第二十四話 大魔王に適応する

 ペソの掌から出る巨大な火炎。

 それはペソの攻撃が当たって狼狽えているミカに直撃した。


 「フハハハハ! この時を待っていた!!」


 ペソは大きく声をあげて笑った。


 「これは使うと体力が一気に減ってしまう、これはとどめの時だけに使う大技だ!! 思い知ったか!?」


 彼は彼女を倒したと確信し、その喜びを抑えられない。


 「おい、貴様らも悲しむがいい! こいつはもう只の骸骨だ!」


 だが、彼らは無表情になっている後、そのうちのエドナはニヤッと笑いだした。


 「何がおかしい?」


 ペソは眉をひそめた。


 「馬鹿だな、お前は? ミカはまだ生きている」

 「なに?」


 彼はそれを確かめる様に、火炎放射を止めた。

 すると、そこには骸骨ではなく、服こそ炎によって一部焼けているものの、体は無傷のミカ・レヴェリッジだ。


 「!!?」


 ペソは戦慄したかのように顔を歪め、後退りをした。

 彼女はさっきペソにパンチされた血が流れている右腕を押さえてる。


 「......貴方のその大技は、手品の類かしら?」


 ミカは冷めた目でペソを見た。


 「なんなんだ、この化け物め!!」


 ペソは恐怖して、そう叫んだ。


 「でたわね、彼女の能力......『超適応スーパーアダプト』」


 その能力は、彼女の体に悪影響を及ぼすあらゆるものを無効化できる。

 灼熱のマグマに浸かっても水泳プールのように泳ぐことができ、絶対零度でも身体は正常に営み、青酸カリをどれだけ彼女の体内に入れようとも、彼女は平然と歩くことができる。

 さっきの火炎放射で彼女は火傷一つ負わなかったのは、この能力のせいだ。


 ただし、すべてを無効化できるというわけではない。

 「圧力」と「光」は無効化できない。

 彼女がペソのパンチやビームを避けたのも、この弱点があるからだ。


 「く......そんな能力があるとは......」

 「残念だったわね、ペソ」


 彼女は自分の周りに小さな輪を大量に発生させて、そこからビームを出す。

 するとペソは、胸のあたりを腕でガードした。


 「!」


 ミカはその防御行動を見て感づいた。


 「もしかして......」


 そういうと、ミカは背中に周りこみ、そこにビームを一発。

 ペソは急いでその背中を右腕で防いだ。


 「ふっ!!」


 ペソは反対の腕でミカを自分の周りから追い払った。


 「あなたたち!」


 彼女はエドナ達を自分の近くに来るように呼んだ。

 ペソはその4人をビームで攻撃しようとしたが、彼女は4人の周りにバリアを貼り、それはできなくなる。


 「......あいつの弱点、見つけたわ!」


 ミカはついに弱点が見えたことを喜んでいるのが顔に現れた。


 「え?」

 「恐らく、胸辺りの高さが弱点よ。背中を攻撃したときの腕の位置や、その前に攻撃したときの反応からして、恐らくそうだわ」

 「で、俺たちはどうすればいいんだ?」

 「僕の剣は通じないし......」


 ペソは、バリアを壊すのをあきらめたのか、その4人の会話をイライラした様子で待っている。


 少しすると、話し合いが終わり、バリアが解けた。

 それと同時にペソは彼らに向かってビームを放つ。

 彼らは避けて、それぞれ別方向に散らばる。


 彼女は気砲をペソの胸に撃ち込む。

 ペソはそれをガードすると、今度は背中からミカが攻撃し、それも腕で防御する。


 「おのれ!」


 ペソは彼らに翻弄されていると、エドナがペソの足を引っ掛け、彼は前に転倒する。


 「ぐわっ!」


 ペソが倒れると、アシュリーが彼の左手を剣で突き刺した。


 「よし、上手く骨を避けて刺したぞ!」


 彼は、手の中でも柔らかい、親指と人差し指の付け根の間を刺したので、上手く剣が通ったのだ。

 ペソは弱点の背中を右腕で隠そうとするが、その右手は影に包まれた。


 「残念だったな......」


 黒幕さんはそう言うと、彼の影はペソの右腕をもぎ取る。


 「ぐわああああ!?」


 ペソは悲鳴をあげた。

 そして、彼の背中に、ミカが乗った。


 「や、やめろ......」


 ペソは声を荒らげて訴えた。

 しかし、その声は彼女には聞こえない。

 彼女はペソの背中に輪を出現させた。


 「......さようなら」



 彼女は輪の前にバッと手を置いた。

 輪はビームをだし、ペソの背中を貫いた。


 「ぐわああああああああああ!!!」


 ペソは断末魔をあげる。

 目から光が漏れている。

 彼は頭や足を暴れさせていたが、少しするとそれは収まった。


 「......終わった」


 ミカは彼が動かなくなったことを確認して、背中から降りた。


 「今までで一番強かったわ......」


 エドナは手を戻し、翼は体の中にしまっている。

 すると、大魔王の終わりを告げるかのように、城は崩れ始めた。


 「もうそろそろ出ないと。僕はペソと添い寝なんてごめんだ」


 アシュリーはペソの左手に刺さってある剣を抜きながら言う。


 「......じゃあみんな、城が潰れないうちにここを出ましょ」


 ミカは、王室の扉に向かって歩いた。

 残りの3人も、彼女についていく。


 これで、大魔王ペソと人類との戦いは終わった......


 




 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る