9. 妹登場と確執
朝、目覚める。
昨日起きたことが夢であったら、また省エネな毎日が過ごせるのにな。と思う。
顔洗って、歯を磨いて、リビングに向かう。
「あ、お兄ちゃん、おはよー」
「おー、おはよう」
こんな時でもヒナリは俺の心を癒してくれるな。
万歳、シスコン。
ご飯食べながら答えの出ないこーだったらいいのになー、あーだったらいいのになーと考える。
「お兄ちゃん、目の視点が明後日の方向向いてるよ。キモいよ」
「おいおい、朝からおはよう以外の開口一番が、それはないだろ。目がどこかいってるけど、何か考え事?でいいだろ」
「そっか。お兄ちゃん、目の視点が明後日の方向向いてるよ。キモいよ。何か考え事?」
「おいおい。肝心なところがなくなってねーぞ」
「あはは」
あはは。じゃねーよ。まったく可愛いな。おい。
親は忙しいので朝からほとんどない。だいたい朝は二人で顔をあわせてご飯を食べる。
最近は、ヒナリも部活が忙しそうなので、朝も夜も一緒にご飯食べる時間とかが少なくなってきてるが。
部活もなければ、やることもほとんどなくて暇なお兄ちゃんは少し寂しいが、それをいうとキモがられるので、言わない。
「まーちょっと色々あってな、指摘してくれて助かったよ。
このまま焦点合わずに、ずっと1日過ごしていたら、本当に危ないやつだったからな」
「そうだね、そんな姿を晒したら、さらにお兄ちゃんと絡む人がいなくなっちゃうから気をつけないとね」
ヒナリよ、優しいのか、蔑んでいるのか、どちらなんだ。
できれば、お兄ちゃんにもカッコつけたい願望とプライドがあるから、そんなにカッコ悪い前提の話をしないでおくれ。
とりあえず、心の中でだけ抗議しておいて、言われた言葉はスルーする。
「じゃ、先に行くね。行ってきまーす」
「おー、行ってらっしゃい」
妹を見送り、また瞑想タイムに入る。
食事して、制服に着替えて、荷物確認して、髪型セットして、家を出て、鍵閉めて、駅まで向かって、電車にのって、駅から降りて、学校に向かう。
瞑想しながら。
校門の前に、四宮シノアがいる。
俺を待っているのか。
「よう」
とりあえず声をかけてみる。
「おはよう。昨日の夜は有意義な時間を過ごせたのかしら?」
「あーおかげさまでな」
そう言って、四宮シノアを前を通り過ぎようとしたその時。
ジャケットの襟を掴まれる。
「お、おい、何やってんだよ。ジャケット破けるだろうが」
無論、ちょっと引っ張ったところでジャケットが破けるわけではないが、こういった行動はあらかじめ、抑圧しておかないと、今後もされる可能性があるから、あえて少し盛っていう。
だが、俺がそういうも、四宮シノアは、掴んだジャケットは離してくれつつ、表情一つ変えずにこう言った。
「あら、夜の有意義な時間という意味は、嫌味のつもりで言ったのだけれども。そのままの言葉の意味で捉えられると非常に困るのだけれども」
「少しいいかしら」
そう言って、四宮シノアと俺は、校門から教室に向かうことはせずに、校舎裏に移動する。
あれれ、おかしいな。
俺は、昨日の夜、四宮シノアとやりとりしたあとに、家で過ごしていた時間に対して、色々ちゃんと考えてくれたのよね?
“有意義”な時間を過ごしたのよね?という意味合いで言われているのかと思ったが、この反応からするに違う。
校舎裏にて
「四宮、お前、何が言いたいんだ?」
わかりきっている答えの質問をするのも馬鹿らしいが、最後の最後まで可能性を模索すべきだ。
よって、なんのことを言われているのかわからない。その体裁は崩さずに聞いてみる。
「逆に聞くけど、如月くんは、昨日のことをどう思っているのかしら?」
四宮シノアは、意味深な質問返しをしてくる。
「どう思っているのか?という質問も面白いな。にわかに信じがたい破茶滅茶な話を聞かされたことと。
四宮は、俺と生涯を共にするかもしれない可能性があって、それは四宮的に恥ずかしくて嫌だから、とりあえず最初は素直には受け入れず、二人で色々模索していこうという棚上げをしつつ。
結局、その選択肢しかないのを受けられないで抗っていくんだな。ってこと。以上が、俺の昨日の、総括だ」
四宮パートのコメントをシンプルに答えてみる。
「私が、恥ずかしさで逃げようとしているのが、見ていて愉快ですって?」
「いやいや、待て待て。一言もそんなことを言っていないぞ。なんでそんなに敵意むき出しの捉え方になっちゃんですか?」
びっくりするくらい改ざんされた捉え方からの返答に、なんてことだ!!っと言いたくなるほどである。
四宮シノアよ、なぜそういう捉え方になる?
「屈辱ではあるものの、一つの選択肢としてはもちろん入れているわ。最悪の最悪のパターンのカードではあるけれど」
四宮シノアよ、昨日も思ったか、言ったか忘れたけど、言い過ぎだぞ。
でも、言わない。返しが怖いから。だから昨日も思っただけなのかもしれないな。
「そんな、どうでもいいことの話をしているんじゃないの。そんなに無能っぷりを全面に出さないでくれる?」
「お、おう」
四宮シノアは、少しキレ気味に迫ってくる。ものすごくキレているかどうかわからない。
基本、ポーカーフェイスだから。でも、表情以外の声色や行動は明らかに怒っている人の行動だから、きっと少しキレている。っと思う。
そして、いつものごとく俺をディスる。無能っぷりを全面に出さないで。って。普通なら、即、泣くぜ。
やはり三条カノンのようにいかないか。あんまり調子に乗ってからかうと、何百倍にもなって罵倒含め返ってきそうなので、基本的には、あまりにもひどいこと言われる以外は、涙と共に飲み込もう。
ここまでのやりとりから察するに、三条との接触を把握しているのだろう。
なぜ、直接言わないんだ。
プライドが許さないのか?どこまでも上から攻め込みたいのか?
どうもこうにもめんどくさいツン女(じょ)だな。
「そういえば、昨日、四宮の後に、別のエージェントとも接触したな」
思い出したかのような言い方にしておく。駆け引きしていたなんて思われたらこれまた大変な目に合うと思われるので。
俺がね。
「そう。それだけ?」
四宮シノアは、彼氏とか旦那とかできて、何かを追求するときも、きっとこんな風に言葉の外堀を埋めてくるのだろう。
怖すぎる。俺はやましいことは何もしていないはずなので、しょうがない。四宮シノアが納得するまで、情報開示をし続けよう。
もう駆け引きは、俺の負けです。降伏します。
「部屋にいきなりいてさ。敵かどうかもわからないので、ちょっと一悶着して、害がないのはわかったので、その後色々話をして、とりあえずまた後日ってことで帰ってもらったな」
「そうなの。へー」
「なぜ、嘘の話だってわかってますが、一応聞いていますよ。みたいな返答の仕方をする??」
情報開示の駆け引きは降伏宣言しつつも、本当にもう何もありません。と泣き出してしまうまで、同じく、そうなの?それだけ?そのなの?それだけ?と来そうで怖くて、俺なりの反撃をしてみることにした。
「そう思うのはきっと、如月くんが、やましいことを思っているからよ」
そう四宮シノアはドヤ顔をそう言い切った。
しまった。反撃が裏目に出たか。
「でも、もういいわ。如月くんが、その子を押し倒して何かしようとしていたこと事態はそんなに気にしていないの。
だって、如月くんだもの。ただ、変態とこれからも行動を共にするとなると、変態は、自分がどれだけ害を他の人に及ぼしているかを知りたくて、事の事態を聞いてみたかったの」
そこかーーーーーーーーーーーーーーーーー。
「見ていたのかよ。だったらわかるだろ。なぜそういうことになってしまったのかを」
もっとも触れられたくないその箇所をなぜ四宮シノアに知られているのか、そのすごい大事な部分を俺は解明しなくてはいけない。
ただし、その前に、四宮シノアにおける俺の属性が完全にあかん方向に行ってしまっているので、そこからの補正がまずは大事だ。
言い訳はいけない。事実の認識の理解に忠実に。忠実にだ。
「わからないわ。押し倒したのもわからなければ、泣いていたのもなぜかわからない。わかるのは、如月くんが、鬼畜ってことだけ。ものすごいイヤラシイ顔をしていていたわ。」
変態から鬼畜に変わってしまった。ただし、得たものがあった。もちろん、鬼畜という称号ではない。
"見られて"いたのは、映像だけなんだな。会話まではわからない。四宮シノアとのやりとりから察した。考えてみたら、四宮シノアとのやりとりも三条カノンは把握していなかったようだし、奴らの盗聴なのか盗撮なのか、はたまた俺の知らない特殊な何かは映像だけなのだと理解した。
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