38. イジり倒す

「それでな、七海」


「なんですか?」

 プイとしながらも受け答えする七海。


「いや、なんですか?って言うか、何か言いたい事があって俺の家に来たんだろ?

 今日、科学実験室では言わずに、わざわざ俺の家に先回りして、俺の知り合いのフリまでして、俺の部屋で待機していた事に意味があるのか?」


「意味があるかないかは如月カイ、あなたが考える事です。ナミが答える事ではありません」

 少しだけニヤリとしながらも思わせぶりで俺を混乱させたいと思っているのが見て取ってわかる。

 俺の質問に一切の答えを出さない七海ナミに少しだけイラッとしつつも、意味があったとして、その意味を俺に伝えてこないとするのであれば、逆にその意味自体はあったとして、大きな事柄ではないのかもしれないと思える。


「そーか。じゃ、その行動には大して大きな意味がないと俺の中で判断させてもらう。

 それで俺への用件はなんだ?」

 一旦、その行動のわかりやすい一つの答えはどこかでしれっと言うとして、他のわからない意味に関しては一旦考えるのをやめる事にする。


「え、それで流されちゃうのですか。

 その意味をちゃんと把握しないと如月カイ、あなたにとっては相当良くない方向に事が進むかもしれませんよ」

 一瞬、びっくりした後に、気になるだろう。気になるだろう。と言わんばかりのドヤ顔で行動の真相の解明を求めてくる姿をみて思ってしまった事がある。

 七海ナミ。。。。。うすうす感づいてはいたが、気づかないように気づかないよに気をつけていたものの、もうそろそろ限界かもしれない。

 七海ナミはかまってちゃんである。しかも三条カノンのぼっち寂しいかまってちゃんではなく、何かあると思わせぶりたいかまってちゃんだな。

 これはまためんどくさい奴と関わる羽目になりそうである。


 エージェントなのかそうではないのかわからないが、なぜか四宮シノアにしろ三条カノンにしろ面倒くさい奴らばかりが関わってくるのだろうと少しだけ何か言い知れない重荷が乗っかってきたような気がした。


「いや、絶対、そんなに大した意味ないだろ。

 実験室で声を掛けてこないで、ここで俺に接触を図ったのは、俺だけに伝えたい何かがあったんだろ?」


「え、ま、そう、うん。そうです」

 すごくわかりやすい当たり、って顔をして恥ずかしがる七海ナミ。

 わかりやすすぎる。。。。。


「俺より先回りしてきた事の意味自体は完全には分からないが、だいたい推測はつく。

 俺が家にいる状態で家に向かうと入れてもらえないか応援を呼ばれる可能性があったから避けたかったか。

 ヒナリに大して自分が知り合いという体裁に接触したのは、ヒナリとの関係値を作っておけば、またいつでも来ようと思えば来れるからな。

 俺が拒否したとしても。そんなところだろ」


「す、すごいです。如月カイ。ちょっと馬鹿にしていたのを謝ります」

 七海ナミは、少し前のめりで両手をあわせて俺の顔を見上げながらも、俺の椅子に座りながら、軽く頭をさげる。


「前提として馬鹿にされていたことが、やや釈にさわるが、素直に謝られたので、まーいいよ。

 それで結局用件ってなんなんだ?」

 七海ナミが思わせぶりたいかまってちゃんのおかげでなかなか、俺だけに伝えたい内容を知る事ができない。

 それすらも実は俺一人に伝えたい内容ではなかった日には茶番な気がするが。


「そうですね。失礼しました。如月カイ。あなたやあなたのお友達2人は、実験部に入るのをナミは拒否します。入るのを辞めてください」


「拒否するって、なんで?そもそも七海も正式な部員じゃないよな?」

 たしか二階堂アヤノ先生は、部員数を予定と表現していたので、探りも兼ねつつ聴いてみる。


「正式な部員ではありませんが、誘われていますので、受理は間違いなくされるはずなので、正式は部員と言っても過言ではありません」

 いや、それ完全な過言だろ。

 俺たちも誘われているから、お前の理論でいくと俺や三条や四宮も正式な部員になってしまうのだが。と心の中で突っ込みつつも、拒否する理由に関してはスルーされたので、一応またどこかで聞くタイミングを伺ってみるとしときつつ。


「これが、七海が俺個人だけに言いたかったことか」

 大それた潜入をしてきてまで伝えたかった用件としてはやや肩すかしをくらったイメージだが、一応理には適っているので、一旦そのまま受けとってみる。


「そうです」


「わかったよ」


「本当ですか?よかったです」

 っと、安心して喜ぶ七海ナミを瞬間的にながめた後に


「嘘だよ」

 嫌がらせっぽく弄ってみる。


「嘘?!、なんでそんなに性格悪いんですか?如月カイ」

 うまい具合に俺に踊らされて、ガックリきている七海ナミをみて、思わせぶりたいかまってちゃんもまだまだ子供だなと安心する俺。

 駆け引きとはいえ、小さい女の子に嫌がらせっぽく接する俺は端から見ると、きっと無茶苦茶かっこ悪いんだろうなと思うが、気にしたら悲しくなるので、もう思うのはやめておこう。


「嘘というかだな。七海、お前、知らないかもしれないが、実験部、今まったく正規の部員がいないので、七海だけ入ったところで廃部確定だぞ。二階堂先生から聞いていないのか?」


「はうわ!!、マジですか?、、、聞いていなかったです。アヤノに騙されました」

 ガックリの次にしょんぼりとしている七海をみて、仮にエージェントだったとしても口撃だけで倒せそうな気がしてくるくらい、少なくとも口撃に相当弱いのは判明した。

 しかし、はうわ!!って。。。。。話せば話すほど、子供が露呈されてくるな。


「二階堂先生にはなんて言われたんだ?誘われたんだろ?」

「ナミが、人と関わらないでやりたい事があるのをアヤノは知っているので、だったらアヤノに任せなさい。と言われて紹介されたのが、科学実験室と実験部です」


 あの、教師。。。。。行き当たりばったり感が半端ないな。

 こうやって溢れ者をただ、その部に突っ込んで、顧問と問題児対応の責務両方をこなしている気になっているじゃないかと思うのと、二階堂アヤノ先生が高らかに笑っている姿を思い浮かびながらも頭が痛くなってきた自分がいる。

 三条カノン、四宮シノア、利害は一致せずに、藪をつついて蛇を出すルートに俺達は、入ってしまったかもしれん。

 すまん。とりあえず心の中でだけ謝っておこう。


「そうか。。。。。お互い二階堂先生に言いように使われてしまったかもしれないな」

「そうですね」

 ガックリきて、しょんぼりきて、そのまま床と同化してしまうのでないかと思うくらい下を向いて落ち込んでいる七海。


「それでどうする?俺や三条や四宮が入らないと実験部は廃部だぞ。

 七海が入らなくても俺や三条や四宮が入れば実験部は継続だ。

 これは、七海の求めている環境提示を二階堂先生に求めると、どう見ても七海にが分が悪いな」

 俺が、少し嫌みな感じで、ドヤ顔で言い放つと


「如月カイ、そこまでの嫌がらせをするなんて。。。。。どれだけ悪い男なんですか。

 幼気(いたいけ)な子の小さな切なる願いをそこまでして踏みにじろうとするその腐りきった根性が、ナミは許せないです」


 プンプンプンと、普通であれば、自分の娘とかで、機嫌を損ねて甘えてくる姿でもあれば、わかったよホラホラ、ごめんな。っと、頭ポンポンでもしてあげたて機嫌を直してあげたいところではある。

 しかしながら全然知らない、しかも先ほどまで子供扱いするなと息巻いていた淑女気取りのこの方は、大人気なんて言葉はすべてに消え去り、自分の子供で女の子、そう幼女としての最高の武器を全面に使ってくることになる。

 この辺の強かさは勉強になるな。

 しかしながら、七海よ。

 お前は、武器の使い所を間違っている。

 幼気な女の子を苛めている場面においては、当事者同士ではない第三者の目が必要なのである。よって、そのスキル発動は残念ながら、ただの痛い子である。

 この場が二人でよかった。

 事情を知らないヒナリに見られた日にはなんて言われるかわからないし、なんなら事情を知っている三条カノンや四宮シノアですら、なぜか俺が悪者になってしまうような場面である。


「こらこらこら。俺は、全然嫌がらせをしていない。

 そもそも入りたくもない部活に無理やり入れられそうになって、諦めて入ろうと思っていた矢先に、まだ入ってもいない部員候補から拒否されたから、入らない事を検討しつつも、入らなかったら廃部になってしまうけど大丈夫か?と聞いているだけだ。

 勘違いしちゃダメだぞ。お兄さんは、あくまでも現実的な視点で物事を話しているだけだ」


 見事なまでに、少し泣きそうな幼女をドヤ顔で楽しそうに言いくるめようとしているお兄さんの姿がそこにはあった。


「うーー」

 どう言い返せばいいのかを思いつかないであろう苦しそうな七海を見て、口撃面では俺のほうが有利なのは完全にわかったので、これ以上苛めてしまうと本当に、悪いお兄さんになってしまうので、現実的な着地地点を見出しにいくとする。


「そもそも、七海、なんで一人でしたいことがあるんだ。

 今くらいの年齢だったら友達と楽しく遊んでいたい年頃だろ?

 早く帰れて友達がもっといっぱいいる部活にはいって、家に帰ってからゆっくり自分の何をしたいんだか、知らないけどすればいいだろう?」

 普通の小学生に対する扱いを一応してみると


「家じゃできないんです。あと、仲のいい友達なんていないので、どの部活にも入りたくないです。できることならずっと一人で居られる場所がほしいのです」

 ちょっと怒った風にいう七海ナミをみて、あ、なるほど、ここが本質的なところだな。と気がつく。少しづつ真相に近づいていけそうである。


「そうか。じゃ、話を戻どして、どうしても一人で居られる環境が学校の中にほしいんだな。それじゃ、折衷案を出してもいいか?」

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