第十八話 ピエロのマルク その1
「はぁ、見つからないなぁ」
アマツ達は、巨大な木の根の上に座って、休憩していた。
「マルクって言ってたかしら? あいつもきっと私たちを探しているわよ」
アリアスは両腕の機会の調子を確かめるかのように、手を動かす。
「恭介さんって、上級最強なんでしたっけ?」
「おお、そうだけど」
上級最強と言われている榎田恭介は、アマツの質問に答えた。
「俺は、『門番』とかいうのに任命されてんだ」
「門番?」
「うん。門番は、ナンバーズに入るための基準で、少なくともより実力が高くないと、ナンバーズには入れない」
眠たそうな糸目をしている恭介は、これでも実質ナンバーズの実力を持っている。
(俺もこの人を超えれば、ナンバーズに入れるのか......でも、あまり強くなさそう......)
アマツはそう思った。
そりゃそう思うであろう。
彼は見るからに下級戦士という雰囲気を出している。
実際にレベル4のエネミーを倒した時、門番であるのもかかわらず彼を見たことがない一般人から「下級戦士なのにすごいですね!」と言われたことがあったほどである。
「あと、俺はお前らがピンチの時以外は、行動しないからな。役員もそういってたし」
「はい、分かっています」
アマツは頷いた。
「じゃ、そろそろ行きましょ」
アリアスはぬかるんだ地面を音を立てながらたった。
その時だった。
どこからともなく腕が伸びてきて、その腕はアリアスの体に巻きついていく。
「!?」
突然の出来事に全員驚いた。
そしてアリアスは空中に持ち上げられたかと思うと、木のほうに投げ飛ばされた。
彼女は木に激突し、そのまま倒れこんだ。
「ア、アリアス!!」
「ヒャーーヒャヒャ!!」
その手が吸い込まれていく方向から声がした。
「お前らは、このマルク様が倒してやる!」
その声の主は、玉乗りをしているピエロだった。
顔面は白く、目は本来白くなっているべきところも真っ黒であった。
「お前か、アリアスを飛ばした奴は!」
「その女はアリアスっていうのか! そうだ、俺様だ!」
マルクは玉のバランスを取りながら彼らを侮辱するように舌を暴れさせていた。
「さて次はお前ら......のわっ!?」
マルクのほうからビームが飛んできた。
彼はギリギリで回避した。
その正体は、アリアスのインシネレーションだ。
「何、私は死んだみたいな言い方を......」
彼女は気が当たった脇腹の部分を押さえながら立つ。
「なんだ、まだ戦えるのか......ぐえ!?」
今度はアマツの炎の拳がマルクの頭に飛んできた。
今度は彼はよそ見をしていたため、もろにそれを喰らう。
「ほら、俺もいるんだぞ!」
アマツはマルクに行った。
「ぐぐ......よくも俺を殴ったな!」
そしてそれを、ジャグリングし始めた。
「な、なんだ?」
アマツは彼の突然のジャグリングに驚きを隠せなかった。
「はーい、喰らえっ!!」
彼はジャグリングのボールをアマツやアリアスに投げつけた。
そのボールは、シュウウウと音を立てている。
「何の音だ......?」
「アマツ、それは爆弾だ!!」
アリアスはボールの正体を知り、それをアマツに伝える。
「な、まじか!?」
その声が耳に入ったアマツは、すぐに回避を試みる。
アリアスも痛みを耐えながら避けた。
「く、痛い......」
その直後、その爆弾は爆発した。
そのうちの直径1メートルぐらいの木のそばにあった爆弾が爆発すると、その木はゆっくりと倒れて行く。
「す、すごい威力だ......」
アマツはその威力に度肝を抜かれる。
「ヒャヒャヒャ、驚いたか?」
マルクはアマツたちを挑発するように言った。
「はっ、そんなのたいしたことないぞ!」
アマツは爆弾の威力に驚愕したくせに、強がってマルクにいう。
「ヒャヒャヒャ、嘘をつくんじゃねぇ!」
(ば、ばれた......)
マルクに心を読まれ、ショックを受けるアマツ。
「......ところで、あの糸目はなんだ?」
マルクはそういって、恭介のほうに向いた。
「ああ、俺は関係ないよ。どうぞ構わず戦ってくれ」
恭介はやる気のなさそうな表情を変えずに言った。
「そうか......じゃあ、この二人は粉々にしてやる!!」
マルクは、ブーメランを取り出し、アマツに投げ始めた。
「お、来た!」
アマツはそれを避けると、そのブーメランは木の枝にぶつかった。
ブーメランはその枝を難なく切断した。
「うおら!」
アマツは火炎放射をした。
が、これもマルクにうまくかわされた。
周りの木はその炎によって燃えている。
「次はこれだ!!」
するとマルクは、二つに割れた。
「し、死んだ......?」
「そんな訳ないでしょ! 絶対何かくる!」
直後、マルクの体はそれぞれ赤と青の丸い物体になった。
その物体は、二人の方向に突っ込んできた。
「うわ、来る!?」
アマツはそれを回避したが、アリアスは、
「迎え撃ってやる!」
と、インシネレーションを赤い玉に向かって撃ち始めた。
が、その弾はしぶとく、そのビームを押し切ってアリアスに向かっていく。
「ああもう!」
結局アリアスは避けて、木の枝に乗った。
やがて二つの玉は、玉乗りの玉の上で合わさり、元のマルクに戻った。
「もう一回喰らえ!」
木の枝から降りると、アリアスはもう一度右手でインシネレーションを撃った。
今度はマルクは避けずに、その光線に包まれていく。
「やった、アリアスのが当たったぞ!」
アマツがぬか喜びしていた直後、アリアスの右手は木の上を飛んで行った。
「!?」
二人が驚いていると、マルクが空から降りてきた。
アリアスは愕然とした。
「し、仕留めたはずなのに何故!?」
「ヒャヒャヒャ、俺様は当たる直前に避けたんだよ!!」
マルクはそういいながら、背中から新しい玉乗りの玉を出し、その上に乗った。
「はぁ、また新しく作らないといけないな......」
アリアスが溜息をついて言った。
「くそ!!」
アマツは再び火炎放射を撃ったが、それもマルクにかわされた。
「ヒャヒャヒャ、俺様には敵わねえよ!」
マルクは二人を嘲笑った。
「......それよりマルク、上を見てみろよ?」
アマツはにやりとして、右手の人差し指を上に指しながら言った。
「ん......!?」
マルクが上を見上げると、その上から木が倒れてきた。
「ぐわあああああ!?!?」
マルクはそれに下敷きになった。
「マルク、今の攻撃、木を倒すためにやったんだぜ?」
「な、なんだと......!?」
マルクはそこから脱出しようと手足をじたばたさせてるが、動くことができない。
「さあ、覚悟しろよ、マルク?」
アマツがファーストファイアを放つ準備をした。
「......ヒ、ヒャヒャヒャ!!」
「?」
マルクが突然笑い出したのを、アマツは疑問に思った。
「な、なんで笑ってる?」
「馬鹿め、覚悟するのは貴様らだ!!」
そうすると、マルクは手をパンっと叩いた。
すると、そこから黒い物質が出てきた。
この技が、戦いを有利に進めていた二人を一気に不利にさせることになる......。
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