40. フィードバック

「もしもし」

「四宮、七海との接触は終わった」

「それで、どうだったの?」

「今までの四宮や三条とは違うアプローチだったな。少なくとも会話の中でな七海からは一切別世界軸や別時間軸の話もないし、もちろんタイムパラドックスボックスの話もなかった。結論、エージェントとしてかどうかまでは判断できなかった」

「え?!、そんなことあるの?では、一体何の話をしていたの?」

 四宮シノアとしても、やはり事例がないパターンだからなのか、不思議な印象を持っているようだ。

 話のメインがほとんど大人扱いか幼女扱いって話で揉めていた。

 なんて話をした日には、また四宮シノアから新たな称号をつけられることは目に見えているので、俺の胸の内にしまっておく。


「七海の用件は、俺達が実験部に入らないこと。厳密には入部だけして実験部を使うな。って内容だったな」

「なぜ、七海さんにそんな事言われなくちゃいけないのかしら?あと、なぜ実験部のことを知っているの?」

 四宮シノアの唐突な質問に、すっかり七海ナミが今日、俺と四宮シノアと三条カノンが二階堂アヤノ先生と話している時に通りすがりで実験していた小さい女の子である事の説明をすっかり忘れていたので、そこを補足した。


「如月くん、あなた、前から思っていたけど、あまり物事を考えないで発言してるでしょ」

 四宮シノアさん、思っていないですよ。俺、何回も指摘されています。そしておっしゃる通りです。はい。すいません。


「悪りぃ。。。。。」

「まーいいわ。ここで如月くんの知能レベルの話をしてもしょうがないしね。しかし、引っかかる言い方するわね」

 そして、相槌のようにディスられて本題に戻る。

 もちろん俺も反論はしない。


「そうだな。色々七海は七海で情報を隠しながら用件を伝えてきたいのは伝わっているので、これが個人的なことでないのはピンとくる。むしろ個人的なことだったらそれはそれで別の意味で危なそうな気がするけどな」

「では、色々発言の真意や態度の気になるとして、そこは一旦置いておいたとしても、関係性としては、限りなくクロという判断でいいのかしら?」

 あ、やっぱり色々気になるんですね。態度とか態度とか。


「俺はそう思っている。ところで四宮さん、こちらに向かっているいると思うんだけど」

 非常に言いづらいことをいうので、少し前置きをしてみる。


「わかっているわよ。ヒナリさんも無事だし、七海さんとの接触でのやりとりに疲れてしまったので、明日、改めて話たいんでしょ。電話が来て少し話をしてから、そうなんじゃないかと思って、電話中は移動してないわ」


 四宮シノアさん、君はそんなに気を使える子でしたっけ??俺はびっくりです。ここぞって言う時の四宮シノアの空気読める具合は言うことなしなくらい完璧すぎる。惚れてまうぞ。

 もちろん、今思ったことをそのまま口にしてしまっては、四宮シノアのエベレストのように高いプライドを考えるとすべてがぶち壊しになってしまうので言う事はない。

 そして、四宮シノアは俺を気遣ってか、そう思っていたので話している最中には自分から言い出さないところあたりは、そこまで遠慮しなくてもいいんじゃないかと思ったので、それはお互いの関係値作りも兼ねて伝えておこうと思う。


「四宮、ありがとな。俺も四宮に無理言ってきてもらってた手前少しいいづらくてすまん。逆にそう思ったのであれば電話でたタイミングで言ってくれれば全然よかったけど」

 俺は、四宮と初めて、利害関係のない譲り合いができた気がして、なにか少しその瞬間は心が晴れ晴れしかった。


「いえ、そうも思ったけれど、如月くん、もしかしたら不安で不安で私の顔を見たくてしょうがなかった選択肢もあるかもしれないので、如月くんから何かを言うのを待っていたのよ」

 でました。自信家で上から目線の四宮シノアさん。

 でも今は、その気遣いは悪くない。

 もちろん言わない。上から目線で捉えれると話がややこしくなるので。


「そうか。重ねてだけど、ありがとうな」

「では、明日ね」

「おう」


 四宮との電話も終わり、そのままもう眠りにつきたいところだが、如月家は食事を一緒に取らない事に関してややうるさいので、このまま寝るとヒナリに怒られる。

 たしか今日は父親も母親も早く戻って来るので、久しぶりに四人での夕食である。

 全く色々とタイミング悪すぎる。

 子供がいい感じの思春期を迎えている一家にとって、家族の話題のネタはそこそこ大事だろう。

 いうなれば家族である事以外なにも共通項のない人々が一緒に机で”何か”を話ながら食事をとるわけである。

 他の家がどうなっているかわからないが、クラスで空気になっていればいい時間よりも難しい。と俺は思う。

 少しだけ幸いなのは、父親も母親もヒナリと同じような性格をしているので、基本は俺から発信はしなくても大丈夫ではあるのだが、会話の中に入らなくて言いという事は許されない。

 そして、このくだりからの今日の流れを考えれば、今日のメイントピックは間違いなく、俺の周りに最近出没しはじめた女性達についてである。

 案の定、ヒナリからは俺のラブコメ万歳話をメインで話される事になり、さらに疲れが溜まってしまったのは言うまでもない。


 次の日

 

 朝、午前中の授業毎の休み時間、昼休み、午後の授業毎の休み時間と四宮シノアに話かけられる事も三条カノンから話掛けれられる事もなかった。

 もちろん二人以外の誰かから伝達事項以外で俺に声をかけてくる者もいないし、俺から話掛ける事もしない。

 話の内容の重さからすると休み時間、休み時間に少しづつ伝えてモヤモヤしながら進めていくのを避けたかったのだろう。

 俺が同じ立場でもそうする。

 ただし、三条カノンにおいては、知らなくてはいけない情報があるのに、放課後まで待ちましょうという高等な行動をできるとは思えないので、四宮が口うるさく言っているのだろうと察する。

 何も情報を伝えていないとすれば、それはそれで話かけてきそうな気もするので。

 いや、してこないか。

 社交性ある風なぼっちさんは自らが進んで発信源になることはないように思われる。相槌スキルが神がかっているだけだ。


 そんなこんなで、一人考察妄想をしていながら放課後を迎える。

 え、お昼はどうしたかって?もちろん学食で一人美味しくいただいたさ。


 放課後


 四宮の席に俺と三条が行く形で一旦集まる。


「どうする?先生のところは後にして、先にいっとく?」

 ソワソワしながら三条カノンが言う先にいっとく?はきっと実験部に言って話したいことを話しちゃおう。ってことと思われる。

 入部届けを先に出すよりもその行動を取りたがるところ辺りが気になっていてしょうがなかったのを思わせる。


「いや、実験部に行くのもこの話をしてからにしよう」

「そうね」

 四宮が相槌を打つ。


「そうなんだ。。。。。したらどこで話す?」

 三条は、クラスを軽く見回しながらも別の場所を考えているようだった。

 

「ここでいいのではないかしら」

 再び、四宮。


「そうだな、会話の流れ的にいつも通り気を使っていればそこまで危ない話にはならないと思うしな」

 そもそも四宮の席に集まって、そんなに大きな声で喋らなければ聞き耳をたてるやつは居たとしても、何々?なんの話しているの?って混じってくるやつもいないだろう。


「わかった、それで昨日、あの後何があったの?あ、その前に」

 三条は思い出したかのように両手をパチンと合わせて叩く


「三条さん、どうしたの?」

「何、さりげなく如月と四宮で連絡先交換してんの?なんで私だけ交換してないの?ちょっとすごい嫌な感じなですけど〜」

 不貞腐れた表情をしながらも目は何気に笑っておらず、スマホを取り出す三条カノンに、俺や四宮はフォローを入れる。

 かまってちゃんが後回しになっているのはよくないな。危ない危ない。


「昨日、ちょうど帰り際にその会話になったからしただけだ。

 その後すぐに必要になるとは思わなかったからすごいいいタイミングでの交換だったけどな」

「そ、そうよ、三条さんを置いて私達だけで何かを進めるなんてことあるわけないじゃない。

 しかもこの男と二人でなんて持っての他だし」

 珍しく四宮シノアもフォロー側に回る。なんだかんだ三条カノンを大事にしているんだな。

 いい事だ。ただ、それにあわせて俺を落とすのやめてくれない。


「そうなの??ならいいけど、じゃ、今二人とも、私とも交換しよ」

 三条カノン的には、昨日自分が途中いなかった偶発的環境での交換であった事を良しとしたのか、そこまで咎めてはこなかった。

 もし俺と四宮シノアが意識的作った環境で三条だけが関わっていない事があるとするのであれば、それは後々の波乱フラグを立ててしまうのかもしれないと俺はその時、少しだけ警戒感を持っておくとを自分に覚えさせた。ちょっとだけヤンデレちゃんか?


 三人でライーンの交換を終えた俺達は、三人ともスマホをしまい、再度三人でお互いの表情や目を見ながら顔を突き合わせる。


「それでだな、昨日なんだが、俺の家に新たなるエージェントらしき奴が現れた」

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