第五十八話 P市攻略作戦その4:スタイルη
「『スタイル
クローバー側の空と、ベンガル率いるNo.12班側の空とでは、明らかに雲の割合が違っていた。
蒼い光がクローバー達の首を通ると、複数の頭が次々と宙に浮いた。
「この刃は特殊なプラズマによって構成されていて、僕が設計した通りの形になってくれます。そして物体に触れると、その形を保とうとして、鋼鉄並の固さになります」
ベンガルはクローバー達に向かって右腕に装着されている光る剣について自慢げに話す。
「最初は鉄の剣だったんですが、デリックさんに改良させてもらいました。そのおかげで――」
と、剣の凄さを見せつけるためにクローバーの一人の腹部を貫いた。
「ぶごっ」
その後、少しずつ上へ斬り上げ、その度に鈍い音が聞こえてくる。
ベンガルにはこの音は不快でもなければ気持ちが高ぶる訳でもない。
そして終には脳天を2つに分けた。
血が切断した後から飛び出してくる。
「折れることも、切れ味が落ちることも無くなりました!」
つぶらな瞳を笑わせる。
ベンガルの班員も勢いに乗りながら戦いに参加する。
メンバーはバタバタと倒れていき、このままベンガルの無双で終わるのかと思われた。
「残り数人ですよ!」
と、班員に状況を知らせつつ、一人のメンバーを斬りつけようとした。
しかし、ベンガルの蒼く光る剣は受け止められてしまった。
「ん?」
何かと思えば、白黒の髪をしたリリアンネが、斧を使ってベンガルの剣を受け止めた。
(幹部!)
笠置姉妹が襲われたあの人物だと察したベンガルはすぐに後退した。
「もう、好きにはさせない」
そういってクルクルと長い斧を回すリリアンネからは、ほかのメンバーたちとは違う、強者のオーラが出ているように感じた。
ベンガルは右腕から飛び出しているプラズマを消すと、纏っていた機械も分解され始め、やがてキューブの形に変形した。
「......変な武器」
「すごいですよね? この武器はいろんな形に変えることができましてね、
と、ベンガルは意図的に挑発を交えながら武器の説明をする。
「......殺る」
リリアンネは挑発に乗ったのか、斧の先をベンガルに向けてきた。
「......下がってて下さい」
ベンガルは班員に注意すると、キューブを空中に投げ、
「『スタイル
と唱えた。
すると、キューブは空中で分解され、その部品は両腕、胸部、腹部、頭部、下半身の順番にベンガルを包んでいく。
やがて、彼の全身は光沢のある金属に覆われ、顔の、三日月を下にしたような穴から赤い光が見える。
「やっぱり、少し視界が狭いですね......」
彼からは、視界が少し小さくなっただけで、それ以外は問題無く見えている。
「じゃ、行きます!」
と、ベンガルはリリアンネに向かって走り出す。
そのスタイルの能力で、普通に走るより速く、軽快に動くことができる。
リリアンネは斧を振り回すも、ベンガルはそれを軽々と避ける。
「速い......!」
「このスタイルはαより素早さや攻撃力は劣りますが、その代わり全身に鎧をを装備することによって、αの欠点である防御力の低さをカバーしました」
と、リリアンネの攻撃をかわしながら喋る。
「はっ!」
と、攻撃の隙を見つけて腹部めがけて殴ろうとする。
しかし、リリアンネは咄嗟に背中を反らしたため、空振りに終わってしまった。
「!?」
ベンガルはあの体勢でよけきることは無理だと思っていたので、これは予想外であった。
「私も速い」
と、リリアンネは身体を起こすと、その勢いで斧をベンガルに向かって振り下げてきた。
彼はなんとか避けるも、リリアンネは攻撃のスピードをさらに上げて、ベンガルに襲い掛かる。
(避けきれない!)
と判断し、リリアンネの攻撃を腕で受け止める。
斧の柄で受け止めたので、斬られることは無かったが、左腕に痛みが走った。
「いっ!!」
とても女性とは思えない攻撃力の高さだ。
その後もベンガルは打撃を加えようとするが、尽くかわされてしまう。
(くそ、攻撃力とスピードを兼ね備えている上に体がも柔らかい......これはやばい)
と、自分が今不利な立場に立たされているということを思い知った。
(体力は絶対リリアンネのほうが多い。長期戦になるほどもっと不利になるぞ。どうする? スタイルαに変えるか? しかし、それじゃ一撃でも受けたら終わる――)
「喰らえ」
と、思考を巡らせていると、リリアンネが発したエネルギー弾が、ベンガルに直撃した。
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