11. 認識のズレから始まる詰められ地獄

「こんにちは。四宮シノアさんだっけ?。私は、三条カノン。

 自己紹介はいらないくらい、お互いのことは把握しているかもしれいけど、一応初めて顔を合わすわけだし、自己紹介と挨拶だけはしておこうと思って」

 三条カノンは、自分のほうが有利な立場にいるような立ち振る舞いで挨拶を交わしてきた。

 ハラハラどきどき。俺が曖昧にしている事がすべて明らかにされたら、一体、どう対応していけばいいのだろうか。

 場合によっては二人から詰められてしまう可能性もあるので、とにかく、この事態の対処方法を頭フル回転させて模索する。


「あら、こんにちは、三条さん。昨日は、よろしく、酒池肉林していたみたいだけど。体だけで、この人を手に入れられると思わないでね」

 四宮シノアは、私が本妻で、あなたは二番手、なんなら妾なの、そんなあなたがでしゃばっていい場面じゃないわ。と言わんばかりの横柄な態度はすばらしいものだった。参考にはしたくないけど。

 四宮、、、、、俺と一緒に側に居るのは生理的に受け付けないくらいなのに、他の競合が現れた時に、その競合を潰そうとする意思は、究極のツンデレだな。


 キング of ツンデレ


「は?!酒池肉林なんてしてないし。如月、なんか余計な事いった?」

 するどい眼光で、グルル!!っと野生動物の威嚇とも捉えられない体勢で、俺を睨みつける三条カノン。

 四宮シノアの言葉たくみの戦略にはまってはだめだ。

 四宮シノアは勘がいいから、わからないように伝えたい。

 アイコンタクトまではいかないが、じっと見つめるが、三条カノンの表情を見ている限りは、全然伝わってなさそうだ。

 三条カノンは、こういった以心伝心できなさそうなだよな。。。


「三条、そんな事俺がいうわけないだろ。仮に本当に酒池肉林したとしても、言わないから安心しろ」

 そう言って俺はドヤ顔で三条カノンに答える。あえてこういう言い方をすることで、現実性のなさを四宮シノアに伝える布石も兼ねつつ。


「仮にも本当にも絶対にありえないから」

 三条カノンは、顔を赤らめて怒り口調で全力否定する。


 三条カノンの全力否定に言葉だけであればハートブレイクしそうになるが、顔を赤らめていて、あたふたと恥ずかしがって行動も含めた言い方という要因が追加される事によって、まんざらでもないのかと思わせてくれる。

 ただ、自分の気持ちの中でだけの解釈が大事である。いつの時も必要なスキルである。

 勘違いかもしれない発言をすることは、間違っていた時に後々ものすごく恥ずかしいし、正解だった時、そのこと自体を望んでいないのであれば取り返しもつかなくなるので、やはり言うべきではない。


「結局、如月はどちらと一緒に行動したいと思ってんの?」

 やや怒り口調で、はやく結論を出せ。と言わんばかりに、四宮シノアと話をしていくのは無理と判断したのか、三条カノンは俺に振ってくれる。

 三条カノン。今、その言葉は一番言ってはいけない術式だぞ。すべてを無に帰す魔法でも習得しているのか?


「俺は、三条とも四宮とも今の時点では同じ時間を過ごしていきたいと思っているので、申し訳ないけど、どちらか一人を選んでくれと言われても難しい」

 ついに、修羅場の幕開けとなる発言をお披露目することになる。


「どちらかを選ぶとかできない。とは。ものすごい上から目線ね。

 私も三条さんもあなたに選ばれたくて選ばれたくて。ってわけじゃない事を忘れちゃだめよ。

 むしろ、止むを得ずなのよ。だから、この会話になっていること事態、恥ずべき内容としてとらえたほうがいいわよ」

 四宮シノアからの、上から目線を苛まれる。上から目線をどこの誰が、どの口でいってるんだ。っと言ってやりたいが、やめておく。

 言葉の仕返しが怖いから。


「わかってる。別に上から目線じゃない」

 話題が別の方向に持っていけるのであればそれもありかとは思ったが、その場を取り繕ってもしょうがない。

 一番言い解決方法を、頭フル回転で模索する。


「ちょっと待って。昨日、三条の考えに賛同するし、これからの俺にとってのすべてだと考えてもいいと思っているから四宮とは縁を切る。だから、待っててくれ。そういったよね?」

 三条カノンと捉えている"事実"という表現は正しくはないが、認識を俺に対して凄みながらぶつけてくる。

 おいおい三条カノン、賛同するよ以降の言葉をどう捉えたらそうなるんだ。

 歪曲も角度曲がり過ぎるともはや別の出来事だな。

 前略、お父さん、お母さん。元気ですか。俺は今、昨日一生懸命やり取りした人達と結構会話のかみ合ってなかったことを知りました。人の思い込みってものすごく怖いです。

 ガクブルです。


「それってどういうこと?三条さんに言っていることと、私に言っていることが随分食い違っているわね。私には、生涯をともにすることをあんなに懇願していたくせに。もちろん、私は拒んだけれども」

 四宮シノアはものすごい眼光で、哀れむような顔で俺を見る。


「ちょ、それって四宮にも私にもいい事を言っていたってこと。完全な裏切り行為じゃん。八方美人じゃん」

 もちろん三条カノンは、眼光どころではない。全力で迫ってくる。


「三条、四宮、なんでそうなる?」

 俺の人生において、こんな事態に巻き込まれることを一体誰が想像したであろう。

 俺、だって、見た目も普通だし、頭も普通だし、友達いないし、性格は結構いい奴だと思うけど、俺だよ。

 相当前提がおかしいといえ、二人の美少女からどっちを取るつもりなの?と迫られている状況は、なんともいえない高揚感を覚えてしまう。今なら、何か究極魔法も習得できるんじゃないか。


 三条カノンと四宮シノアに両腕を引っ張られて引きちぎれそうになる俺は、

「おまえら待てよ。俺にとっては両方大事なんだよ。すぐに結論を出させようとするな。もっとお互いがお互いをすべて知り尽くした時でないと俺は選べないから。辛いけど耐えてくれ」

 そうラブコメ、ハーレム、誰が一番大事なのワチャワチャにおいては上記の返答がいいだろう。

 妄想乙。


 実際は、両腕を引っ張られているわけではなく、両サイドから今にも噛みちぎられて天に召されてしまいそうな圧力に侵されている。


「ちょっと待て。三条も四宮も落ち着け。二人とも思い込みがすぎるぞ。内容が冒頭以降は、解釈がやや飛躍している。

 あー言った、こー言ったは事態を悪化させるだけだから、ここで改めて俺の気持ちを伝えさせてくれ」

 この圧力に耐え切れず、二人に落ち着いてほしく、事態の整理を理解してほしく、もはやお願いの意向が伝わってほしい気持ちで、可能な限りの熱量で伝える。


「思い込みがすぎるって、如月くん、あなたの言動がそうさせているのは忘れちゃだめよ。あなたはどこまでいっても変態なんだから。それを忘れちゃだめ」

 四宮シノアは諭すように俺にそう言った。

 なんだか、変態を諭されるように言われると、すごい悲しい気持ちになる。


「とりあえず、頼むから今は、真剣な表情で変態であることを自覚しろと諭すのはやめてくれ」

 流そうかと思ったが、大事な局面でのやりとりと変態がセットになるのは、今後のことを考えるとよろしくないので、激しく主張しておく。


「飛躍してないし、四宮の言う通り、如月は絶対に悪い。期待させるようなこと言わないでよ。軽蔑する」

 三条カノンに関しては突っ込みどころ満載な気もするが。


 だって、最初に俺、言ってるぜ。

「三条と四宮との関係値、はたまた新しい誰かが現れた時に、各自とどういった関係性を築いていくかもある程度、シュミレーション立てておきたいしな」

 そういった俺に三条カノンが詰めてきたのは忘れているんだろうな。

 ただ、詰めれられただけで、その場を取り繕うような発言をしてしまった俺にも問題は十分ある。


 深呼吸をする。ここから先に伝えるメッセージは、今後の俺の運命を左右するかもしれない。

 そう思って発言をしようとすると、少しだけだが緊張する。


「真面目な話。俺にとっては昨日、今日の情報であって、心の整理すらまともについてない。

 そしてすぐ心の整理がつくことであるとも思っていない。

 三条や四宮の二人がいう道しるべは、厳しい言い方をすると俺のことを100%思っての道しるべではないからな。

 もちろん、その事、事態を悪く言うつもりがない。

 人は、自分のために生きる事は大事な事だと思う。

 自分が自分を大事にしなかったら誰が大事にするんだ。

 だから、自分が自分を一番大事にしてあげなければ可哀想だ。

 自分のために生きて、自分の周りの人のために生きて、自分の周りの周りの人のことまで考えられて生きられるようなるのが、使命を全うすることだと思うしな。

 三条の提案も四宮の提案も、三条や四宮が自分たちを一番に考えた上での提案でもちろんいいと思っているし、俺には顔も見えないし想像もつかない。

 三条や四宮にとって大切な周りの人たちとの願いの帳尻にあわせて、その上での俺の願いの帳尻をあわせての着地を見出してく行くのはいいと思うんだ。

 だが、それは俺にとっては、三条や四宮も今は自分にとっての大切な周りの人カテゴリに入るか入らないかくらいで、または三条や四宮にとって大切な周りの人達は、俺にとっては、周りの人が大切にする周りの人だから、その願いは思惑でしかないんだよ。

 だからこそ、俺にとっては、これから大切な人に入るかもしれない三条や四宮が今の時点で、見ているゴールが違っていたとして、今の時点では関わり合い方にあまり違いがあるようにみえないから両方との距離感を同じくらいでいたいと思っている」


「それが俺の気持ちのすべてだ」


 ふー。しゃべった、しゃべった。俺のスキルに【スピリットトリガー・マシンガントーク】というスキルの習得を記載しておこう。


 俺の【スピリットトリガー・マシンガントーク】が全面的に聞いたのか、三条カノン、四宮シノアは硬直状態になった。


 この流れで一気に畳み掛ければいけるかもしれない。


 そう思った瞬間


 「おい、お前ら、何やってるんだ。今何時だと思ってるんだ」

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