19. 目覚めとドキっと
目が覚める。
夢か。。。。。
目を開けたそこに映るものは、三条カノンの顔を下から眺めた映像だった。
「如月!!起きた!!よかった。。。」
目が覚めたと同時に三条カノンの言葉と抱擁を受ける。
「お、ちょ、お」
三条カノンを包んでいるような仄かに醸し出すシャンプーの匂いが、やけに心地よくて安らかで、そして、恥ずかしさと興奮が入り混じる。
そして、こんなに細くて小さい体の子があんなに激しい戦闘をしていたのかと思うと不思議な気持ちになる。
あ、俺、今、すごい変態思考だ。危ない危ない。深呼吸、深呼吸。
「は!!ちょっと、変な顔すんな」
三条カノンは、いきなり抱きつかれた俺が全身硬直しているのがわかったのか、我に返ったからなのか、すぐに離れ、変な顔していると言う言いがかりをつけ、起きてたのホットなビンタをくれた。
「起きてたのビンタはないだろ」
ヒリヒリした左頬を、自分の左手でスリスリさせてながらいたわる。
「あ、うん、ごめん、色々と」
自覚はしているようで、モジモジしながら謝ってくれた。小動物みたいだ。
起きたてのワンハプニングはさておき、辺りを見回してみると、自分の部屋である。
「俺、結構やばかった?」
「うん、3日は目を覚まさなかった。大丈夫だって分かってはいたんだけど、やっぱりさすがに起きないと心配で、極力、側にいたよ。あ、でも結界は作っていたから安心して、日常生活に支障はきたさないから」
三条カノンは、身振り手振りでも本当に心配していたんだよ。という事と、日常生活は安心してね。という事を伝えてくれる。
あ、なんか色々アホな子とか思っちゃってごめんなさい。無茶苦茶いい子だな。
「結界とかって、時間支配とかもできるものなのか?」
ここらで曖昧にされていた点をようやく聞き出す機会がやってくる。
見たもの触れたものを日常会話として出すことが問題ないかを試す瞬間だ。
「私が言えるのは、それは四宮シノアも、これから現れる別世界軸、時間軸の人も、多分全員に共通して言える事だろうけど」
三条カノンは、そう前置きをした上で
「各々の生きてきた世界での常識やルールがあることだけ覚えておいて。
私達もすべてを把握できているわけではない。
あと、この世界軸、時間軸の人に現時点で存在しない情報を与える事は、過去改変またはパラレルワールドを作り出すかもしれない原因になると言われているので、私達は極力、情報は不用意に口にはしないの。
特に如月の場合は重要人物だしね。
だけど私や四宮や他の時間軸、世界軸の人とのやりとりにおいては、そもそもがこの時間軸、世界軸に存在しない人達なので、比較的、やりとりのセキュリティが甘かったりもする。
そこに居合わせてしまって、たまたま聞いてしまった程度の認識をしておいて。
質問事項については答えられないけど、どのみち如月の場合はどんどん知っていく事になるだろうから、その都度、自分の中で消化する癖をつけてもらえれば、大抵その認識は間違っていないと思ってもらって大丈夫だと思う」
俺としては、曖昧にされていた点の探りを入れたかっただけであったが、そんな俺を見透かしてか、三条カノンの中で許される限りの情報提供をしてくれた。
「そうか、それが今まで感じていた違和感の答えか」
俺は、しみじみと情報を噛み締めて、頭のなかでの整理を始めて行こうとした。
「あ、でも、そんなに深く考えたりしないで。特に、私たちの前でそういう素振りを見せたり、または質問をされたりとか、そういうタイミングやシーンを作り出す事に私達はすごい敏感なの。だから、そんなもんかーってくらいで止めておいてよ。ね」
ちょっと困っちゃうの、お願い、考えないで。「ね」っと少し困った。という言葉にぴったりな表情で三条カノンは同意を求めてくるので、俺が三条カノンや四宮シノアから得る情報で深く考えていくことは、結構重い事態なのかもしれないと推測してみる。
「わかった。ただ、三条カノンもいて、四宮シノアもいて、これからも色んな奴が現れるかもしれなくて、その度にやれ、未来が。とか過去が。とか別世界が。とか言われるのに、いやいや、考えるのはよくないし〜。ってアホ面して、接していくのは無理があるだろ」
俺は一体、どうすればいいんだ?と少しアホ面も見せながら、そう問うてみると
「あ、確かに。さっきの説明からするとそうなるね。ごめんごめん。
あくまで私たちに考察や追求をしないでほしいのは、この世界に常識外の物事で、現時点ではその事象に如月が関係して無さそうな事に対してだけ。
例えば、今のこの結界とかね。
いつかどこかで誰かが作り出す事から生まれてくる訳であって、それが自然と如月から生まれてくるものであるならいいけど、私達が介在する事で生み出すキッカケになってしまうと良くないよ。ってだけ。
でも、もしかしたら如月は思いついちゃって、この世界軸、時間軸で生み出すキッカケの人物になるかもしれないし。
結構私達もわからないの。正直言うと。
だから私達の立場でいうと、全然私達と触れ合う事で新しいものを知る事は問題ないんだけど、それは偶発的であること、その追求を私達にしないこと、その点を望んで行きたいだけ」
三条カノンとしても分からないことがある中で説明をしているのだろう。
会話の粗探しをしていくような質問は、三条カノンを困らせるだけかもしれないので、ここまでもらった情報を自分の中で消化していこう。
「結局のところは、別に自分で色々考える分にはいいけど、私達に聞かないで。ってことでいいんだろ?
あと、今の所は俺の未来というか、今の結界の話でいうところのタイムパラドックスボックスに関しては、俺が原因というか、キッカケであるから、その点だけは別に深く考えっていいよ。ってそういうことだな」
一応、ここまで説明をしれくれた三条カノンに対して、ある程度の会話の着地を見出すのは礼儀だと思うので、俺自身としての答えや方向性ではないにせよ、この考えで二人の中での合意ラインを作って置こうと思う。
「そう、それ、それな」
「おまえ、若者か」
「なに言ってんの、若いじゃん」
三条カノンは、すこし、小馬鹿にしたような顔で、俺のツッコミを返してくる。
確かに。
さっきの夢なのか、なんなのか、わからない、ただはっきりと覚えているその感覚やその事が自分が高校生である感覚を少し鈍らせていたのかもしれない。
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