らまだ入るかどうか確定していないのに、なんかの定例会とかで報告しただろ?」
俺がツッコミを入れると
「え、なんでわかったの??うん、ごめんね。」
生徒に絶対的に申し訳なさそうでなく、テヘペロっぽく謝る先生。
いい歳なんだからテヘペロはやめろと声を大にして言いたかったが、その言葉を発してしまうとここが戦場になる気がしたので、やめておく。
「っとはいいつつも、私達入部します」
三条カノンが俺達を代表する形で入部を伝える。
「ありがとう〜。助かる〜」
なぜか三条カノンには甘い声を放ちクネクネする二階堂アヤノ先生。
本当わかりやすく人によって態度変わる人だなー。
そして七海ナミとの会話でわかった二枚舌説。黙っていれば美人なのに、惜しい先生である。
入部届けの紙を渡され、三人とも記載し、先生に渡す、俺は紙を渡す際に三条カノンと四宮シノアにアイコンタクトを送る。
こういう場合結構三条カノンには伝わっていないケースが多いのだが。。。
「先生、聞きたいことがあるんすけどいいすか?」
「どうぞ」
「実験部に俺らと同時に入ろうとしている七海ナミってのがいるじゃないすか?あの子はどんな子なんすか?」
「え!!、もうあの子に目をつけたの??四宮さんや三条さんだけで飽き足らずあんな幼女まで囲いこもうとしているの?
如月、ちょっと君、変態すぎるわよ。ここらで止めておかないとそろそろ先生本当に庇いきれないよ。こわいよこわいよ。」
「こらこらこら。なぜそちらの方向に話が進んすか?そして、幼女って。。。その発言のほうが危ないすよ」
「お!!、反論するようになったわね。そして、幼女に反応するところも変態に磨きがかかっているわね」
「っというか、むしろ、私も四宮も囲われてないし、先生やめてくださいよ。むしろ、私が囲っているようなもんですよ」
三条カノンは、否定からの反論で少しドヤ顔していますが、いや、それは、ややおかしいぞ。
その発言をした事で危ない対象がむしろ自分になっている事に気付いてはいないんだろうな。アホの子や。
「え!!、そうなの??うぷぷ」
うぷぷじゃないよ、二階堂アヤノ先生。あんた、なんとかクマですか。
そして、このやりとりに参戦するつもりはない四宮シノアはクールに腕を組んで見守っていた。
「そうね〜。あの子の事をどこまで知っているか分からないけど、最近転校してきた子でね。友達を作ろうとしないのよ。
ほら、うちの学校って新しい人をウェルカムな文化じゃないじゃない?
小学科なので私もそこまであなた達みたいに関係があるわけじゃないんだけど、一応先生達の間では問題になっていてね。
本人はあの通り、大人ぶりたがるので、気にはしていなみたいだけど、さすがに学校生活においての完全孤立はよくないなーと。それであればと思って声をかけたのよ。
ただやはり部活とかでも本人は仲良くなるつもりはないみたいだから、如月や三条さんや四宮さんの事は、あえて言ってなかったんだけど、それで何か揉めちゃった?」
この人は分かってやっているのか、分かってやっていないのか。
何か揉めちゃった?なんて聞いてくる辺りに確信犯を感じてならない。
あと、一応、俺達に入部してくるな。と七海ナミが言っていた事自体は一旦黙っておくにしよう。
七海ナミの正体がはっきりしない以上は、仮にこの件を二階堂アヤノ先生が捲る事で、ではやっぱり七海さんは別の部活にしましょう。みたいなことになるのも接触を図りづらくなるので、あくまでオブザーバーとしての立ち位置にさせておく事にする。
そして、なんだか話を聞いていると七海ナミは四宮シノアに少し似ているかもしれない。誰とも仲良くするつもりがないところだけだが。
「いや、たまたま昨日帰り際に話すことがあったんで。やりたい事があるから私に関わるな。みたいなことを言われたので、小学生だし、どう接したほうがいいのかな?と思って」
「あら、如月、優しいわね。ほっといていいわよ。と言いたいところだけど、あのまま大人になっていくのは先生としても心配だしな〜。本人のやりたい事って実験部や科学実験室を使ってやりたいことなのかしら?」
「教えてくれ。って言ったら教えてくれなかったんすけど、多分そうぽいすよ」
「それじゃ、手伝ってあげなさいよ」
「え、先生聞いてました?教えてくれ。って言ったんすけど、教えてくれなかったのに手伝うんすか?先生に言われたとか言ってもいいすか?」
これがOKなら前言撤回。二階堂アヤノ先生はオブザーバーではなくなる。
「あ、ごめん。本人には先生から言われたとは言わないで」
「え、だめなんすか?」
「それによって、部活入るの辞めます。って言われると先生、立場がないのよ」
「はぁ〜。色々と大変すね」
そして、そのよくわからない都合に巻き込まれるのも勘弁してほしいわ。と思ったが、これは言わない。
俺は空気読める漢だから。
あわせて、前言撤回の撤回である。やはり二階堂アヤノ先生はオブザーバーであった。
「それじゃ、もう一個いいすか?」
「どうぞ〜」
「七海からは実験部でやりたい事があるが、その内容を見られたくないので、俺達に入部してくるな。って言ってきたんすよね」
「あれま、それは結構重い話ね」
「そうなんすよ。そこまでのことか?っとは思ったんすけど」
「それでなんていったの?」
「とりあえずは考えさせてくれっていいましたよ。まーここで入部届け出しているので嘘ついていることにはなりますが」
これまた少し嘘。俺達もやりたい事があるが、それをお互いに干渉せずにやろうぜ。って交渉が決裂したところまでは言う必要がない。
あわせて、二階堂アヤノ先生が七海ナミを容易に自分の管理下から手放す事をしないのはわかったので、この情報開示はデメリットでないと判断をしてみた。
「そう?」
二階堂アヤノ先生は、なぜかその点だけクエスチョンで聞き直してくる。じっと見られると結構辛いですけど。
やや胸を強調したその服に視線が行ってしまうのは漢の性と自分にいいかせていますが、じっと見られるとバレちゃうので、視線を泳がせる。この心を読まれた瞬間に俺のアイデンティティーが崩壊してしまいます。
そして、すべてを理解しているようで実はしていないようで、よく分からない大人の雰囲気を出してくるこの瞬間は、俺の対人経験値的はやや辛いところである。
「まーなんにせよ。プロジェクト、ミッションインポッシブルね」
「は?」
「は?じゃないわよ。七海を孤立さえずやりたいことを手伝って仲間意識を持たせて、みんなで一緒に部活動が今回のプロジェクト、ミッションインポッシブルよ」
「先生、その作戦名かっこいいね」
今まで俺と二階堂アヤノ先生のやりとりをずっと聞いていた三条カノンが作戦名にだけ反応してきた。
もしかしたら本人もこのやりとりで言いたいことがあったのかもしれないが、会話を差し込むタイミングをうかがっていたのだろうか。
その点、四宮シノア先生は、沈黙が気にならない人なので、ずっと腕を組みながら聞いているだけなのがすごいよな。
途中、目も閉じているんで、眠ってるんじゃないかと思う。
「まーいいすわ。とりあえずプロジェクト、ミッションインポッシブルがんばりますわ。なんかトラブった時はヘルプ求めるんで助けてくださいよ」
「わかったよ〜」
なんかやりとりすればするほど子供っぽくなるな二階堂アヤノ先生。
なんだかんだ、これがこの人の素なのかもしれないが。
「それじゃ、失礼します」
「あ、七海の事はもちろんだけど、ちゃんと活動報告は出すんだよ。そのうち私からも課題出すかもです」
椅子に座りながらじゃーねーと手を振り、職員室の扉を閉める俺、三条カノン、四宮シノアに最後また余計な一言を添えて、二階堂アヤノ先生とのやりとりは終了した。
「一旦教室戻るか」
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