第九十七話 血の繋がっていない姉妹の入浴 その2

ミカとメアリーの義姉妹は、二人とも脱衣を終え、さあいざバスルームへ。

 ミカがその扉を解放させると、さっきの脱衣所とは打って変わって不規則な模様の大理石の壁や床がお目見えになる。

 バスは地面に接着されているユニットバスで、シャワーとは別々と、広めということ以外は、割と一般的な風呂と近い。


 「さあメアリー、背中を洗ってあげる」

 「おお、お言葉に甘えて!」


 ミカの言葉にメアリーがあっさりと載ると、ミカはシャワーで濡らしたタオルにボディソープをつける。

 だが、彼女の言葉は建前である。

 思惑は別にあった。


 (メアリーの胸を触る......!)


 これを考え付いたのが脱衣を行っていた時である。

 上を脱ぎ終わったメアリーをこっそりと見てみると、二つのふくらみが確認できた。

 その時に気づいたのが、


 (自分より大きい)


 である。

 メアリーの裸を見たのはかなり久しぶりで、最後に見たときはぺったんこであった。

 それでも、日常生活で二次性徴が始まっていることは服の上からでも確認はできたが、その服が邪魔で、その具合がいまいち分からなかった。

 そして、その生涯を取り除いた状態で見てみると、彼女にとってショックを受ける現実が待っていた。


 (なぬ)


 中学生でこれは大きくないかと思っていたが、よくよく考えてみるとこれは普通だ。

 むしろミカが小さいのである。

 ミカも服を脱いでメアリーと比較するような形で確認してみるが、まな板と呼んでもあまり違和感がないくらいの小ささであった。

 触ってみるが、とてもではないが揉んだ心地がしない。


 (と、年下のくせに......!)


 こういうわけで。自分より大きい胸を触る気分はどうなのかという好奇心と、メアリーに対する逆恨みから生まれたのが、この陰謀である。


 「ほいっと」


 メアリーが調子よくバスチェアに座ると、ミかは彼女の背中に泡にまみれたタオルを当てる。

 そして、両手でゆっくりとこすり始める。


 「うぅ」


 メアリーはそれが気持ち良かったのか、小さく声を出す。


 「気持ちいいか?」

 「うん!」


 と、メアリーはボディソープを取り、ほかの部分を洗い始める。


 (好機!)


 今ならほぼ無防備だと、ミカはすぐにタオルから手を放し、それを自らの平胸で抑え、メアリーの脇の下を通って一気に近づく。


 モミッ


 「うひぇ!?」


 メアリーは双丘が侵されたことで素頓狂な声をあげる。

 一方のミカは、そのさわり心地を堪能中であった。


 「ふふ、いい柔らかさね」

 「ちょお姉様止めてって!」


 メアリーは動揺してか早口になり、ミカの腕を乱暴に離す。

 能力を使っていないのにも関わらず、予想外に動きが素早い。


 「お、お姉様......これをするためだけに......ひどいですぅ......」


 メアリーは顔をカッと赤くし、胸を隠している。


 「良いじゃないの。羨ましいと思っただけよ」


 ミカはニヤニヤとしながら言う。

 その後、メアリーは体を全て洗い終えると、


 「お姉様、今度は私がやります」


 と、真剣な声でミカに座るように促し、タオルを代える。

 ミカは素直に従うが、メアリーの腹のうちは既に読んでいた。


 (きっと仕返しが来るはずだわ)


 案の定であった、しばらくメアリーに背中を洗わせていると、ある時に圧迫感がなくなった。

 攻撃が来ると確信した彼女は、すぐに両腕で胸を防御する。

 その直後に、後ろから飛び出してきた手が目の前で止まる。


 「うっ」


 いたずらがバレたかのような声がメアリーの口から出る。


 「貴方のやることは見通してましたわ。能力を使おうにも、私の腕をどかすのは相当な労力が必要でしょ?」


 メアリーの『世界凍結』の弱点は、当然彼女も熟知している。


 「能力を発動中、行動するときは通常の何倍もの体力を消費する。わざわざそんなことをしてまで私の気持ちのよくない胸を触るのかしら?」

 「むむ......」


 メアリーは悔しそうに、奥歯をかみしめる。

 ミカも自分で言っておいて悲しくなってくる。


 (......けど、これで反撃されることはないし、大丈夫)


 しかし、その考えが甘かったことは直後に思い知らされた。

 ひとまず安心していると、視界の下の端から移動しているのが分かった。


 (ん、力ずくでこじ開けるか......)


 ミカはそれを確かめるまでもなく、予め腕に力を入れる。

 が、確認しなかったのがまずかった。

 突如、下半身の方から強烈な衝撃が走った。


 「きゃああああああああああああああ!!!」


 ミカは甲高い声を上げながら椅子から飛び跳ね、大理石の床に倒れる。


 (!?!?)


 何が起こったのか、頭が真っ白になって考えられなかった。


 「下も防いでおかなくちゃ、お姉様」


 そういったのは、ミカを上から見下ろすメアリーであった。

 どういうことかと分かった瞬間、頭脳の活動は白から赤へと即座に切り替わった。


 「メ、メアリー......」

 「えっ」


 ミカの気迫にメアリーは顔を引きつらせる。


 「あ、貴方いったいどういうつもりなの!?」


 ミカは息を荒げながら、顔を真っ赤にして怒鳴る。


 「いや、お姉様私の触ったから......」

 「もう貴方とは一っっ生入りませんから!!」


 「ええ、お姉様ぁ」と許しを乞うメアリーだが、ミカはそっぽを向く。


 「許してください~......」


 ※ ※ ※


 「......なんで貴方も入ってくるの」


 バスの中にメアリーも入ってきたことを鬱陶しく思い、イラつき気味で問うミカ。

 広い風呂とはいえ、全身を伸ばすには二人はさすがに狭い。


 「いいじゃないですか。それよりそろそろ許してもらっても......」

 「確かに触ったのは私も悪い。けど、だからと言ってあんな重要な部分に触れるなんて、さすがに度が過ぎてるわ。許せない」

 「う~......」


 涙声でメアリーが謝罪するも、ミカはいまだに許せなかった。


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