25. 見解違いと成長への意識

「それは、そのだな」

 言っていいものかと、三条カノンのほうをチラ見すると、喋って大丈夫。とも汲み取れる頷きをしたため、続ける。


「俺は、タイムパラドックスボックスを使って元いた世界に戻りたいと思わないのか?」

 直接的な事をどうしても、言えずに抽象的に聞いてしまう。

 四宮シノアの表情を見逃さないように瞬時にだけ、三条カノンをほうをチラ見すると、三条カノンは、お前、何言ってんの?って顔をしている。すまん。社交性がなさすぎて、突っ込んだ話をできん。


「もちろん、元いた世界に戻りたいし、戻るつもりよ。何を言ってるの?」

 四宮シノアから返ってきた返答は、俺や三条カノンが想像しているのとは違うもので、一瞬、四宮シノアから言われた言葉を理解できなかった。


「どうしたのよ?三条さんも変な顔して」

 俺や三条カノンがフリーズした状況をみて、四宮シノアは不思議がる。


「え、だって、四宮、タイムパラドックスボックスって2回までしか使えないでしょ?」

 三条カノンが溜まらず、俺と四宮シノアの会話に割ってくる。


「何言ってるの?そんな事無いわよ。もちろん普通の使い方をしていると2回まで。って認識はしているけど、今回みたいに、比較的小さい物体を短い時間で転移させるのであれば、タイムパラドックスボックスに与える影響はたかが知れていると思うわよ」


 って、おい。

 っと、三条カノンにツッコンでやりたいところではあったが、パクパクした顔を見る限りにおいて、全く知らなければ、考えにも及ばないことだったのだろうと思われるので、一旦、空気になっていたただいて、俺はもちろんのこと、三条カノンも知らなかった事実解明と行こうではないか。


「それじゃ、四宮は、俺を助けたことで、もうタイムリープできないってことではないんだな?」

「もちろんよ。なんで如月くんがそんなことを、、、」

 ハッと、三条カノンを見る四宮シノア、三条カノンがかなり恥ずかしそうにしているのを見て、溜息をつく。


「そうね、確かに一般的な考え方や使い方からするとそう思ってもしょうがないわね。もちろん、相当な体力を使った後の発動だったから倒れる事は覚悟してたけど」

 四宮シノアは、三条カノンをフォローするかのように、三条カノンが思い込みで俺に色々な情報を伝えたのかもしれない。と思ったものの、色々な意味でその点を追及すべきではないと判断したのか、自分の見解のみを答えてくれた。


 引き続き、三条カノンには空気になってもらって、俺は四宮シノアとの会話を続ける。


「倒れる覚悟。っと言ったが、それは、自分の中では、死に至らしめる危険を感じてまでやったことでない。と俺は捉えていいのか?」

「そうね、そう捉えてもらって大丈夫よ」

 しれっと答える四宮シノアに、これ以上、この件について追及する事はないだろうと判断した俺は、三条カノンのほうを見て、まー気にするな。とアイコンタクトしてみた。

 こっちをみるなーっという三条カノンのメッセージが表情や動きから返ってきたような気がする。

 お互いの受け取り方がズレていなければいいが。。。


「そうか、じゃ、俺の取り越し苦労ってことで大丈夫だ。タイムパラドックスボックスっていうのは、心臓とかそういった一部物質だけを転移転生させたりとかできるんだな?」

 一応、その点も基本的な使い方としてはありえない。と三条カノンが言っていたので、こちらもただ、三条カノンが知らなかっただけなのかの確認だけしておこう。


「いえ、それは、どの時間軸でどの地点で。という基準が曖昧だけれども、この世界軸と時間軸においては、私が初めてやったと言い切っていいと思うわ」

 そこは、四宮の見切り発車か。

 理論と感覚を交差させている部分を、自分の中ではすべて理論立てているように平然と言うやつだな。と改めて思った。


「そ、そうか。。。俺が言えた事じゃ無いけど、やっぱり体に負担を与えるものだから、やった事無い事は極力控えようぜ」

 俺としては、そのコメントで返すのが、精一杯の対応であった。


「そうね。気をつけるわ。如月くんが、そうならないように努力してくれるみたいだし」

 そう言って、四宮シノアは一呼吸おいて


「今回の事は、色々イレギュラーが多かったかもしれないわね。

 ただ、今後も同じような事がドンドン起きてくると思うのね。

 今回は私のほうで色々と動いちゃったけど、三条さんも自分の得意領域において、如月のために命を賭す覚悟ではいると思うの。

 いきなり重い話しちゃって申し訳ないけれど、私達は、そのくらいの覚悟を持ってきているわ。

 これから現れる人達も、目的は違えど覚悟は同じはずなので、如月くんも、時期時期で、変化して成長して進化を遂げてくれるとうれしいわ」

 四宮シノアは、今回の事を、そう総括してくれた。

 こういう場面になると。っというかそんなに、こういう場面なるほどの場面は経験していないが、話の本質はいつも汲み取っているように思える。

 さりげなく三条カノンを立てたような発言をするところあたり、なんとなく俺と三条カノンがどんな会話をしたのかも想像していたの発言だろう。

 もしかしたら、タイムパラドックスボックスが使えるって話も、命の危険が相当あったことも、嘘かもしれなくて、俺や三条カノンを気遣った発言かもしれない。

 そうなると、もはやどれが真実でどれが虚構なのかすらわからなくなってくるので、今は、四宮シノアの優しさをそのまま受けてっておこうと思う。


「四宮、いろいろとありがとうね」

 三条カノンもさすがに四宮シノアの締めくくりには、心を打たれたのか、素直に感謝の気持ちを述べる。

 どちらがイニシアチブをとかは、もう言わなそうな気がするな。


「でも、私も三条さんも、如月くんのために命を使ってしまったら、今まで生きてきた事自体を否定してしまう事になるくらい価値のないことなので、本当に気をつけてね」

 

 最後にくれた四宮シノアの言葉が、プレッシャーではなく、ただのディスりだった。ツンデレ乙。

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